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ブラームス


ブラームス

ブラームスの生涯・経歴

ブラームス(1833-1897)は19世紀後半に活躍したドイツの作曲家、ピアニスト、指揮者である。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ シューベルトのアルペジョーネ・ソナタ 他』 2022/10/20放送

1833年に北ドイツのハンブルクで生まれた。
父は劇場オーケストラのコントラバス奏者だったが、生活は苦しかった。

中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、204項。

10代の頃は、家計を助けるためにダンスホールなどでピアノを演奏しながら作曲を続けていた。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ブラームスの交響曲第1番』 2023/5/30放送

レメーニとの演奏旅行

ブラームスは1853年、20歳のときにハンガリーのヴァイオリニスト、エドゥアルト・レメーニの演奏旅行に伴奏者として同行した。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ブラームスの交響曲第1番(連弾版)』 2023/2/20放送

彼からジプシー音楽を教えてもらったことが創作活動に大きな影響を及ぼした(「ハンガリー舞曲」など)。この旅行で2人は当時の有名なヴァイオリニストであるヨーゼフ・ヨアヒムに会いに行き、ヨアヒムはブラームスの才能を称賛した。

ヨハネス・ブラームス - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ヨハネス・ブラームス

ヨアヒムとシューマン夫妻との出会い

ブラームスの大きな転機はヨーゼフ・ヨアヒムと知り合ったことである。

中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、204項。

年も近かった2人はすぐに意気投合し、生涯の友となった。
すでに一流のヴァイオリニストとして認められ、そうそうたる音楽家たちとも面識のあったヨアヒムはシューマン夫妻とも親しく、まだ作曲家として世に知られていなかったブラームスに紹介状を持たせ、シューマンに会うことを勧めた。当時、シューマンは作曲家、指揮者、そして音楽評論家として揺るぎない地位を確立していた。
1853年、20歳のブラームスが思い切ってシューマンの家を訪ねるとすでにヨアヒムから話を聞いていたシューマンは、ブラームスを暖かく迎えた。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽シューマンピアノ協奏曲 他 – NHK-FM』 2022/07/07放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ブラームスのピアノ三重奏曲第1番 他』 2022/07/26放送

ブラームスは自作のピアノ・ソナタ(「ピアノ・ソナタ第1番」など)を弾いてシューマンに認められる。シューマンは「彼は本当に驚くべき世界を露わにし出した。そこには姿を変えた交響曲のようなソナタがあった」とその衝撃を書き残している。また、ブラームスを「ベートーヴェンの後継者だ」とも評した。
シューマンから絶賛されて、ブラームスは作曲家としての道を歩み始める。

中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、204項。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ブラームスの「弦楽六重奏曲 ト長調」他』 2022/07/27放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ブラームスの交響曲第1番』 2023/5/30放送

シューマンはブラームスの作品を高く評価して評論文で紹介し、また、楽譜の出版にも力を貸して、ブラームスはようやく作曲家として世の中に認められるようになった。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽シューマンピアノ協奏曲 他』 2022/07/07放送。

つまり、ブラームスはシューマンに才能を見込まれ、世に出るきっかけを得たのである。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ブラームスのピアノ三重奏曲第1番 他』 2022/07/26放送

ブラームスは生涯にわたって23歳年上のシューマンとその妻クララと深い親交を持った。シューマンはブラームスの作曲能力を高く評価し、ピアニストであったクララはブラームスに演奏家の立場から作曲のアドバイスを送り、夫婦でブラームスを支えた。また夫婦が困難に直面したときには逆にブラームスがシューマンを助けることもあった。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ブラームスの交響曲第4番』 2023/2/1放送

転職

1857年、クララ・シューマンの仲介で、中部ドイツの都市デトモルトの宮廷のピアニスト兼合唱指揮者として初めての公職に就いた。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽シューベルトの「ピアノ三重奏曲 第1番」他』 2022/08/24放送。小学館 『日本大百科全書』

なお、この時期の翌年1858年にはソプラノ歌手アガーテ・フォン・ジーボルトと婚約しながら、翌1859年には「結婚には踏み切れない」との理由で一方的に破談にしている。

ヨハネス・ブラームス - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ヨハネス・ブラームス。小学館 『日本大百科全書』

しかし、1859年に辞職し、以後も束縛を嫌って1つの職に長くとどまることをせず、有力な地位への就任要請をいくつも断ることになる。

続いてハンブルクに戻り、女声合唱団を組織した。のちに同団員ファーバーに生まれた子供のために有名な「こもり歌」を作曲している。
また、ウィーン出身の団員ベルタ・ポルブスキーを通じてこの都市への関心を高めた。

小学館 『日本大百科全書』。NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ブラームスのハイドンの主題による変奏曲』 2023/10/1放送

そして、1860年、27歳の年の頃にはドイツのハノーファー、デトモルトなどでピアニスト、指揮者として活動し、作曲家としては2曲のセレナードピアノ協奏曲第1番、弦楽六重奏曲第1番を書いている。

NHK-FM(東京) 『ブラームスの弦楽六重奏曲第1番 - 音楽の泉』 2024/10/6放送

ウィーン時代

1862年、29歳のブラームスはあこがれの音楽の都ウィーンを初めて訪問した。
そして、1860年代後半からウィーンを拠点とするようになり、1871年に移り住んだ。

小学館 『日本大百科全書』。NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ブラームスのハイドンの主題による変奏曲』 2023/10/1放送。ヨハネス・ブラームス - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ヨハネス・ブラームス

なお、当時、ウィーンではヨハン・シュトラウスワルツが流行していた。ブラームスはその華やかなワルツに注目し、31歳のときにワルツ集を作曲して連弾曲で初めて成功を収めている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ブラームスの交響曲第1番(連弾版)』 2023/2/20放送

ブラームスはこのウィーンでの活躍が知られ、ウィーン学友協会の監督、合唱団の指揮者などを務め、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とも深い絆で結ばれていた。

NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ブラームスのホルン三重奏曲』 2023/2/19放送

1865年、32歳を迎える年に母を亡くした。

NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック 選 オーレン・シェヴリン チェロ リサイタル』 2022/10/13放送

ケルン訪問

1862年6月にはライン音楽祭に参加するためにケルンを訪れ、その後、ミュンスターにいたクララ・シューマンの家族を訪ねて、この地で2週間ほどを過ごしている。
この間に交響曲第1番の冒頭や弦楽五重奏曲を書き始めた。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ドボルザークのピアノ五重奏曲作品81 他』 2022/11/21放送

ハイドン研究

1870年頃、ブラームスは、歴史的な楽譜や文献を数多く所蔵しているウィーン学友協会アルヒーフ(古文書資料館)のトップでハイドン研究の第一人者であったカール・フェルギナント・ポールという博士と知り合い、当時はハイドン作曲として伝えられていった管楽器のためのディベリティメントの筆写譜を手渡された。
その中にあった変ロ長調で書かれた聖歌風の調べに魅了され、その主題をもとに「ハイドンの主題による変奏曲」を作曲した。

NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ブラームスのハイドンの主題による変奏曲』 2023/10/1放送。https://www.kanaphil.or.jp/_app/wp-content/uploads/2021/09/5ff91404de7c44333c26314c249aca51.pdf

外国訪問
イタリア

1878年から1893年までの間にブラームスは8回イタリアを訪問し、気持ちの良い地方を探して夏の間に作曲した。

ヨハネス・ブラームス - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ヨハネス・ブラームス

スイス

1886年の夏、53歳のときにブラームスはスイスの避暑地トゥーン湖畔の小さな村に滞在した。友人の作家で詩人のヴィトマンがブラームスに湖畔の邸宅を提供した。
友人にあてた手紙の中でブラームスはこの街の散歩道やレストラン、親切な人々に満足し、滞在を楽しんでいることを伝えている。
トゥーン湖畔ではその年、チェロソナタ第2番やバイオリンソナタ第2番も生まれた。また、前年1885年には交響曲第4番も書いている。

NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ブラームスのチェロ・ソナタ第2番』 2024/5/12放送。NHK-FM(東京) 『ブラームスのバイオリン・ソナタ第2番 - クラシックの庭 - NHK』 2024/6/28放送

晩年

晩年は、1890年に弦楽五重奏曲第2番を完成させた後、創作意欲の衰えにより作曲活動を中断した。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ブラームスのクラリネット五重奏曲 他』 2022/9/27放送

また、59歳になった1892年には姉や友人を失い、自分自身も老いを感じ始め、前年には遺書をしたためていた。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ブラームスの交響曲第4番』 2023/12/13放送

しかし、1891年、名クラリネット奏者ミュールフェルトの演奏を聴いて創作意欲を取り戻し、「クラリネット三重奏曲 作品114」(1891年)、「クラリネット五重奏曲 ロ短調 作品115」(1891年)、「クラリネット・ソナタ 作品120」(1894)と、クラリネットのための作品を立て続けに作曲した。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ブラームスのクラリネット五重奏曲 他』 2022/9/27放送など

また、1892年の夏には12年ぶりにピアノのための作品に取り組み、集中的に20曲のピアノ曲を作曲している。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ブラームスの交響曲第4番』 2023/12/13放送

しかし、1896年、恩人であるクララ・シューマンが77歳で亡くなると、その翌年、後を追うようにして、ブラームスは64歳で亡くなった。

中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、206項。

人物像

ピアノ

プラームスの作品番号はピアノソナタ第1番作品1、第2番作品2で始まっている。ピアノの名手であったブラームスは、まずは得意のピアノ曲で作曲家デビューを果たし、ピアノ協奏曲第1番では自らソリストを務めて初演した。
その後もピアノは生涯ブラームスの大切な楽器であった。
特に50代半ば以降は大規模な管弦楽の作品は影を潜め、歌曲やピアノ曲など作曲の中心はピアノを伴う小規模な作品へと移っていく。
ブラームスの人生があと数年でつきようとする頃、7つの幻想曲作品116、3つの間奏曲作品117、6つの小品作品118、4つの小品作品119といったピアノ小品集が次々と書かれている。
ピアノソナタでその作曲家人生をスタートしたブラームスは63年の生涯の終盤にもピアノによる味わい深い小品を残した。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ブラームスの交響曲第3番』 2024/3/13放送

他の音楽家との関係

バッハ

ブラームスは若い頃から古楽に興味を示し、バッハヘンデルハイドンモーツァルトベートーヴェンなどドイツの伝統的な音楽であるバロック、古典派の作品をよく研究し学んだ。
中でも同じドイツ生まれのバッハに傾倒した。当時出版されたばかりのバッハ全集を買い揃えては、その音楽を深く研究したと言う。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ブラームスの交響曲第4番 他』 2022/08/08放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ブラームスの交響曲第4番』 2023/2/1放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ヨハン・シュトラウスワルツ「春の声」』 2023/5/18放送

ブルックナー

ブルックナーはブラームスと同時代にウィーンで活躍し、2人は不仲だったことで知られる。
ともに絶対音楽的な交響曲ばかり書き、オペラも交響詩も書かなかったので、傾向は似ているが、ブルックナーが師事したワーグナーとブラームスが不仲だったことから、異なる派閥に属したかたちになった。

中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、206項。

ドヴォルザーク

1877年、ドヴォルザークの作品をブラームスが認めたことがきっかけで、2人は親しく交わるようになった。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ブラームスの「弦楽六重奏曲 ト長調」他』 2022/07/27放送

そして、ドヴォルザークはブラームスの後押しで広くその名が知られるようになった。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ドボルザークのピアノ五重奏曲作品81 他』 2022/11/21放送。

ツェムリンスキー

ブラームスはツェムリンスキーを至るところに才能がきらめく逸材だと述べ、その後押しをした。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ツェムリンスキー交響曲第2番』 2023/8/29放送

ブラームスの音楽史における位置づけ

ロマン主義音楽

絶対音楽

ブラームスの作風は客観的・絶対音楽的な態度に貫かれている。

小学館 『日本大百科全書』

たとえば、ブラームスは4曲の交響曲を残しているが、4曲とも標題はない。

しかし、そこには明確に感情の発露がある。ブラームスは確実にロマン派の時代を生きた人だった。
実際、ブラームスの交響曲はかなり情緒的で、そこを嫌う人もいる。具体的な標題こそもたない絶対音楽ではあるが標題性を持つという、交響曲の改革をなしとげたといえる。
ベートーヴェンの革命を継承しつつも、リストが新しいジャンルである交響詩の創設に向かったのに対し、ブラームスは古典派様式を堅持しつつも、そこに新しい精神を盛り込むことに成功した。

中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、205項。

ブラームスの意義・評価

バッハベートーヴェンと並ぶドイツの大作曲家

ブラームスはシューベルトや、それ以前のバッハヘンデルハイドンモーツァルトベートーヴェンを深く敬愛し、19世紀ロマン派真っ只中の時代に古典的な様式を重んじた独自の作風を貫いた。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ シューベルトのアルペジョーネ・ソナタ 他』 2022/10/20放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ヨハン・シュトラウスワルツ「春の声」』 2023/5/18放送

独奏曲から交響曲に至るまで多くの分野で名曲を生み出し、バッハベートーヴェンにも並び称されるドイツの大作曲家である。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ブラームスの交響曲第1番』 2023/5/30放送

ブラームスの作品

ブラームスは、ロマン派時代のドイツロマンの重要ジャンルであるオペラと交響詩を書いていない。

中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、203項。

交響曲

交響曲は、偉大なベートーヴェンの作品の重圧もあり、40代になるまで発表できずにいた。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ブラームスの「弦楽六重奏曲 ト長調」他』 2022/07/27放送

交響曲 第1番 ハ短調 作品68

19世紀ロマン派の時代、交響詩などの標題音楽が主流になってくると交響曲という古い時代の様式は少しずつ存在感が薄れていった。
そうした中、ブラームスは古い洋式の中に独自のロマンティシズムを息づかせた交響曲を目指して悩み抜く。心から敬愛し、大きく立ちはだかるベートーヴェンという巨人の9つの交響曲を前にブラームスは途方に暮れて悩み、なかなか書き上げることができなかったのである。
ブラームスが交響曲の作曲を思い立ったのは1855年頃のまだ20代の初めごろで、1862年29歳の時にその冒頭を書き始めた。結局、交響曲第1番は着想から完成までに20年以上もの歳月を費やし、1876年に完成した。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽シューマンピアノ協奏曲 他』 2022/07/07放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ シューベルトのアルペジョーネ・ソナタ 他』 2022/10/20放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ドボルザークのピアノ五重奏曲作品81 他』 2022/11/21放送

なお、逆に言えば、ベートーヴェンの第9が初演された1824年からブラームスの第1番の1876年までの約50年は、交響曲不作時代だったとも言える。

中川 右介 『3時間でわかる「クラシック音楽」入門』 青春出版社、2006年、156-157項。

完成の年1876年に行われた初演では反応は様々で時代錯誤という批判もあった。
しかし、指揮者のハンス・フォン・ビューローはこの曲をベートーヴェンの第9に続く第10交響曲だと高く評価し、認めた。こうしてブラームスの交響曲第1番は、ベートーヴェンの第9に次ぐ偉大な交響曲という意味で、「第10番」と呼ばれることもある。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ シューベルトのアルペジョーネ・ソナタ 他』 2022/10/20放送

交響曲 第2番 ニ長調 作品73

交響曲第1番の完成により何かが吹っ切れたのか、交響曲第2番はその翌年の1877年にわずか4カ月で書き上げている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽シューマンピアノ協奏曲 他』 2022/07/07放送。

曲想は牧歌的で、ベートーヴェン交響曲に例えて「田園交響曲」とも呼ばれている。

交響曲 第3番 ヘ長調 作品90

交響曲 第4番 ホ短調 作品98

全4楽章。ブラームスはバッハの音楽を深く研究したと言うが、そうした研究が実を結び、ブラームスが52歳の時に完成した作品が第4番である。
この第4番を締めくくる第4楽章にはバッハの「カンタータ第150番 主よ、われ汝を仰ぎ望む BWV150」の旋律が重要な素材として登場する。第4楽章の冒頭で、この旋律をもとにした主題が演奏されると、主題は形を変えながら何度も繰り返される。これはバッハの時代に流行したパッサカリアと呼ばれる形式である。
初演は成功したが、第4楽章のパッサカリアが古い印象を与えると批判が出て、その後しばらく演奏機会に恵まれなかった。
しかし、少しずつ作品の真価が見直されるようになり、いまではブラームスの代表作となっている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ブラームスの交響曲第4番 他』 2022/08/08放送。

協奏曲
ピアノ協奏曲

ピアノ協奏曲 第1番 ニ短調 作品15

シューマンが世を去った翌年1857年に完成した。まだ20代のブラームス渾身の作品で、演奏時間40分あまりの大作。華やかなピアノ協奏曲というよりは、ピアノとオーケストラによって構築される交響的な音楽である。
完成から2年後の1859年で、親しい友人でヴァイオリニストでもあったヨーゼフ・ヨアヒムの指揮、ブラームス自身のピアノで初演された。初演直後はなかなか理解されず、途中で野次を飛ばす聴衆もいて、若いブラームスは心を痛めたというが、今ではブラームスらしい叙情あふれる名曲として広く愛されている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ グリーグ組曲「ホルベアの時代から」 他』 2022/12/1放送

ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 作品83

1878年ブラームスは初めてイタリアを旅行した。イタリアの明るい日差しはブラームスの心をとらえ、この旅行がピアノ協奏曲第2番を書くきっかけを与えた。
1881年再びイタリアを訪れたブラームスは帰国後、本格的に作曲に取り組み、50分にも及ぶ作品を一気に書き上げた。初演は11月にブダペストでブラームス自身のピアノ独奏によって行われた。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ブラームスの「ピアノ協奏曲 第2番」他』 2022/9/12放送

初期の作品であるピアノ協奏曲第1番より22年後に書かれた。交響曲第2番やヴァイオリン協奏曲と並ぶ、ブラームスの成熟期・全盛期の代表作であり、最も有名な作品の1つでもある。
一般的に古典派、ロマン派以降の協奏曲は3楽章から構成されるが、この作品は交響曲のようにスケルツォ楽章を備えた4楽章からなる。

ピアノ協奏曲第2番 (ブラームス) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ピアノ協奏曲第2番 (ブラームス)

ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 作品102

この作品はブラームスが54歳の年、1887年に作曲した。
当時、ブラームスは友人のチェリスト、ハウスマンのためにチェロ協奏曲の作曲を始めたが、チェロだけでなく、ヴァイオリンとチェロのための協奏曲にしたいと思いつくと、その構想がどんどん膨らんでいった。実はその頃、ブラームスは長年の友人で、ヴァイオリンの名手でもあったヨーゼフ・ヨアヒムと不仲になっていて、和解を願っていたからかもしれない。ついには喧嘩中だったヨアヒムに手紙を書き、ヨアヒムの助言を受けながらこの曲を作曲した。1887年10月にヨアヒムのヴァイオリン、ハウスマンのチェロ、ブラームスの指揮で初演が行われた。ブラームスとヨアヒムはこれをきっかけに仲直りした。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ マーラー交響曲第4番』 2023/1/19放送

管弦楽曲
セレナード

ブラームスは管弦楽のためのセレナードを2曲作曲している。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽シューベルトの「ピアノ三重奏曲 第1番」他』 2022/08/24放送

セレナード 第1番 ニ長調 作品11

ブラームスのオーケストラ芸術の原点。20代半ばの時に1857年から1858年にかけて赴任先のドイツ、デトモルトで作曲した。
ヨアヒムから贈られたハイドン交響曲第104番「ロンドン」のスコアを徹底的に研究して全6楽章からなるオーケストラ「セレナード」を作った。

NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ブラームスのハイドンの主題による変奏曲』 2023/10/1放送

セレナード 第2番 イ長調 作品16

全5楽章。1859年、26歳の時に完成。
もっとも初期の管弦楽曲の1つで、クララ・シューマンに献呈された。
木管とホルン、そしてヴァイオリンを除いた弦楽合奏という編成で、ヴァイオリンがないために現在演奏される機会は多くない。
しかし、中低音の音域の楽器が活躍するこの作品はブラームスらしい落ち着いた響きに満ちている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽シューベルトの「ピアノ三重奏曲 第1番」他』 2022/08/24放送

ハイドンの主題による変奏曲 変ロ長調 作品56a

交響曲第1番を完成させる3年前の40歳の時に書いたオーケストラ曲の逸品。

先述したように、1870年頃、ブラームスはハイドン研究の第一人者であったカール・フェルギナント・ポールという博士と知り合い、当時はハイドン作曲として伝えられていった管楽器のためのディベリティメントの筆写譜を手渡された。その中にあった変ロ長調で書かれた聖歌風の調べに魅了され、その主題をもとにこの作品を作曲した。
懸案の交響曲を書く前にオーケストレーション(管弦楽法)を極めたかったとも考えられる。

NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ブラームスのハイドンの主題による変奏曲』 2023/10/1放送。https://www.kanaphil.or.jp/_app/wp-content/uploads/2021/09/5ff91404de7c44333c26314c249aca51.pdf

大学祝典序曲 ハ短調 作品80

ブラームスの2つある演奏会用序曲のうちの1つ。

大学祝典序曲 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/大学祝典序曲

ブラームスは1879年にドイツのブレスラウ大学から名誉博士の称号を贈りたいという申し出があり、快く受けた。そしてそのお礼として、この明るく喜ばしい序曲を作曲し、献呈した。この曲には当時広く親しまれていた学生歌4曲が用いられ、ブラームスの円熟した作曲技法によってまとめ上げられた。

NHK-FM(東京) 『クラシックの庭 シューベルト交響曲第8番』 2024/5/9放送

室内楽曲
ピアノ三重奏曲

ピアノ三重奏曲 第1番 ロ長調 作品8

この曲はシューマンに才能を見込まれ、世に出るきっかけを得た頃に書き始められ、1854年に完成した。初演は1855年にニューヨークで行われた。
さらに完成から30年以上を経て、ブラームスはこの曲に手を加え始め、1890年、57歳の年に改訂版が完成した。今日ではこの改訂版で演奏される機会が多い。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ブラームスのピアノ三重奏曲第1番 他』 2022/07/26放送

ホルン三重奏曲

ブラームスは多くの室内楽曲を作曲しているが、ホルンを使用した室内楽曲は「ホルン三重奏曲 変ホ長調 作品40」のみである。

ホルン三重奏曲 (ブラームス) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ホルン三重奏曲 (ブラームス)

ホルン三重奏曲 変ホ長調 作品40

ブラームスの室内楽の名作の1つで、1865年、ブラームスがまだ32歳の時、ウィーンに定住する前の作品。
ブラームスは、この調べをドイツ南西部の黒い森シュヴァルツヴァルトと呼ばれる地域を散策中にイメージしたという。作曲に際しては、彼の時代にすでに進化していたバルブのついた近代的なホルンではなくて古いタイプの昔ながらのナチュラルホルンの音色を想定して曲を書いている。
同年2月には最愛の母親が亡くなっており、その悲しみを映し出す調べも聞こえてくる。
この曲をことのほか愛したのがブラームスより14歳年上で、19世紀半ばを代表するピアニストだったクララ・シューマンで、クララは1870年にブラームスのホルン三重奏曲を、自分のリサイタルの1曲目としてウィーン学友協会小ホールのオープニングで弾いた。ホールに集った客は気鋭のブラームスの音楽をベテランのピアニスト、クララ・シューマンの演奏で味わったわけである。

NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ブラームスのホルン三重奏曲』 2023/2/19放送

弦楽四重奏曲

弦楽四重奏曲は、偉大なベートーヴェンの作品の重圧もあり、40代になるまで発表できずにいた。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ブラームスの「弦楽六重奏曲 ト長調」他』 2022/07/27放送

ピアノ五重奏曲

ピアノ五重奏曲の編成で書かれた作品は「ピアノ五重奏曲 ヘ短調 作品34」が唯一の作品である。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ドボルザークのピアノ五重奏曲作品81 他』 2022/11/21放送

ピアノ五重奏曲 ヘ短調 作品34

ブラームスの代表作の1つ。
複雑な過程を経て完成した作品で、はじめは弦楽五重奏曲として完成したものの満足する出来ばえではなく、この曲を2台のピアノのために改作した。1864年に完成して初演を行なったが、大きな反響は得られなかった。
そのため、この曲をさらに弦楽四重奏とピアノの五重奏、つまりピアノ五重奏曲として作曲した。なお、この改作にあたってはクララの助言も受けていたという。
30代のブラームスが大作曲家へと飛躍する時期の湧き上がる創作意欲が垣間見える1曲でもある。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ドボルザークのピアノ五重奏曲作品81 他』 2022/11/21放送

弦楽六重奏曲

弦楽六重奏曲は20代から30代前半にかけて作曲されたブラームスの初期の代表作で2曲残されている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ブラームスの「弦楽六重奏曲 ト長調」他』 2022/07/27放送

弦楽六重奏曲 第1番 変ロ長調 作品18

功なり名を遂げた時期の作品、円熟期の音楽ではなく、ブラームス若き日の傑作。弦楽四重奏ビオラとチェロが加わった弦楽六重奏。全4楽章。
1860年27歳の年に作曲された。ドイツのハノーファー、デトモルトなどでピアニスト、指揮者として活動し、作曲家としては2曲のセレナードピアノ協奏曲第1番を書いた頃である。
モーツァルト弦楽四重奏ビオラを追加した弦楽五重奏曲を書いていて、シューベルト弦楽四重奏にチェロを追加した弦楽五重奏曲を書いているので、そうした音楽を意識したかもしれない。
弦楽六重奏というフォーマットは前例がなかったわけではないが、ブラームスによって広まったと言える。ブラームスが弦楽六重奏曲で成功したことにより、チャイコフスキーがこの編成で「フィレンツェの思い出」、そしてブラームスの音楽を愛していたシェーンベルクが「清められた夜」を書いている。
なお、第2楽章は1958年のルイ・マル監督のフランス映画「恋人たち」に使われ、以来、恋人や愛のテーマとして多くのメディアで紹介され、広く知られるようになった。

NHK-FM(東京) 『ブラームスの弦楽六重奏曲第1番 - 音楽の泉』 2024/10/6放送

弦楽六重奏曲 第2番 ト長調 作品36

1865年32歳の年にに完成。この曲には数年前に婚約を破棄した女性アガーテの思い出が込められているという説もある。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ブラームスの「弦楽六重奏曲 ト長調」他』 2022/07/27放送

バイオリン・ソナタ

ブラームスは全部で3曲のバイオリン・ソナタを作曲した。

バイオリン・ソナタ 第2番 イ長調 作品100

1886年の夏、スイスの避暑地トゥーンに滞在していた時に作曲した。ゆったりとした環境の中で作曲されたこの作品は明るい雰囲気に満ちている。全3楽章構成。

NHK-FM(東京) 『ブラームスのバイオリン・ソナタ第2番 - クラシックの庭 - NHK』 2024/6/25放送

チェロ・ソナタ

ブラームスは20年余りの時を隔てて2つのチェロ・ソナタを残した。

NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック 選 オーレン・シェヴリン チェロ リサイタル』 2022/10/13放送

チェロ・ソナタ 第1番 ホ短調 作品38

比較的若いころに書かれている第1番は32歳を迎える年1865年に完成した作品。ちなみにこの1865年はブラームスにとって母を失った悲しみの年でもあった。
チェロ・ソナタ第1番は渋みがある息の長いフレーズで綴られている点が特徴である。

NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック 選 オーレン・シェヴリン チェロ リサイタル』 2022/10/13放送

チェロ・ソナタ 第2番 ヘ長調 作品99

53歳1886年の夏にスイスの避暑地トゥーン湖畔の小さな村の邸宅で作曲した。
この作品の創作の背景にはブラームスの盟友でもあったバイオリニスト、ヨアヒムが結成したヨアヒム弦楽四重奏団のチェリスト、ローベルト・ハウスマンの存在がある。
なお、ハウスマンはブラームスより19歳年下で、ブラームス芸術に惚れ込んだ音楽家の1人である。ブラームスが若い頃に書いたチェロソナタ第1番を得意のレパートリーとしていた。

NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ブラームスのチェロ・ソナタ第2番』 2024/5/12放送

クラリネットのための室内楽曲

先述したように、ブラームスは晩年、創作意欲の衰えにより作曲活動を中断したが、名クラリネット奏者ミュールフェルトの演奏を聴いて創作意欲を取り戻し、「クラリネット三重奏曲 作品114」(1891年)、「クラリネット五重奏曲 ロ短調 作品115」(1891年)、「クラリネット・ソナタ 作品120」(1894)と、クラリネットのための作品を立て続けに作曲した。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ブラームスのクラリネット五重奏曲 他』 2022/9/27放送など

クラリネット三重奏曲 イ短調 作品114

クラリネット三重奏曲は、クラリネットとチェロ、そしてピアノという珍しい編成である。
クラリネットはミュールフェルトが演奏することを想定し、チェロは友人のハウスマンを念頭においていた。そして、ピアノはブラームス本人である。
現在ではクラリネット五重奏曲のほうがよく演奏されるが、ブラームスが気に入っていたのは、クラリネット三重奏曲のほうだったと言われている。
全4楽章で、ブラームス晩年の傑作である。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ シューマンの「リーダークライス 作品39」他』 2022/11/16放送

クラリネット五重奏曲 ロ短調 作品115

クラリネットのための室内楽。全4楽章。晩年の作品で1891年58歳の時に書かれた。人生の黄昏時を迎えたブラームスが生み出した傑作である。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ブラームスのクラリネット五重奏曲 他』 2022/9/27放送など

クラリネット・ソナタ 作品120

第1番と第2番の2曲からなり、クラリネットの魅力を余すことなく伝える作品である。

『クラシックカフェ』2022/5/25放送

ピアノ曲(ピアノ独奏曲)
シューマンの主題による変奏曲 嬰ヘ短調 作品9

1854年、シューマンは精神的に不安定になり、自ら死を選ぼうとするまでになる。クララは夫を支えるために力を尽くさなくてはならず、夫婦は苦しい日々を過ごしていた。この年、ブラームスはシューマンへの敬意を表し、クララを励ましたいと願ってこの曲を作曲した。主題はシューマンの小品集「色とりどりの作品 作品99」に収められた「5つの音楽帳」の第1曲から取られている。シューマンは完成した楽譜を見てとても喜び、その2年後、46歳の生涯を閉じた。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ブラームスの交響曲第4番』 2023/2/1放送

主題と変奏 ニ短調 作品18b

この曲はブラームスの弦楽六重奏曲第1番第2楽章をピアノ独奏用に編曲したもので主題と6つの変奏で構成されている。深い哀愁に満ちた音楽の中にかすかな希望を感じさせる作品。
ブラームスはこの作品をシューマン亡き後も親交が続いていたクララへ41歳の誕生日のお祝いに捧げた。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ シューマンピアノ協奏曲イ短調』 2023/8/7放送

ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ 作品24

ブラームスはバッハヘンデルベートーヴェンなどを敬愛し、ドイツの伝統的な音楽に多くを学んだ。
この曲はブラームスが28歳の年に作曲した若き日のピアノ曲。ヘンデルの「組曲 変ロ長調 ヘンデル作品番号434」からのアリアを主題にしたもので、主題と25の変奏、そしてフーガからなる。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ヨハン・シュトラウスワルツ「春の声」』 2023/5/18放送

2つのラプソディ 作品79

この曲は1879年46歳の年に作曲したピアノ曲。第1曲はロ短調、第2曲はト短調。ブラームスが最も心を許していたといわれる弟子のエリーザベト・フォン・シュトックハウゼンに献呈された。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベン交響曲第5番』 2023/1/17放送

晩年のピアノ曲集

1892年の夏、60歳を目前にしたブラームスは集中的に20曲のピアノの小品を作曲した。ブラームスはそれらの作品を「自らの苦悩の子守歌」と呼んだと言われている。それらは作品116-119の4つの作品集にまとめられた。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ブラームスの交響曲第4番』 2023/12/13放送

幻想曲集(7つの幻想曲)作品116(Seven Fantasias for piano, Op. 116)

4つの曲集の最初の曲集。
幻想曲集というタイトルだが、それぞれの曲のタイトルは3曲の奇想曲と4曲の間奏曲からなり、幻想曲という作品はない。ブラームス自身出版社に曲集の名前を考えてほしいと冗談交じりに手紙を書いている。
簡素で分かりやすい形式、そして磨き抜かれた作曲技法が紡ぎ出す、老境に差し掛かったブラームスの味わい深い音楽が感じられる。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ブラームスの交響曲第4番』 2023/12/13放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ブラームスの交響曲第2番』 2024/3/25放送

3つの間奏曲 作品117

1892年、59歳の年の作品。ブラームス晩年の孤独と寂寥感に彩られた名作。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ブラームスの交響曲第3番』 2024/3/13放送

4つの小品 作品119

ブラームスが1893年に書いた最後のピアノ曲集である。4曲で構成される。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベン交響曲第5番』 2023/1/17放送。4つの小品 (ブラームス) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/4つの小品 (ブラームス)

・第1曲 間奏曲 ロ短調

この曲は60歳になったブラームスが自分の誕生日の挨拶としてクララ・シューマンに贈った曲だと伝えられている。クララはこの曲を「灰色の真珠」と形容したという。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベン交響曲第5番』 2023/1/17放送

ピアノ連弾

ブラームスは31歳にときに作曲したワルツ集が成功したことから、さらなる連弾曲に取り組むが、中でも最大のヒット作となったのがハンガリー舞曲である。
また、ワルツ集やハンガリー舞曲を作曲する一方で、4つの交響曲や大学祝典序曲、悲劇的序曲、ピアノ協奏曲やドイツレクイエムなど様々な作品を連弾用に編曲していった。多くの楽器が用いられる管弦楽版に比べて音を削ぎ落とし、シンプルな形で楽しめる連弾版では音楽の構造がよりはっきりと感じられる。ピアノを知り尽くしたブラームスならではの工夫が施され、作品の新たな魅力を引き出している。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ブラームスの交響曲第1番(連弾版)』 2023/2/20放送

ワルツ集 作品39

ウィーンを活動拠点し始めた頃、ウィーンではヨハン・シュトラウスワルツが流行していた。ブラームスはその華やかなワルツに注目し、31歳のときにワルツ集を作曲して連弾曲で初めて成功を収めた。全16曲。
作品は完成するとブラームスの良き理解者だった音楽評論家のハンスリックに捧げられた。ハンスリックは作品について次のような言葉を残している。
シューマンの弟子であるブラームスは北ドイツ風でプロテスタント。 そしてシューマンのように非世俗的な男である。そんな彼がワルツを書いた。」
それまでのブラームスの音楽からは想像しがたい、明るく柔和なこのワルツ集は周囲の人々を驚かせたのであった。
当時、ウィーンの家庭ではピアノが普及し、家族で気軽に演奏できる作品が注目されていた。なかでも1台のピアノで2人が演奏できる連弾は人気が高く、ブラームスのワルツ集もその人気にあやかって多くの家庭で演奏された。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ブラームスの交響曲第1番(連弾版)』 2023/2/20放送

なお、このピアノ連弾のためのワルツ集をブラームス本人がピアノ独奏用に編曲した版もある。ウクライナ生まれの名ピアニスト、グリンベルクはこの編曲版を用い、全16曲の中から6曲を選んで独自の順番で演奏している。

NHK-FM(東京) 『ウクライナ生まれの名ピアニスト マリア・グリンベルク - 名演奏ライブラリー』 2024/10/13放送

第15番 変イ長調

第15番はこのワルツ集の中で最も有名なナンバー。

NHK-FM(東京) 『ウクライナ生まれの名ピアニスト マリア・グリンベルク - 名演奏ライブラリー』 2024/10/13放送

ハンガリー舞曲

全4集、21曲からなるピアノ連弾曲集。

ピアノの普及に伴って「ワルツ集」が成功したことから、ブラームスはさらなる連弾曲に取り組んだ。中でも最大のヒット作となったのがこの作品である。
ブラームスはハンガリーの民族音楽に魅了された作曲家の1人である。先述したように20歳の頃、ハンガリーのヴァイオリニスト、エドゥアルト・レメーニの演奏旅行に伴奏者として同行した。そして、レメーニの演奏を通してロマ民族音楽に出会い、その旋律を楽譜に書き留めた。その後、少しずつ書き留め、そうして集めた旋律をもとに全21曲のピアノ連弾曲集「ハンガリー舞曲」は完成した。
全21曲はいずれもロマの人々の音楽的特徴を十分に表していて、旋律に施された装飾、緩やかな部分と急速な部分の対比、そして変化に満ちたリズムなどが特徴である。
ただし、第16番ほかブラームスの自作と考えてもいい曲もあるようである。
1869年に最初の10曲、そして、1880年に続く11曲を出版した。当時、ヨーロッパではロマ民族音楽が流行し、それらを家庭で楽しめるものとして、ハンガリー舞曲は大ヒットした。はじめに出版された第1集と第2集の楽譜に続けて、 2年後には第3集と第4集も刊行された。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ブラームスの交響曲第1番(連弾版)』 2023/2/20放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ブラームスの交響曲第1番』 2023/5/30放送。NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ブラームスのハイドンの主題による変奏曲』 2023/10/1放送。NHK-FM(東京) 『リゲティのバイオリン協奏曲 - クラシックカフェ』 2023/8/16放送

なお、ブラームスはこの中から数曲を自ら管弦楽に編曲し、その他の曲はさまざまな作曲家によって編曲が施されている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ドボルザークのピアノ五重奏曲作品81 他』 2022/11/21放送。

ハンガリー舞曲 第4番

日頃なかなか耳にしないナンバーであるが、隠れた名曲。

NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ブラームスのハイドンの主題による変奏曲』 2023/10/1放送

ハンガリー舞曲 第5番

ハンガリー舞曲の中でも一二を争う有名曲。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ブラームスの交響曲第1番』 2023/5/30放送

ハンガリー舞曲 第16番

日頃なかなか耳にしないナンバーであるが、隠れた名曲。

NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ブラームスのハイドンの主題による変奏曲』 2023/10/1放送

コラール前奏曲
11のコラール前奏曲 作品122

11曲からなるオルガンのためのコラール前奏曲集。
コラール前奏曲とは教会でコラール讃美歌を歌う前に演奏されるオルガン曲をいう。多くの優れたコラール前奏曲を生み出したバッハから影響を受けて作曲された作品である。
交響曲を第4番まで発表し、功成り名を遂げたブラームスが亡くなる前年1896年に作曲した。
以前にコラール前奏曲を書いたのは1850年代のことであったが、40年近い時をへて再び取り組んだ。ブラームスがコラール前奏曲に取り組むきっかけとなったのは親しかった1896年のクララ・シューマンの死だったという。
彼女を失った悲しみを慰めるように、コラール前奏曲の作曲に没頭し、完成の翌年1897年にブラームス自身も亡くなっている。
いずれもバッハの音楽への深い理解が伺える。
美しくも荘厳な響きに包まれたこの曲は作曲した年に亡くなったクララ・シューマンへの追悼、あるいは自身の死期を悟ったブラームスの音楽的遺書ともいわれている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ブラームスの交響曲第4番 他』 2022/08/08放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ブラームスの交響曲第1番』 2023/5/30放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」』 2023/11/1放送

  1. 主よ、われを導きたまえ
  2. 敬愛するイエスよ
  3. おおこの世よ、われ汝より去らねばならぬ
  4. わが心は喜びに満ちて
  5. 愛する魂よ、美しく装え
  6. おお汝、信心深い人はいかに至福なるか
  7. 尊い神よ
  8. 一輪のばらが咲いて
  9. 心から私は願う
  10. 心から私は願う
  11. おおこの世よ、われ汝より去らねばならぬ

声楽曲
歌曲

5つの歌曲 作品49

・第4曲 こもり歌

ブラームスは1859年にデトモルト宮廷のピアニスト兼合唱指揮者を辞職したのち、ハンブルクに戻って女声合唱団を組織した。そして、同団員ファーバーに生まれた子供のためにこの曲を書いた。
1869年暮れにウィーンで公開初演された。なお、その時、ピアノを弾いたのはクララ・シューマンであった。

NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ブラームスのハイドンの主題による変奏曲』 2023/10/1放送。小学館 『日本大百科全書』

「ブラームスのこもり歌」として親しまれている。

子守歌 (ブラームス) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/子守歌 (ブラームス)



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