ストラヴィンスキー
ストラヴィンスキー
ストラヴィンスキーの生涯・経歴
ストラヴィンスキー(1882-1971)はロシアの作曲家である。
岩波書店 『広辞苑 第六版』
1882年にロシアのペテルブルク近郊で、バス歌手の父、ピアニストの母の間に生まれた。音楽家になるべくして生まれた環境である。しかし、両親は彼を音楽家にする気はなかった。
中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、244項。
ストラヴィンスキーは早くから音楽に親しんでいたが、両親の希望で官吏の道を目ざしてペテルブルグ大学の法学部に入学した。
小学館 『日本大百科全書』
しかし、大学でロシアを代表する作曲家であるリムスキー・コルサコフの息子と知り合い、その関係で大学で法律を学ぶかたわら20歳の時から6年にわたりコルサコフに師事し、作曲の基礎を学んだ。
中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、244項。小学館 『日本大百科全書』。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」』 2023/9/6放送
やがて、セルゲイ・ディアギレフ率いるロシア・バレエ団に認められる。1908年に作曲した管弦楽曲「花火」が、バレエ界での前衛だったディアギレフの目に留まったのである。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ バルトークの管弦楽のための協奏曲 他』 2022/10/19放送。中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、244項。ストラヴィンスキーの楽曲一覧 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ストラヴィンスキーの楽曲一覧
そして、ディアギレフが率いるロシア・バレエ団の依頼を受け、「火の鳥」「ペトルーシカ」「春の祭典」といったバレエ音楽を次々に発表し、賛否両論を引き起こした。
しかし、パリでの初演は大センセーションを巻き起こし、さらに作曲家としてもその名を世界に轟かせた。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ストラヴィンスキーの「プルチネッラ」他』 2022/9/7放送。NHK-FM(東京) 『ストラヴィンスキーの組曲「プルチネッラ」 - クラシックカフェ - NHK』 2023/6/22放送。
第1次世界大戦後
第1次世界大戦によって、最初はスイスに、のちにフランスに住んだ。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ バルトークの管弦楽のための協奏曲 他』 2022/10/19放送
新古典主義時代
ストラヴィンスキーは組曲「プルチネッラ」を完成させた1920年ごろから古い時代の作品に注目し始める。中でも古典派以前の音楽に着目し、それらを模倣した、いわゆる新古典主義に属する作品を発表するようになる。
NHK-FM(東京) 『クラシックの庭 ストラヴィンスキーの組曲「プルチネッラ」』 2024/4/29放送
アメリカ時代
ストラヴィンスキーは1925年にはじめてアメリカを訪れ、1935年と1937年にも渡米している。
イーゴリ・ストラヴィンスキー - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/イーゴリ・ストラヴィンスキー
1937年演奏旅行でアメリカを訪れた際はワシントンで協奏曲の依頼を受け、協奏曲「ダンバートン・オークス」を作曲している。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ コープランドの「ビリー・サ・キッド」』 2023/2/8放送
やがて第2次世界大戦が近づくとアメリカに移住した。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ バルトークの管弦楽のための協奏曲 他』 2022/10/19放送
他の音楽家との関係
ラヴェル
ラヴェルはストラヴィンスキーの友人の1人である。
NHK-FM(東京) 『クラシックの庭 ストラヴィンスキーの組曲「プルチネッラ」』 2024/4/29放送
ストラヴィンスキーの音楽史における位置づけ
現代音楽
シェーンベルクとシェーンベルクより少し年下のストラヴィンスキーの2人が20世紀の現代音楽の扉を開いた双璧をなす作曲家と捉えられてきた。
NHK-FM(東京) 『現代の音楽 「現代音楽 100年のレガシー」(11) ストラヴィンスキー(1)』 2023/10/1放送
ストラヴィンスキーの作品
バレエ音楽
ストラヴィンスキーは生涯にさまざまなバレエ音楽を作曲した。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ バルトークの管弦楽のための協奏曲 他』 2022/10/19放送
しかし、音楽史に残り、また頻繁に演奏されているのは、初期の3大バレエ音楽(「火の鳥」「ペトルーシカ」「春の祭典」)、なかでも「春の祭典」である。
中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、246項。
火の鳥
1909年まだ駆け出しの作曲家だったストラヴィンスキーに大きな転機が訪れる。ロシアバレー団の興行主ディアギレフからロシアの民話を題材にしたバレー音楽を依頼されたのである。それが「火の鳥」であった。
1910年にパリで初演された「火の鳥」は大成功し、新進気鋭の作曲家としてストラヴィンスキーは名声を獲得した。
後にストラヴィンスキーはバレエ音楽から組曲を作成し、それらは1919年にまとめられた。全7曲で構成されている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」』 2023/9/6放送
ペトルーシカ
1911年に発表された。
バレエ音楽「火の鳥」を完成したストラヴィンスキーは、ピアノとオーケストラのための一種の協奏曲風の作品を作ろうと計画していた。この作品をディアギレフにピアノで弾いて聞かせたところ、ディアギレフはこれこそバレエ音楽にふさわしいと考え、これをバレエ音楽に書き込めることを勧めた。
1911年に一度完成されたのち、1946年から47年にかけて改訂された。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」』 2023/1/10放送
春の祭典
この有名な作品は、「火の鳥」と「ペトルーシカ」に続くストラヴィンスキーの3作目のバレエ音楽で、20世紀近代音楽の傑作の1つと考えられている。
1913年にパリのシャンゼリゼ劇場で初演された。この初演ではその音楽の斬新さによって、観客の間で反発が起き、歴史に残る大混乱と暴動が引き起こされた。
この作品の新しさは、強烈なリズムと大胆な不協和音、そしてそれ以前には聞かれなかった管弦楽の効果や和音の結合が原始的な力強さによって結びつけられているところにある。また、そのストーリーにも人の心を不穏にさせるような特徴がある。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」』 2023/1/10放送
妖精の口づけ
1927年、ストラヴィンスキーはダンサーのイダ・ルビンシュタインからチャイコフスキーの音楽を編曲したバレエを依頼された。ストラヴィンスキーはその提案を受け入れ、いくつかの作品を組み合わせて作曲した。
のちにストラヴィンスキーは、このバレエ音楽を組曲にまとめ直し、「ディヴェルティメント」と題して出版している。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ヨハン・シュトラウスのワルツ「春の声」』 2023/5/18放送
バレエの情景
1944年、ハリウッドの劇場支配人ローズの依頼で作曲した9つの場面からなるバレエ音楽。ローズはこの作品をあまり気に入らず、ストラヴィンスキーに編曲する権利をお願いしたが、ストラヴィンスキーはにべもなく断った。
今ではほとんど上演されることのない作品であるが、ジャズやブルースといったアメリカの音楽、そして自分の作品の引用も織り交ぜた素敵な作品である。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ バルトークの管弦楽のための協奏曲 他』 2022/10/19放送
協奏曲
バイオリン協奏曲 ニ調(Violin Concerto in D)
ストラヴィンスキーが作曲した唯一のバイオリン協奏曲。
ヴァイオリン協奏曲 (ストラヴィンスキー) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ヴァイオリン協奏曲 (ストラヴィンスキー)
ストラヴィンスキーの新古典主義時代を代表する作品である。バロック時代の音楽を元にしていて4つの楽章からなる。
NHK-FM(東京) 『クラシックの庭 ストラヴィンスキーの組曲「プルチネッラ」』 2024/4/29放送
協奏曲「ダンバートン・オークス」
1937年アメリカを演奏旅行で訪れた際、ワシントンで政治家で芸術のパトロンとしても知られているブリスから協奏曲の依頼を受けた。当時関心を持っていたバロック音楽の合奏協奏曲のスタイルにヒントを得て作曲を行った。
溌剌とした第1楽章、穏やかな第2楽章、ユーモアに満ちた第3楽章の全3楽章。15人の奏者で演奏する小編成の協奏曲になっている。
明快な音楽で現在も人気が高い作品である。ブリスが住んでいた邸宅の名前を冠し、「ダンバートン・オークス」と名付けられている。
なお、この作品はストラヴィンスキーが亡くなった翌年1972年には振り付けが施され、バレエとしても上演されている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ コープランドの「ビリー・サ・キッド」』 2023/2/8放送
管弦楽曲
幻想曲「花火」
1908年26歳の時の最初期の作品であるが、若きストラヴィンスキーの才能がキラリと光っている曲。
NHK-FM(東京) 『現代の音楽 「現代音楽 100年のレガシー」(11) ストラヴィンスキー(1)』 2023/10/1放送
組曲「プルチネッラ」
ストラヴィンスキーは、ディアギレフが率いるロシア・バレエ団の依頼を受け、初期の3つのバレエ音楽を発表したが、この曲も1919年にディアギレフの依頼で作曲されたバレエ音楽である。
プルチネッラとは、イタリアの伝統的な喜劇に登場する道化師のこと。ディアギレフはこのバレエ「プルチネッラ」に18世紀イタリアの作曲家ペルゴレージの音楽を使いたいと考えていた。そこでナポリの音楽院の図書館でペルゴレージの古い楽譜を探し、その中から20曲近い曲を選んでストラヴィンスキーに託した。
こうして18世紀の音楽を基にしたバレエ「プルチネッラ」が完成し、1920年パリで初演されて大成功を収めた。
ストラヴィンスキーにとって、このバレエは古い時代の音楽を現代的な手法で蘇らせる新古典主義に目覚める大きなきっかけとなった。なお、バレエ「プルチネッラ」に用いられた音楽は当時はペルゴレージの作品だと考えられていたが、研究が進むにつれてガロなど他の作曲家の作品が数多く含まれていることが分かってきた。
なお、1920年に迎えた初演ではピカソが舞台装置と衣装をデザインした。
また、初演から4年後ストラヴィンスキーは18曲のバレエ音楽から8曲を選んで組曲にし、1949年に改訂を施した。原曲のバロック音楽が持つ明快さと、ストラヴィンスキーらしい色彩豊かな編曲によって、現在も大変に人気の高い作品である。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ストラヴィンスキーの「プルチネッラ」他』 2022/9/7放送。NHK-FM(東京) 『ストラヴィンスキーの組曲「プルチネッラ」 - クラシックカフェ - NHK』 2023/6/22放送。
サーカス・ポルカ
アメリカ時代の1942年に作曲された楽しいナンバー。ニューヨークの人気サーカス団の像が踊るバレエのために書かれた。
NHK-FM(東京) 『ストラヴィンスキーの「春の祭典」 - 音楽の泉 - NHK』 2023/4/9放送
室内楽曲
ラグタイム
この曲は11人の演奏者と14の楽器のための作品として1918年に作曲された。
ラグタイムとは、もともと19世紀末から20世紀初期にかけて流行したピアノ音楽のスタイルで、ブルースとともにジャズの構成要素の1つとなったものである。陽気で快活な性格を持っている。
ストラヴィンスキーは当時、スイスの指揮者エルネスト・アンセルメと親密な関係にあり、アンセルメがアメリカから持ち帰ったジャズの楽譜を通してジャズを知るようになったと言われている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」』 2023/1/10放送
七重奏曲
全3楽章。第1楽章は軽妙なソナタ形式、第2楽章はバロック時代に流行した変奏曲の一種パッサカリア、第3楽章は舞曲のジーク。
1952年から53年にかけてアメリカで作曲した室内楽曲。70歳にして新境地を開拓しようという意欲的な作品である。
ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、クラリネット、ファゴット、ホルンという7つの楽器のために書かれている。生涯に何度も作風を変えてきたストラヴィンスキーは、この頃オーストリア出身の作曲家シェーンベルクが提唱した12音技法と呼ばれる技法を用いるようになるが、七重奏曲でもその技法が取り入れられた。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ バルトークの管弦楽のための協奏曲 他』 2022/10/19放送
八重奏曲
この曲はフルート、クラリネット、そして2つのファゴット、2つのトランペット、2つのトロンボーン、以上8つの管楽器のために書かれている。この珍しい編成はストラヴィンスキーが夢の中で見たというもので、夢から醒めたストラヴィンスキーは奏でられていた音楽の記憶を呼び起こすことはできなかったが、演奏者の人数と楽器は覚えていた。そしてこの編成を用いて1922年の後半から作曲を始めた。曲は翌年5月にパリで完成し、10月にパリのオペラ座でストラヴィンスキー自身の指揮で初演された。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽チャイコフスキーの「ロココ風の主題による変奏曲」他』 2022/5/23放送
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