ショスタコーヴィチ
ショスタコーヴィチ
ショスタコーヴィチの生涯・経歴
ショスタコーヴィチ(1906-1975)は旧ソビエト連邦を代表する20世紀の作曲家である。
小学館 『日本大百科全書』。NHK-FM(東京) 『音楽の泉 カリンニコフの交響曲第1番』 2023/3/25放送
1906年、帝政ロシア時代の首都であったサンクト・ペテルブルグで、技師で音楽愛好家であった父とピアニストの母との間に生まれた。
小学館 『日本大百科全書』。NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」25 ショスタコーヴィチ1 - 現代の音楽 - NHK』 2024/5/19放送
幼い頃から音楽の才能を発揮し、9歳で作曲を始めている。
中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、258項。
リムスキー・コルサコフのオペラ「サルタン王の物語」の上演に触れて音楽家になりたいと真剣に考えるようになった。
グリャッセール音楽学校に入学し、13歳でサンクト・ペテルブルグ音楽院の作曲科で学び始めた。作曲科に入学した後にはピアノ科にも入って研鑽を積んだ。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」25 ショスタコーヴィチ1 - 現代の音楽 - NHK』 2024/5/19放送
19世紀の終わりにアメリカで生まれたジャズは20世紀前半、ヨーロッパでも大流行した。ショスタコーヴィチも学生だった10代からジャズのコンサートに通い、刺激を受けている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」』 2023/9/6放送
音楽院を卒業し、修了制作として1925年に書いた交響曲第1番が成功を収めて若い頃から注目された。
NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック ショスタコーヴィチの交響曲(1)第4番 ハ短調』 2023/10/2放送。ドミートリイ・ショスタコーヴィチ - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ドミートリイ・ショスタコーヴィチ
第1次世界大戦中にソビエト政権が樹立され、まもなく政府は新経済政策へと舵を切り、1924年にはレーニンが亡くなって芸術はリアリズム回帰の流れが推進される。そうした風潮の中、ショスタコーヴィチは映画やミュージックホール、大道芸にも共感を持ち、それがやがて映画音楽やジャズ組曲に結実することになる。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」25 ショスタコーヴィチ1 - 現代の音楽 - NHK』 2024/5/19放送
1920年代後半からは初めてのオペラ「鼻」に挑戦した。サンクト・ペテルブルクでベルクのオペラ「ヴォツェック」が上演されたり、プロコフィフのオペラ「3つのオレンジへの恋」を知ったことから刺激されたと言われている。
また、1927年には第1回ショパン・コンクールに挑んだが、入賞できずかなりショックを受けたという。しかし、1933年に自作のピアノ協奏曲第1番を自ら初演し、ようやくピアニストとしての成功を収めた。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」25 ショスタコーヴィチ1 - 現代の音楽 - NHK』 2024/5/19放送
粛清の危機
ショスタコーヴィチはソ連が誇る大作曲家として亡くなったが、若い頃には危うく反体制芸術家として粛清されるところだった。20世紀のソビエト連邦において政府が掲げる文化方針と自分の芸術的信念との狭間で苦悩し続けた作曲家である。何度も当局から作風を批判されては、その都度の方針に沿った作品を発表して名誉を回復していった。
最もよく知られているのは、1934年に初演されたオペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」がスターリンの逆鱗に触れた事件である。
30歳を迎える1936年にソビエト当局からこのオペラを批判されたことをきっかけに、ショスタコーヴィチの人気に陰りが出始め、窮地に立たされた。
中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、258項。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽シューマンのチェロ協奏曲 他』 2022/9/21放送。NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック ショスタコーヴィチの交響曲(1)第4番 ハ短調』 2023/10/2放送
しかし、翌年、ショスタコーヴィチはいかにも当局が喜びそうな交響曲5番を完成させた。目論み通り、この曲は当局にも大絶賛され、人々からも熱狂的に迎えられた。
こうして交響曲第5番の成功によって名誉を回復し、ショスタコーヴィチは人生最大の危機を乗り越えることができた。
中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、260項。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽シューマンのチェロ協奏曲 他』 2022/9/21放送
第2次世界大戦後
1941年作曲の交響曲第7番が世界で次々と演奏され、ショスタコーヴィチの国際的な名声は確固たるものとなった。
そして、彼はソビエトの検閲機関である芸術問題委員会の顧問の仕事を任され、また全ソ文化連絡協会や作曲家同盟での仕事にも従事することになった。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」26 ショスタコーヴィチ2』 2024/7/14放送
しかし、ショスタコーヴィチの人生に大きな影を落としたのが1948年のジダーノフ批判であった。
ソビエトの音楽の好ましからざる状況を生み出している張本人としてショスタコーヴィチは名指しされた。そこで彼は自らの創作衝動を巧妙にカモフラージュしながら迎合的な創作を続けなければならなかった。
ジダーノフ批判の嵐が吹き荒れた時期、公に発表されたのが映画音楽で、「ベルリン陥落」ほか5本の映画に作曲している。その一方で形式主義的と批判されかねない作品は作曲して書いても引き出しにしまわれてしまうという運命であった。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」26 ショスタコーヴィチ2』 2024/7/14放送
ショスタコーヴィチの意義・評価
交響曲作曲家
ショスタコーヴィチは多岐にわたる作品を発表しているが、とくに20世紀中葉の交響曲作曲家として、その名を不朽のものとした。
小学館 『日本大百科全書』
他の音楽家との関係
バッハ
ショスタコーヴィチはバッハを敬愛していた。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽バッハの無伴奏バイオリン・ソナタ第3番 他』 2022/9/8放送
ショスタコーヴィチの作品
代表作等
ショスタコーヴィチの創作の中心は交響曲と弦楽四重奏曲にあった。これらのなかでも特に有名なのが、交響曲第5番、第7番、第10番と弦楽四重奏曲第8番である。また歌劇「ムツェンスク郡のマクベス夫人」は古今のオペラの傑作の1つとされる。
ドミートリイ・ショスタコーヴィチ - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ドミートリイ・ショスタコーヴィチ
作風
ショスタコーヴィチは20世紀屈指の交響曲作曲家であり、オペラやバレエの音楽、さらに弦楽四重奏曲などの室内楽でも数々の名作を残している。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」25 ショスタコーヴィチ1 - 現代の音楽 - NHK』 2024/5/19放送
また、ピアノやサクソフォーンを交えたジャズやビッグバンド風の音楽も大変好み、劇音楽、映画音楽も数多く書いている。
NHK-FM(東京) 『ハチャトゥリヤンのバイオリン協奏曲 - 音楽の泉 - NHK』 2024/5/19放送
交響曲
交響曲 第4番 ハ短調 作品43
先述したように、ショスタコーヴィチは30歳を迎える1936年にソビエト当局から作品を批判されて窮地に立たされたが、こうした苦しい状況の中でも必死に作曲を続け、交響曲第4番を完成させた。
3楽章で構成された1時間を要する大曲で、一般的な交響曲からは逸脱した自由な形式で作曲されている。
完成直後から初演の準備が進められていたが中止に追い込まれ、ようやく実現したのはそれから25年後1961年のことであった。
NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック ショスタコーヴィチの交響曲(1)第4番 ハ短調』 2023/10/2放送
交響曲 第5番 ニ短調 作品47
この作品は1937年に書かれた。
その前年1936年にはショスタコーヴィチが書いたオペラとバレエが政府によって厳しく批判されていた。プレッシャーがかかる状況下でショスタコーヴィチは第5番の交響曲に着手し、均整の取れた4つの楽章で構成された作品を完成させた。
この交響曲はレニングラード・フィルハーモニー管弦楽団によって初演されて大好評を博し、当局にも好意的に受け入れられた。逆境を跳ね返した交響曲と評されることが多い。
NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック ショスタコーヴィチの交響曲(2)第5番 ニ短調』 2023/10/3放送
交響曲 第7番 ハ長調 作品60「レニングラード」
1941年作曲。
全4楽章のうち第1楽章から第3楽章まで第2次世界大戦の独ソ戦、いわゆるレニングラード包囲戦のただ中で作曲された。第1楽章の展開部に出てくる侵入のエピソードは戦争との関連が指摘されるが、これには異論もある。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」25 ショスタコーヴィチ1 - 現代の音楽 - NHK』 2024/5/19放送
交響曲 第9番 変ホ長調 作品70
第2次世界大戦の最中、ショスタコーヴィチは2つの交響曲を発表した。戦場描写した第7番「レニングラード」と戦争の恐ろしさに思いをはせた第8番で、いずれも演奏時間は1時間を超える規模の大きな作品。大戦終結後、ショスタコーヴィチが次に発表する交響曲には前作に匹敵する規模を持ち、勝利に沸くソビエト政府や国民を讃える内容が込められることが期待されていた。しかし、ショスタコーヴィチが発表した第9番は演奏時間25分ほどの陽気で軽快なものあった。ソビエト当局の期待を裏切るような作品は数年後のいわゆるジダーノフ批判へとつながり、当局の求める音楽を書かないショスタコーヴィチは他の著名な作曲家たちと共に非難の対象になった。
初演は1945年11月にレニングラード・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で行われた。
5つの楽章からなり、第3楽章以降は続け演奏され、熱狂的なクライマックスを迎えて曲は終わる。
NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック ショスタコーヴィチの交響曲(3)第9番 変ホ長調』 2023/10/4放送
交響曲 第10番 ホ短調 作品93
この作品は1953年の夏から秋にかけて作曲された。この年の3月にスターリンがなくなり、一種の自由主義的なムードが広がり始めた。このような状況の中でショスタコーヴィチは交響曲第9番からおよそ8年ぶりとなる新しい交響曲第10番を発表した。初演は同じ年の12月17日にレニングラード(現在のサンクトペテルブルク)でレニングラード・フィルハーモニー交響楽団により行われた。
初演当時からこの作品についての評価は賛否が大きく分かれ、作曲家同盟や音楽批評委員会などのメンバーにより、この作品についての討論会が開かれるなど、激しい論争が繰り広げられた。討論に際し、ショスタコーヴィチ自身は作品全体について人間の感情と情熱を描きたかったと述べただけであった。
全体は4つの楽章からなり、第1楽章は古典的なソナタ形式で書かれている。第2楽章は第1楽章とは対照的に極めて短くスピーディーな楽章。第3楽章は三部形式で書かれ、どことなく軽妙なワルツのイメージを感じさせる。そして第4楽章は悲痛で混沌とした序奏に続き、抑圧によるフラストレーションからの解放を感じさせるような音楽が力強く演奏され、曲が閉じられる。
NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック ショスタコーヴィチの交響曲(4)第10番 ホ短調』 2023/10/5放送
弦楽四重奏曲
ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲は全15曲ある。
弦楽四重奏曲第8番 (ショスタコーヴィチ) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/弦楽四重奏曲第8番 (ショスタコーヴィチ)
弦楽四重奏曲 第5番 変ロ長調 作品92
全3楽章。3つの楽章が切れ目なく演奏される大作。1952年の秋に作曲された。
他のショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲同様、ショスタコーヴィチの時代にソ連で活躍していたベートーベン弦楽四重奏団のために作曲され献呈された。
NHK-FM(東京) 『モルゴーア・クァルテット演奏会 - ベストオブクラシック』 2023/6/30放送
弦楽四重奏曲 第7番 嬰ヘ短調 作品108
1960年に完成。
NHK-FM(東京) 『ドイツの名アンサンブル アルテミス弦楽四重奏団 - 名演奏ライブラリー』 2024/9/22放送
弦楽四重奏曲 第8番 ハ短調 作品110
ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲の中で、最も重要な作品である。
弦楽四重奏曲第8番 (ショスタコーヴィチ) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/弦楽四重奏曲第8番 (ショスタコーヴィチ)
ファシズムと戦争の犠牲者の思い出に捧げられたこの曲は1960年、当時の東ドイツドレスデンでわずか3日で書き上げられたという。
曲の主要な主題にはショスタコーヴィチがドイツ語で署名する時の頭文字「DSCH」をドイツ語 の音名に当てはめて4つの音が用いられている。さらに、ロシアの革命歌「重き鎖につながれて」の引用やショスタコーヴィチ自身の過去の作品、例えば交響曲第1番、交響曲第10番、チェロ協奏曲第1番、ピアノ三重奏曲、オペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」などからも主題がとられている。個人的な記憶を呼び起こしたようなこの弦楽四重奏曲はショスタコーヴィチの自伝的作品であるとも言える。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番』 2023/2/27放送
管弦楽曲
タヒチ・トロット 作品16(「ふたりでお茶を」のオーケストラ編曲版)
20世紀前半に活躍したアメリカの作曲家ユーマンズが1920年代の半ばに発表したヒットソング「ふたりでお茶を」をショスタコーヴィチがオーケストラ用に編曲した。
友人の指揮者から1時間以内にこの曲をオーケストラ用に編曲できるかとけしかけられたショスタコーヴィチが45分ほどで編曲を終わらせたという逸話がある。
ショスタコーヴィチはこの曲が大好きだったようで、自作ではないのに作品16を与えている。
NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ショスタコーヴィチのステージ・オーケストラのための組曲』 2024/2/4放送
ジャズ組曲
ショスタコーヴィチは一般に交響曲や弦楽四重奏曲のジャンルにおいて、戦争などをテーマにした暗く重い作品を多く作曲したことで知られているが、ジャズ組曲はとても同じ作曲家が作曲したとは思えないほど軽妙な作品であり、ショスタコーヴィチの意外な一面を映し出していると評されている。
ジャズ組曲 (ショスタコーヴィチ) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ジャズ組曲 (ショスタコーヴィチ)
ジャズ組曲 第1番
全3曲。1930年代半ばに作曲。
NHK-FM(東京) 『ハチャトゥリヤンのバイオリン協奏曲 - 音楽の泉 - NHK』 2024/5/19放送
ジャズ組曲 第2番(ステージ・オーケストラ(舞台管弦楽)のための組曲)
作品番号がないこの組曲は長らくジャズ組曲第2番として伝えられてきた。1938年に作曲されたジャズ組曲第2番は戦争で失われたが、1950年代にまとめられた「ステージ・オーケストラのための組曲」がショスタコーヴィチが亡くなった後、誤ってジャズ組曲第2番として出版されてしまったのである。
本組曲は全部で8曲。過去に作曲した映画音楽やバレエ音楽の一部を含んでいる。特に6曲目のワルツ第2番は現在も良く演奏されて親しまれている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」』 2023/9/6放送
協奏曲
ピアノ協奏曲 第1番 ハ短調 作品35
ショスタコーヴィチは1927年に第1回ショパン・コンクールに挑んだが入賞できずかなりショックを受けたという。しかし、1933年にこの作品を自ら初演し、ようやくピアニストとしての成功を収めることができた。
この作品の特徴はパロディーで、自作やベートーベンなどの曲を取り入れたほか、ユダヤ音楽のメロディーも含まれている。もともとはトランペット協奏曲として構想されていたことから、ピアノと同時にトランペットも活躍する。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」25 ショスタコーヴィチ1 - 現代の音楽 - NHK』 2024/5/19放送
ピアノ協奏曲 第2番 へ長調 作品102
全3楽章。この作品は息子マキシムのために作曲された。マキシムが19歳の誕生日を迎えた1957年に、彼のピアノ演奏で初演が行なわれた。
NHK-FM(東京) 『ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番 - クラシックカフェ - NHK』 2023/4/11放送
バイオリン協奏曲
バイオリン協奏曲 第1番 イ短調 作品77
ジダーノフ批判の嵐が吹き荒れた時期、形式主義的と批判されかねない作品は作曲して書いても引き出しにしまわれてしまうという運命であった。この作品もその一例である。
結局、初演は完成から7年後の1955年、スターリンが亡くなった後のことになった。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」26 ショスタコーヴィチ2』 2024/7/14放送
チェロ協奏曲
ショスタコーヴィチは生涯に二曲チェロ協奏曲を残している。いずれも名チェロ奏者ムスティスラフ・ロストロポーヴィチのために作曲された。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番』 2023/2/27放送
チェロ協奏曲 第1番 変ホ長調 作品107
1959年の作品。同じくソビエト連邦時代を生きた作曲家プロコフィエフのチェロと管弦楽のための作品「交響的協奏曲」に触発されて作曲したという。
おどけた行進曲風の主題で始まる第1楽章、哀愁を帯びた民謡風の旋律が聞こえてくる第2楽章、第三楽章はチェロ独奏の長大なカデンツァ、そして第4楽章はオーケストラとともにクライマックスを作り上げる。
曲は1959年10月にロストロポーヴィチのチェロ独奏、ムラヴィンスキー指揮、レニングラード・フィルによって初演された。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番』 2023/2/27放送
室内楽曲
ピアノ五重奏曲 ト短調 作品57
この曲は、1940年ソビエトのベートーヴェン弦楽四重奏団の依頼で作曲された。初演ではピアニストでもあったショスタコーヴィチ自身が演奏し、大きな成功を収めた。そして当時、作曲家として最高の賞であったスターリン賞を受賞した。
全5楽章。深い叙情性をたたえたショスタコーヴィチの代表作の1つである。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽シューマンのチェロ協奏曲 他』 2022/9/21放送
ピアノ三重奏曲
ピアノ三重奏曲 第2番 ホ短調 作品67
この作品は家族と共に移り住んだモスクワで1944年に作曲された。
第2次世界大戦末期の1944年は学生時代からの友人で、交響曲第8番を高く評価してくれた音楽評論家のイワン・ソレルチンスキーがなくなっている。ソレルチンスキーはモスクワでショスタコーヴィチと再会した際、彼が増大しつつあった国家的な反ユダヤ主義に迎合するような発言をしたことにショックを受けたと述べている。
しかし、これはショスタコーヴィチがソビットで生き残るための二枚舌で、本心ではなかったのだろうとも推測されているが、その証しとも思えるのがソレルチンスキーを悼んで作曲されたこの作品。この作品では第4楽章に「ユダヤの主題」が鳴り響く。表向きは政権の体制に迎合しながら、その実ドイツ軍によるユダヤ人虐殺といった恐ろしい出来事への憤りがあったに違いないと考えられる。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」26 ショスタコーヴィチ2』 2024/7/14放送
ビオラ・ソナタ 作品147
ショスタコーヴィチが書いた最後の作品である。
1975年7月におおよそのスコアが完成し、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲を数多く初演したベートーベン四重奏団のビオラ奏者フョードル・ドルジーニンに楽譜が渡された。
翌8月ショスタコーヴィチはこの世を去るが、没後約2カ月経った10月1日に当時のレニングラード、現在のサンクトペテルブルクでドルジーニンのビオラ、ミハイル・ムンチャンのピアノにより初演された。
ショスタコーヴィチはこの曲について「第1楽章は短編小説。第2楽章はスケルツォ、そして第3楽章は偉大な作曲家ベートーベンを追悼するオマージュだ」と語っている。
自らの人生を振り返るように、さまざまな楽曲の断片が作品全体に散りばめられている。3つの楽章それぞれの最後はモレンド(だんだん遅くしながら弱く)と指示されているのが特徴で、自らの死が近いことを覚悟していた作曲者の心の内が感じられるようである。
NHK-FM(東京) 『アミハイ・グロス&三浦謙司 デュオ・リサイタル - ベストオブクラシック』 2023/7/6放送
ピアノ曲
24の前奏曲とフーガ 作品87
ショスタコーヴィチが、敬愛するバッハの平均律クラヴィーア曲集にならって作り上げた作品である。すべての長調と短調にわたり、前奏曲そしてフーガが都合48曲に並ぶ。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽バッハの無伴奏バイオリン・ソナタ第3番 他』 2022/9/8放送
着想を得たのは1950年に審査員として参加したライプチヒで行われたバッハ生誕200年を記念する音楽祭のピアノコンクールであった。
ショスタコーヴィチはバッハについての講義を行うほか、平均律クラヴィーア曲集の中から何曲かを選んで素晴らしい演奏を披露して、世界中から集まった音楽家達を驚嘆させたという。
そして、この時に開催されたコンクールでピアノ部門の1位を獲得した当時26歳のタチャーナ・ニコライエワが弾いた平均律クラヴィーア曲集に強烈な印象を受け、その深い芸術性にインスパイアされた。
ショスタコーヴィチは自分自身が描く24の前奏曲とフーガを1大曲集として作曲しようと決意し、帰国後すぐニコライエワへ連絡をとり、演奏を依頼した。そして、翌年の1951年に完成した。なお、曲集はニコライエワに献呈された。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラフマニノフのピアノ・ソナタ 第1番 他』 2022/10/25放送。NHK-FM(東京) 『ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番 - クラシックカフェ - NHK』 2023/4/11放送。NHK-FM(東京) 『ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番 - クラシックカフェ - NHK』 2023/4/11放送
はじめはロシアのピアニストたちのレパートリーとして広まり、現在では20世紀の重要なピアノ作品として、世界中の音楽ファンに愛されている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽バッハの無伴奏バイオリン・ソナタ第3番 他』 2022/9/8放送
映画音楽
馬あぶ 作品97
ショスタコーヴィッチが1955年の映画「馬あぶ」のために書いた映画音楽。
映画の舞台は19世紀イタリア統一運動の時代で、権力に翻弄された青年アーサーの純愛と彼の激動の人生が描かれている。なお、馬あぶというのは何物にも屈しないアーサーのニックネームであった。
NHK-FM(東京) 『音楽の泉 カリンニコフの交響曲第1番』 2023/3/25放送
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