リヒャルト・シュトラウス
リヒャルト・シュトラウス
リヒャルト・シュトラウスの生涯・経歴
リヒャルト・シュトラウス(1864-1949)は、19世紀末から20世紀前半に活躍したドイツの作曲家、指揮者である。
岩波書店 『広辞苑 第六版』。NHK-FM(東京) 『ブラームスのバイオリン・ソナタ第2番 - クラシックの庭 - NHK』 2024/6/28放送
なお、ヨハン・シュトラウス一族とは血縁関係はない。
リヒャルト・シュトラウス - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/リヒャルト・シュトラウス
1864年南ドイツのミュンヘンで生まれた。
父のフランツはミュンヘンの宮廷歌劇場のホルン奏者を務め、ワーグナーも一目置くほどの優れた演奏者であった。リヒャルト・シュトラウスはそんな父の音楽教育を受け、幼い頃から才能を発揮した。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」』 2024/1/10放送
1882年にミュンヘン大学に入学し、そこで出会った時の大指揮者ハンス・フォン・ビューローに作品が認めら、ブラームス以来の最大の個性と折り紙をつけられた。
ビューローの委嘱で作曲された「13管楽器のためのセレナード」は作曲家自身の指揮で1884年ミュンヘンで初演されて大きな評判を呼んだ。指揮者活動も開始され、この作品はリヒャルト・シュトラウスの出世作の1つとなった。
85年にはビューローの助手としてマイニンゲンで副指揮者となった。
中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、230項。小学館 『日本大百科全書』。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ モーツァルトのセレナード変ロ長調』 2023/10/11放送
こうしてリヒャルト・シュトラウスは交響詩そしてオペラで地位を確立していく。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベンの交響曲第7番 他』 2023/2/28放送
1886年22歳のときに先輩作曲家ブラームスに勧められてイタリアを旅行した。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ レスピーギの交響詩「ローマの噴水」』 2023/3/13放送
イタリア旅行の後ミュンヘンに3年とどまる間にマーラーと親交を結んだ。
89年から4年間ワイマールの宮廷劇場の第2楽長となり、この間に最初のオペラ「グントラム」を作曲した。
小学館 『日本大百科全書』
しかし、若い頃は病気がちで体が弱く、たびたび死の危険に襲われた。
天才的な作曲家、指揮者として注目され始めた頃、25歳の時に「交響詩「死と変容」作品24」(1889)を作っているが、この作品には死の危険に襲われた当時の心境が織り込まれていると言われている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽チャイコフスキーのピアノ協奏曲 第1番ほか』 2022/08/09放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ マーラーの交響曲第2番「復活」』 2023/12/11放送
また、当時、リヒャルト・シュトラウスは交響詩の創作に夢中になっていて「ドン・フアン」(1888)や「マクベス」(1890)といった交響詩も同じ時期に作曲している。
死は若きリヒャルとの興味の対象で、これらの作品にも死の描写がある。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ マーラーの交響曲第2番「復活」』 2023/12/11放送
94年にソプラノの名歌手パウリーネと結婚する。
そして、94~99年の間に彼の代表作の4つの交響詩、「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」(1894~95)、「ツァラトゥストラはこう語った」(1895~96)、「ドン・キホーテ」(1896~97)、「英雄の生涯」(1897~98)や、多くの優れた歌曲が生み出されている。
これらの交響詩はリスト、ワーグナーの「未来音楽」をシュトラウス流に踏襲したもので、ここに交響詩作家としての不動の地位が築かれた。
小学館 『日本大百科全書』
1908年、44歳の時にドイツ南部オーストリア国境に近いガルミッシュに山荘を建てる。ドイツの最高峰ツークシュピッツェを望む町で雄大な山の姿は書斎の窓からも見えたという。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽リヒャルト・シュトラウスの「アルプス交響曲」他』 2022/08/29放送
1930年代にはドイツ音楽界の頂点に立っていた。
中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、231項。
ナチスへの協力
ナチスの宣伝大臣となったゲッペルスは文化・芸術を国歌のもとで管理することにし、宣伝省の下に文化院を創設し、さらにその下に音楽院を置いた。
シュトラウスはその初代総裁に任命された。
そして、戦後はナチスに協力したとして、批判された。
中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、231-232項。
リヒャルト・シュトラウスの音楽史における位置づけ
後期ロマン派
リヒャルト・シュトラウスはドイツの後期ロマン派の掉尾を飾る人である。
彼の死によって、ようやくロマン派は本当に終焉を迎える。
中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、230・232項。
リヒャルト・シュトラウスの作品
交響詩
リヒャルト・シュトラウスは若い頃から様々な交響詩に取り組み、「ドン・フアン」や「ツァラトゥストラはこう語った」など、数々の名曲を生み出した。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ コダーイの組曲「ハーリ・ヤーノシュ」』 2023/5/1放送
ドン・フアン 作品20
初期の管弦楽曲でシュトラウスの出世作とされる。理想の女性を追い求めて遍歴を重ねるスペインの伝説上の人物、ドン・ファンを主題としたニコラウス・レーナウの詩に基づいている。
ドン・ファン (交響詩) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ドン・ファン (交響詩)
タイトルのドン・ファンはスペインの伝説上の人物である。ドン・ファンの伝説は17世紀のスペインの聖職者モリーナによって戯曲としてまとめられた。その戯曲は貴族のドン・ファンがその欲深さゆえに地獄に堕ちるという話で、モリーナはこの作品を通して欲に満ちたスペインの宮廷および貴族社会を風刺した。
やがて19世紀に入ると詩人のレーナウがドン・ファンの新しい解釈を示す。レーナウはドン・ファンを女遊びを繰り返す貴族ではなく、この世でただ1つの理想の愛を求める人物として描こうとした。
やがてかねてよりレーナウの詩を好んだリヒャルト・シュトラウスがレーナウのドン・ファンを題材にすることを思いつき、交響詩「ドンファン」が生まれた。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番』 2023/6/7放送
死と変容 作品24
この作品は25歳の時に完成した。
この作品でリヒャルト・シュトラウスが表現したのは1人の芸術家の死の瞬間であった。死との戦いやその苦痛、思い起こされるそれまでの幸せな日々だけでなく、死を迎えた後の魂の救済と浄化が美しい音楽で描かれている。若きリヒャルトの死に対する理想が劇的かつロマンあふれる音楽で表現されている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ マーラーの交響曲第2番「復活」』 2023/12/11放送
ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら 作品28
31歳の年に完成した作品。ティル・オイレンシュピーゲルとは、いたずら好きで、人々をだまし続けたドイツに古くから伝わる伝説上の人物。リヒャルト・シュトラウスは初めこのティルの生涯をオペラの題材に選んだが、途中で断念し、数年後に交響詩として作曲した。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ コダーイの組曲「ハーリ・ヤーノシュ」』 2023/5/1放送
ドン・キホーテ 作品35
スペインの小説家セルバンテスの同名の作品に着想を得て作曲された。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ 特集 音がつむぐものがたり(3)』 2023/11/8放送
オペラ(歌劇)
ばらの騎士
歌劇「ばらの騎士」はリヒャルト・シュトラウスが作曲した5曲目のオペラで、1911年46歳の時にドレスデン宮廷歌劇場で初演され、大成功を収めた。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベンの交響曲第7番 他』 2023/2/28放送。NHK-FM(東京) 『音楽の泉 リヒャルト・シュトラウスの「ばらの騎士」組曲』 2023/6/11放送
編曲
「ばらの騎士」は大ヒットしたオペラゆえワルツを中心に多くの編曲が生まれた。
シュトランス自身もワルツメドレー(ワルツ第1番、ワルツ第2番)を作っているが一番有名な編曲は「組曲」。しかし、誰が組曲の形にしたのか実はわかっていない。
NHK-FM(東京) 『音楽の泉 リヒャルト・シュトラウスの「ばらの騎士」組曲』 2023/6/11放送
バレエ音楽
泡立ちクリーム
1924年リヒャルトシュトラウスの60回目の誕生日を祝って初演された。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ 湯山昭の「お菓子の世界」』 2024/2/14放送
歌曲
4つの歌曲 作品27
この作品は新婚の妻パウリーネのために書かれたと伝えられる。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ 特集 冬のぽかぽかクラシック(4)』 2024/1/25放送
第4曲 あすの朝
「4つの歌曲」作品27の締めくくりに位置する。
シュトラウスの作品のなかでも特にロマンティックなものの1つとされ、知名度も高い。
明日! (歌曲) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/明日! (歌曲)
レーガーがピアノ独奏用に編曲している。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ 特集 冬のぽかぽかクラシック(4)』 2024/1/25放送
交響曲
アルプス交響曲
1911年から14年にかけて作曲され、1915年にベルリンで作曲者自身の指揮で初演された。
ドイツの最高峰ツークシュピッツェが見えるガルミッシュの山荘で書かれた。
アルプスの山に入る登山者が頂上を目指し、下山するまでの日を描いた作品で、その歩みに沿って登山者が聞き、体験する山の自然を壮麗なオーケストラが鮮やかに映し出している。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽リヒャルト・シュトラウスの「アルプス交響曲」他』 2022/08/29放送
管楽合奏曲
13管楽器のためのセレナード 変ホ長調 作品7
1882年18歳の年に初演されて大きな評判を呼び、リヒャルト・シュトラウスの出世作の1つとなった。
単一楽章で書かれている。この作品はモーツァルトの13管楽器のためのセレナード第10番変ロ長調に触発されて生まれたとも言われている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ モーツァルトのセレナード変ロ長調』 2023/10/11放送
協奏曲
ホルン協奏曲 第1番 変ホ長調 作品11
この作品はシュトラウスが18歳だった1882年から翌年にかけて作曲された。
3楽章からなる協奏曲で、それぞれの楽章は続けて演奏される。
シュトラウスがピアノで伴奏した初演では父フランツの弟子がホルンを吹いた。フランツはこの頃、すでに60歳を超え、息子の作品を演奏会で吹くことはなかった。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」』 2024/1/10放送
オーボエ協奏曲 ニ長調
シュトラウスは、第2次世界大戦が終結した1945年に、戦時中ナチスに協力的であったことを非難されながら祖国を離れ、スイスのチューリヒへ移住した。この作品はちょうどその頃に完成され、1946年2月にチューリヒで初演された。
全体は3つの楽章で構成されている。戦後間もない時期の社会の混乱や軋轢をみじんも感じさせないオーボエの柔らかい音色と管弦楽の美しく澄んだ響きが魅力的な作品である。
NHK-FM(東京) 『ブラームスのバイオリン・ソナタ第2番 - クラシックの庭 - NHK』 2024/6/28放送
その他の管弦楽曲
交響的幻想曲「イタリアから」作品16
リヒャルト・シュトラウスは1886年22歳のときに先輩作曲家ブラームスに勧められてイタリアを旅行した。フィレンツェ、ローマ、ナポリ、カプリ島などをめぐり、各地の美しい自然にインスピレーションを得て、その思いを音楽で描いた。4つの楽章からなる。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ レスピーギの交響詩「ローマの噴水」』 2023/3/13放送
室内楽曲
バイオリン・ソナタ 変ホ長調 作品18
この作品は1887年に完成した。
変ホ長調はベートーベンの交響曲第三番「英雄」と同じで、シュトラウスは好んで作品に用いた。
この作品を作曲した年、後に妻となるソプラノ歌手パウリーネと出会い、恋に落ちる。この作品には彼女に対する思いが込められていると言われることもある。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」』 2024/1/10放送
ピアノ曲(ピアノ独奏曲)
5つの小品 作品3
リヒャルト・シュトラウスがアルプスの山に登って感銘を受けた10代の頃に作曲された作品。この曲は若きリヒャルト・シュトラウスが尊敬していたシューマンやメンデルスゾーンからの影響のもとに生み出されている。全5曲。
NHK-FM(東京) 『クラシックの庭 リヒャルト・シュトラウスのアルプス交響曲』 2024/4/15放送
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