ラフマニノフ
ラフマニノフ
ラフマニノフの生涯・経歴
ラフマニノフ(1873-1943)はロシアの作曲家、ピアニスト、指揮者である。
ロシアに生まれ、スイスを経てアメリカで活躍した「鍵盤の申し子」※である。
※NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ▽ショパンの24の前奏曲』 2022/07/16放送
ラフマニノフは、ロシアの地方貴族の家に1873年に生まれた。
中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、235項。
モスクワ音楽院へ入り、スクリャービンとは同期。2人は音楽の傾向は正反対だったが、常に親しい間柄だった。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ』 2022/03/23放送
モスクワ音楽院在学中から華やかな技巧と音楽性を持ったピアニストとして知られていた。
NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ラフマニノフのピアノ協奏曲第1番』 2023/1/21放送
青年時代のラフマニノフはチャイコフスキー、そして、ベートーヴェン、シューマン、ショパンの音楽に憧れを抱いていた。
NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ラフマニノフのピアノ協奏曲第1番』 2023/1/21放送
挫折
ラフマニノフは決して順風満帆な作曲家人生ではなかった。
1895年に書き1897年に初演された交響曲第1番が大失敗に終わり、強度の神経衰弱になった。
これにより1900年まで新たな作品を世に出すことはなかった。
中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、236-237項。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽カリンニコフの交響曲第1番 他』 2022/08/02放送
成功
しかし、ここから脱して、起死回生となったのが、1901年に完成したピアノ協奏曲第2番である。
この作品は成功し、続いてチェロ・ソナタを作曲し、2台のピアノのための組曲第2番をピアニストのジロティと共に初演するなど次々と新作を生み出した。
私生活でも従姉のナターリアと結婚をし、1903年には長女が生まれた。
翌年にはボリショイ劇場の指揮者に就任してピアニストや指揮者としても活躍し、公私ともに充実した日々を送った。
1906年にボリショイ劇場を辞めた後もピアニストとして数多くの舞台に立ちながら創作に励んだ。
中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、236-237項。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽カリンニコフの交響曲第1番 他』 2022/08/02放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番』 2023/9/25放送
ドレスデン滞在
1906年の秋、この年33歳になるラフマニノフは祖国を離れて家族(妻と娘)と共に一時的にドイツ東部のドレスデンに移り住み、数年間ここで作曲に専念する日々を過ごした。
ロシアでの劇場、音楽協会、 教職などすべての仕事から離れて創作活動に専念できるよう、誰も自分のことを知らない外国で暮らしたいという思いがあったようである。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラフマニノフのピアノ・ソナタ 第1番 他』 2022/10/25放送
自然が豊かで文化的なこの場所でラフマニノフの筆は進み、この時期には交響曲第2番、ピアノソナタ第1番、交響詩「死の島」といった作品が生み出された。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番 他』 2022/07/04放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ラフマニノフの「交響曲 第2番 ホ短調 作品27」他』 2022/08/31放送
交響曲第2番が完成した1907年には2人目の娘も生まれ、翌年の初演は喝采で迎えられるなど、公私共に幸せな時期であった。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ラフマニノフの「交響曲 第2番 ホ短調 作品27」他』 2022/08/31放送
アメリカ演奏旅行
1909年には初めてアメリカへ演奏旅行をし、新作のピアノ協奏曲第3番を披露した。
中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、237項。
ピアノはラフマニノフ自身による演奏だった。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番 他』 2022/07/04放送
亡命と北欧・アメリカ・ヨーロッパでの演奏活動
ロシア革命後は北欧、さらにアメリカ、ヨーロッパ各国で活躍した。
NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ラフマニノフのピアノ協奏曲第1番』 2023/1/21放送
北欧演奏旅行
スウェーデン
1917年に勃発したロシア革命やすでに勃発していた第1次世界大戦で身の危険を感じたラフマニノフはこの年の12月、一時避難をしようと家族とともにロシア(モスクワ)を離れ、北欧の演奏旅行のためにストックホルムに向かった。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽メトネルのバイオリン・ソナタ第3番「ソナタ・エピカ」 他』 2022/9/22放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラフマニノフの交響的舞曲』 2023/3/28放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ドボルザークの交響曲第9番「新世界から」』 2023/6/15放送。セルゲイ・ラフマニノフ | Appollonia https://appollonia.net/778
ノルウェー
ラフマニノフは北欧に一時的に滞在していた際、オスロでオスロ・フィルの前身に当たるオーケストラと一緒にコンサートを開いている。
なお、その際、ノルウェー音楽界の中心的な存在として活躍したハルヴォルセンが指揮を務めた。
NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック ラフマニノフ生誕150年に寄せて(3)オスロのラフマニノフ』 2023/12/23放送
デンマーク
その後、ストックホルムからコペンハーゲンに移り、ラフマニノフの演奏活動がロシアに財産をおいて亡命した一家4人の生活を支えた。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽メトネルのバイオリン・ソナタ第3番「ソナタ・エピカ」 他』 2022/9/22放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラフマニノフの交響的舞曲』 2023/3/28放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ドボルザークの交響曲第9番「新世界から」』 2023/6/15放送。セルゲイ・ラフマニノフ | Appollonia https://appollonia.net/778
アメリカ亡命
北欧への演奏旅行をきっかけに国外脱出の噂は様々な国の音楽界に知れ渡り、幾つかの国から演奏依頼が届く。ラフマニノフはその中からアメリカを行き先に選び、ロシアには帰らず、家族と共にアメリカへ渡る。
1918年、アメリカに到着したラフマニノフは生計を立てるべく演奏活動に打ち込んだ。
しかし、スターリンが政権を握るとロシアへの帰国は絶望的になる。ラフマニノフは郷愁を募らせ、自信を失っていき、なかなか創作意欲が湧かずにいた。
そのため、ラフマニノフはロシアを出てからはほとんど作曲活動を行わなかったが、親友であるメトネルが作曲の再開を促し、1926年に「ピアノ協奏曲第4番」を完成させた。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽メトネルのバイオリン・ソナタ第3番「ソナタ・エピカ」 他』 2022/9/22放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラフマニノフの交響的舞曲』 2023/3/28放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ドボルザークの交響曲第9番「新世界から」』 2023/6/15放送
こうしてラフマニノフは第2の祖国であるアメリカとヨーロッパ各地で演奏活動を続けた。
中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、237項。小学館 『日本大百科全書』
晩年
第2次世界大戦が始まると思うように作曲が行えず、どんどん創作意欲を失っていったが、力を振り絞って最後の作品となる「交響的舞曲」を1940年に作曲した。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ウェーバーの「舞踏への勧誘」他』 2022/9/5放送
そして、病に倒れたラフマニノフは第2次大戦のさなかの1943年、69歳でアメリカ、カリフォルニア州ロサンゼルス郡ビバリーヒルズで亡くなった。
中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、238項。小学館 『日本大百科全書』。NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ラフマニノフのピアノ協奏曲第1番』 2023/1/21放送
「さようなら。さよなら。私の愛する手よ。」とつぶやいて息を引き取ったという。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラフマニノフの交響的舞曲』 2023/3/28放送
ラフマニノフの人物像
鐘
ラフマニノフはロシアの鐘の音を大切にし続けた。彼は次のように語っていたと言う。
「教会の鐘の音はロシア人の誰もがゆりかごから墓場まで鐘の音に付き添われているのであって、この影響から逃れられる作曲家は1人もいない。生涯を通じて私は朗らかに鳴り響く鐘の音や哀調を帯びた鐘の音の雰囲気や音楽に親しんできたのだ。もしも私が自宅において人々の心と共鳴する鐘の響きを作り出していたとすればそれは人生の大半をモスクワの鐘の響きの中で送ってきたことが大きい。」
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラフマニノフの「鐘」』 2023/11/21放送
他の音楽家との関係
チャイコフスキー
ラフマニノフはチャイコフスキーを熱烈に崇拝していた。
セルゲイ・ラフマニノフ - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/セルゲイ・ラフマニノフ
ラフマニノフにとってチャイコフスキーは最も尊敬する大作曲家であった。
チャイコフスキーも33歳年下のラフマニノフの才能を高く評価していた。モスクワ音楽院では和声学の修了試験でラフマニノフに最高点以上の得点を与えている。
チャイコフスキーが急死する年の1893年の4月に、モスクワのボリショイ劇場で上演された若きラフマニノフが手掛けた最初のオペラ「アレコ」の初演で、チャイコフスキーは上演を可能にする働きやラフマニノフの音楽を知ってもらおうと遠いサンクトペテルブルクの名士にも懸命に頼み込み、劇場へ足を運んでもらうということに至るまで人知れず尽力した。初演の幕が降りると、チャイコフスキーはボックス席から身を乗り出して力いっぱい拍手を送ったという。「そうすることが無名で駆け出しの作曲家の役に立つということをよくご存知だったあの方の優しさだったのです」とラフマニノフ自身が語っている。
そして、11月にチャイコフスキーは突然この世を去った。訃報を受けたラフマニノフはピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の思い出」を作曲した。恐ろしいほどに心を痛め、精神を病むような状態で書き上げたという。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ チャイコフスキーとラフマニノフの「偉大な芸術家の思い出」』 2024/2/13放送
なお、2台のピアノのための作品「組曲第1番 作品5」も尊敬するチャイコフスキーに献げている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ モーツァルトの2台のピアノのためのソナタ 他』 2022/11/28放送
パガニーニ
パガニーニの音楽は同時代の音楽家たちに大きな影響を与えた。ラフマニノフもパガニーニに魅了された音楽家の1人で、パガニーニの旋律を使って作曲した。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽パガニーニの「24の奇想曲」から 他』 2023/6/30放送
クライスラー
2人はともに19世紀の終わりから20世紀の半ばにかけて世界的に活躍した。
ラフマニノフはアメリカでクライスラーと親しくなった。年齢もラフマニノフが2歳年上と近かったことから2人は良き友人として交流を深めた。
クライスラーのバイオリン、ラフマニノフのピアノで度々共演し、今も残るその録音は歴史的名盤として語り継がれている。
また、ラフマニノフはクライスラーの曲「愛の喜び」や「愛の悲しみ」をピアノ用に編曲し、一方でクライスラーはラフマニノフの曲をバイオリン用に編曲している。演奏家としてだけでなく、作曲の面においても2人はお互いに尊敬し合っていた。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ 特集 思いを込めて(1)』 2023/7/10放送。NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ラフマニノフのピアノ協奏曲第1番』 2023/1/21放送
メトネル
メトネルは同世代に活躍したロシアの作曲家、ピアニストで尊敬し合う友人であった。
メトネルの方がラフマニノフより6歳ほど年下であるが、お互いの曲を演奏会で弾いたり、楽曲を献呈している。
メトネルはかなり若い頃からラフマニノフのことを敬愛していた。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽メトネルのバイオリン・ソナタ第3番「ソナタ・エピカ」 他』 2022/9/22放送
カリンニコフ
カリンニコフが1901年に34歳で亡くなったとき、夫人はカリンニコフの墓を建てる費用をいくばくか貸してほしいと7歳年下のラフマニノフのもとを訪れた。
彼は残されていたカリンニコフの楽譜を夫人から預かり、出版社と交渉し、その楽譜は高額で取引されて婦人に支払われた上、カリンニコフの音楽が残されたというエピソードが残されている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽カリンニコフの交響曲第1番 他』 2022/08/02放送
ラフマニノフの音楽史における位置づけ
後期ロマン派
ロシアのクラシック音楽史 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ロシアのクラシック音楽史
ラフマニノフの評価・批評
世界的なピアニスト
ラフマニノフはピアノのヴィルトゥオーゾであり、世界的なピアニストとしてその名を轟かせた。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ドボルザークの交響曲第9番「新世界から」』 2023/6/15放送
センチメンタルな音楽
ラフマニノフの哀愁を帯びた甘くセンチメンタルな音楽は、ムード音楽のようだとバカにされていた時期もあったが、再評価されている。
映画にも、フィギュアスケートにもよく使われる。
中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、238項。
ラフマニノフの作品
交響曲
交響曲 第2番 ホ短調 作品27
交響曲第2番はドレスデン滞在時の1907年に完成した。
この年には2人目の娘も生まれ、翌年の初演は喝采で迎えられるなど、公私共に幸せな時期であった。
全4楽章からなり、特に第3楽章の冒頭、弦楽器の序奏に続いて現れるクラリネットの美しい旋律が胸を打つ。幸福なエネルギーを感じさせる作品である。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ラフマニノフの「交響曲 第2番 ホ短調 作品27」他』 2022/08/31放送
交響曲 第3番 イ短調 作品44
交響曲第3番はラフマニノフがアメリカに住み始めた後の作品で、60代の初め1935年から翌年にかけて作曲された。
自分の名前のセルゲイ、妻の名前のナターリア、そして姓のラフマニノフの頭文字をとってセナールと呼んでいたスイスの別荘で集中的に作曲が進められ、1936年に完成し、初演された。
3楽章からなるこの交響曲は故郷を離れて20年近い年月を経ていながらも、曲にはロシア的な深い叙情性が満ちている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番』 2023/9/25放送
ピアノ協奏曲
ピアノ協奏曲 第1番 嬰ヘ短調 作品1
ラフマニノフの若き日の肖像ともいうべき協奏曲。彼はこの作品に愛着があり、何度も演奏している。また、晩年には改訂も行った。
最初のバージョンはモスクワ音楽院在学中の1890年から1891年にかけてラフマニノフが17歳から18歳の年に作曲された。
そして、作曲家、ピアニストとして名声を博したのち、1917年にこのピアノ協奏曲を大きく改訂した。曲の出来栄えに満足していなかったことを伝える手紙が残っているが、作品を葬ることなく手直しを行ったということはそれだけ曲に思い入れがあったことを示しているといえる。
NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ラフマニノフのピアノ協奏曲第1番』 2023/1/21放送
ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18
ラフマニノフが1901年、28歳頃に完成させた名曲。強度の神経衰弱から解放された後に作成された。
その屈指の美しさによって、協奏曲作家としての名声を打ち立てたラフマニノフの出世作。発表以来、あらゆる時代を通じて常に最も人気のあるピアノ協奏曲のひとつであり、ロシアのロマン派音楽を代表する曲の1つに数えられている。イギリス映画の名作『逢びき』で使われたのを初め、銀幕を彩った音楽として広く親しまれている。
曲はラフマニノフが生涯愛し続けた鐘の音から始まる。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ』 2022/03/23放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽カリンニコフの交響曲第1番 他』 2022/08/02放送
ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 作品30
この曲はドレスデン滞在中の1907年に書き始め、1909年に完成し、ニューヨークで初演された。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番 他』 2022/07/04放送
第2番に知名度では劣るものの、高度な演奏技術を要求される曲で、ピアノ協奏曲の中で最難関のひとつとも言われている。
セルゲイ・ラフマニノフ - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/セルゲイ・ラフマニノフ#管弦楽作品
ピアノ協奏曲 第4番 ト短調 作品40
先述したように、この作品は1917年にロシアを出てからほとんど作曲活動を行っていなかったラフマニノフにメトネルが作曲の再開を促し、1926年に完成させた曲である。メトネルに献呈された。
初演は1927年にラフマニノフのピアノ、ストコフスキー指揮のフィラデルフィア管弦楽団で行われたが、不評だったため、何度か改訂している。
ほかの協奏曲に比べ、演奏される機会が少ない曲である。
しかし、リズムや和声の緻密さ、巧妙なオーケストレーションの展開が魅力の作品である。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽メトネルのバイオリン・ソナタ第3番「ソナタ・エピカ」 他』 2022/9/22放送
パガニーニの主題による狂詩曲 作品43
この作品は主題と24の変奏からなる。
パガニーニの主題による狂詩曲 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/パガニーニの主題による狂詩曲
ピアノ協奏曲第2番や第3番で作曲家としても大成功していたラフマニノフが晩年に挑んだ作品である。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽パガニーニの「24の奇想曲」から 他』 2023/6/30放送
ラフマニノフは創作意欲が湧かずにいたアメリカで1926年に作曲を再開した。
そして、1934年、61歳の時に、ヴァイオリンの名手パガニーニ作曲の「24の奇想曲」から第24曲「主題と変奏」の「主題」を用いた(つまり、同じ主題を使った)変奏曲形式のピアノ協奏曲を作曲した。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラフマニノフの交響的舞曲』 2023/3/28放送
中でも最も有名なのは第18変奏である。この旋律はパガニーニと一見関係なさそうであるが、パガニーニの主題から生まれた旋律である。即ち、パガニーニの主題を最も単純な音型にするラドシラとなる。そして、この音型をラを中心に上下に反転するとラファソラとなり、第18変奏の音型と同じになるのである。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽パガニーニの「24の奇想曲」から 他』 2023/6/30放送
なお、ラフマニノフは、友人のピアニスト、ホロヴィッツに「シューマンもブラームスも思いつかなかったすごいアイディアが浮かんだ。あの主題の旋律を反行させたら、とてもきれいな旋律になることを発見した」「この変奏1つがこの曲全体を救ってくれるだろう」と伝えたという。 その変奏こそ最も有名な第18変奏曲であった。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラフマニノフの交響的舞曲』 2023/3/28放送
管弦楽曲
交響的舞曲
全3楽章。晩年の1940年に作曲された。ラフマニノフ67歳生涯最後の作品である。
グレゴリオ聖歌の「怒りの日」の旋律が引用されている。また、この曲はロシアの詩人トルストイの詩「サドコ」からインスピレーションを受けており、ラフマニノフのロシアへの郷愁が込められた作品である。
孫娘のソフィアは「この最後の作品に対する祖父の思い入れは驚くほどでした。これほど熱心にレコーディングした楽曲はありません。ロシアで演奏されたらどんな反響があるかとても関心を持っていました。祖父の死後でもいいですから白鳥が死ぬ間際に歌う最後の歌のようなこの曲を誰かレコードにしてくださるだろうと信じたいです」と語っている。
なお、管弦楽版で知られるが、ピアノ版もある。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ウェーバーの「舞踏への勧誘」他』 2022/9/5放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラフマニノフの交響的舞曲』 2023/3/28放送
室内楽曲
ピアノ・ソナタ 第1番 ニ短調 作品28
一時的にドイツのドレスデンへ引っ越した翌年の1907年、34歳の年に作曲された。ゲーテの戯曲「ファウスト」に触発されて書いた。
超絶技巧を要求される壮大な楽曲で、知る人ぞ知る名曲である。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラフマニノフのピアノ・ソナタ 第1番 他』 2022/10/25放送
ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 作品36
多忙を極めていたラフマニノフが1913年に演奏活動を一部休止し、作曲に専念して手がけた曲である。
ラフマニノフが好み、たびたび楽曲に用いたグレゴリオ聖歌の「怒りの日」の主題とラフマニノフが生涯愛し続けたロシアの鐘の音が現れる。
なお、この曲は今日1931年の改訂版が多く演奏されているが、ウクライナ出身のピアニスト、ホロヴィッツはラフマニノフに相談した上で、初版と改訂版を結び合わせた独自のホロヴィッツ版を演奏している。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラフマニノフの合唱交響曲「鐘」 他』 2022/11/22放送
悲しみの三重奏曲 第2番 ニ短調「偉大な芸術家の思い出」作品9
20歳の時の作品。1893年に53歳で亡くなったチャイコフスキーに捧げられている。
11月にチャイコフスキーの訃報を受け、この作品を作曲した。恐ろしいほどに心を痛め、精神を病むような状態で書き上げたという。
曲は3楽章で構成される。第1楽章では鐘の音とともにかけがえのないものを失ってしまったという悲しみの歌が貫かれている。第2楽章は自由な変奏曲の形で書かれ、在りし日のチャイコフスキーを思い、続く第3楽章では悲哀と激しい慟哭、そして弔いの鐘が再び表される。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ チャイコフスキーとラフマニノフの「偉大な芸術家の思い出」』 2024/2/13放送
ピアノ曲
幻想的小品集 作品3
前奏曲 嬰ハ短調 作品3第2
ラフマニノフの代名詞ともいえる作品。
鐘の音を想起させるこの曲はモスクワ音楽院作曲家を卒業した1892年19歳の年の作品。翌年には楽譜が出版されて瞬く間に人気となり、生涯ラフマニノフはどの国に行っても演奏会でこの曲を求められた。「ミスター嬰ハ短調」とも呼ばれたそうで、ラフマニノフは「私の曲はこの曲と2番と3番のピアノコンチェルトしかないみたいだな」と苦笑いをしていたと言う。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラフマニノフの「鐘」』 2023/11/21放送
楽興の時 作品16
ラフマニノフが23歳の年に作曲した6曲からなるピアノ曲集である。
中でも苦悩や忍びよる闇を感じさせるような第3番、疾走する悲しみを表現するかのような第4番は抜粋して続けて演奏されることが多い人気の曲である。
なお、このピアノ曲は自作自演をモットーにしていたメトネルが演奏会で取り上げていたと言われる。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽メトネルのバイオリン・ソナタ第3番「ソナタ・エピカ」 他』 2022/9/22放送
ショパンの主題による変奏曲 作品22
ショパンの「24の前奏曲 作品28」の「第10曲 嬰ハ短調」は最初の1小節が音やニュアンスを変えながら繰り返されるが、この作品は後世の作曲家にも影響を与えた。ラフマニノフもその1人で彼は1903年に「ショパンの主題による変奏曲」を書き上げた。
この曲ではショパンのハ短調の前奏曲のメロディーが形を変えながら22回繰り返される。ピアノの名手だったラフマニノフらしいすべてのバリエーションが達人の技術を求める作品である。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ラフマニノフの「交響曲 第2番 ホ短調 作品27」他』 2022/08/31放送
コレッリの主題による変奏曲 作品42
アメリカへの亡命後、ラフマニノフは作曲への意欲が湧かず、ピアニストとして多忙だったこともあり、生まれた作品はごくわずかであった。
その1つが1931年の休暇をフランスで過ごした時に3週間で書き上げたという久々のピアノ曲「コレッリの主題による変奏曲」である。
これはイタリア、バロック時代の作曲家で、ヴァイオリニストでもあったコレッリがヴァイオリン・ソナタ「フォリア」の中で用いた古い舞曲フォリアの旋律を主題に作曲した変奏曲である。ピアノのヴィルトゥオーゾとして活躍したラフマニノフならではの高度なテクニックが盛り込まれた20分程の力作。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ドボルザークの交響曲第9番「新世界から」』 2023/6/15放送
クライスラーに献呈された。
フリッツ・クライスラー - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/フリッツ・クライスラー
連弾曲など
1891年夏、18歳のラフマニノフが親戚筋の3姉妹のために作曲した連弾曲。曲の導入部の調べは、およそ10年後に完成するピアノ協奏曲第2番第2楽章のオーケストラの序奏に転用された。
NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ラフマニノフのピアノ協奏曲第1番』 2023/1/21放送
組曲 第1番 作品5
2台のピアノのための作品である。
ラフマニノフ初期の作品で20歳の時に作曲された。この年の夏、ラフマニノフは友人の紹介でウクライナを訪れ、そこで作曲活動に専念してこの曲を書き上げて尊敬するチャイコフスキーに捧げた。
4曲からなり、それぞれには副題のように愛読していた詩が添えられている。それぞれの詩の世界を題材に幻想的な音楽が書かれている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ モーツァルトの2台のピアノのためのソナタ 他』 2022/11/28放送
組曲 第2番 作品17
ピアノ協奏曲第2番とほぼ同じ時期(1901年)に書かれた2台ピアノのための組曲。ラフマニノフは2台ピアノによる演奏が大好きであった。最晩年には若きホロビッツとの共演も楽しんでいる。
NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ラフマニノフのピアノ協奏曲第1番』 2023/1/21放送
編曲など
ラフマニノフはアメリカでクライスラーと親しくなり、クライスラーのヴァイオリン小品をピアノに編曲している。
NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ラフマニノフのピアノ協奏曲第1番』 2023/1/21放送
愛の悲しみ
歌曲
ヴォカリーズ 作品34第14
1912年に書いた歌曲。ラフマニノフの数多ある歌曲の中でも、最もよく知られた曲である。
もともと母音唱法で歌われる旋律にピアノ伴奏がついた声楽曲であったが、さまざまな楽器による編曲版が数多く存在する。
NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック ラフマニノフ生誕150年に寄せて(4) 〜ラフマニノフへのオマージュ』 2023/12/14放送。https://ja.wikipedia.org/wiki/ヴォカリーズ (ラフマニノフ)
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