[歴史②]世界史

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ベートーヴェン―作品


ベートーヴェンの作品

作風・音楽傾向など

ピアノ曲

ベートーヴェンは若い頃はピアニストとしても名を馳せていた。
しかし、20代後半に耳が聞こえにくくなり始め、症状は徐々に悪化し、その影響で公の場でピアノを演奏する機会は少なくなっていく。
それでもピアノ曲を書くことへのベートーヴェンの情熱は生涯消えることはなかった。32曲のピアノ・ソナタをはじめ、ベートーヴェンが残したピアノ曲は今なお多くのピアニストたちに親しまれている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ボッケリーニ弦楽五重奏曲ホ長調』 2023/2/22放送

交響曲

ベートーヴェン交響曲を9曲作曲している。

交響曲 第1番 ハ長調 作品21

交響曲第1番は1799年に作曲された。ベートーヴェンはそれまでも何度か交響曲にチャレンジしていたが完成には至らず、そうした未完の作品を素材に取り入れながらようやく第1番を書き上げた。
師匠であるハイドンモーツァルトの影響も受けているが、ベートーヴェン独自の作風も確立し始めていて、和音の響きを充実させた力強い音楽が展開していく。
初演はウィーンのブルク劇場で行われた。そのコンサートではハイドンモーツァルトの作品、そしてベートーヴェンピアノ協奏曲第1番や七重奏曲も演奏され、最後にこの交響曲が披露されたという。残念ながら七重奏曲の方が評判は良かったというが、この第1番についても音楽の新鮮さ豊かさには注目する部分があったと称賛の声が上がったという。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ 特集 ベートーベンが聴きたくて(1)』 2023/4/17放送

交響曲 第2番 ニ長調 作品36

交響曲第2番はちょうど難聴で、「ハイリゲンシュタットの遺書」を書いた時期に作曲されている。
しかし、こうした苦難の影が見えないほどはつらつとした作品になっている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽シューベルトの「ピアノ三重奏曲 第1番」他』 2022/08/24放送

交響曲 第3番 変ホ長調 作品55「英雄(エロイカ)」

全4楽章。ベートーヴェンの最も重要な作品のひとつであると同時に器楽音楽による表現の可能性を大きく広げた画期的大作。

交響曲第3番 (ベートーヴェン) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/交響曲第3番 (ベートーヴェン)

公開の初演は1805年にウィーンの劇場でベートーヴェン自身の指揮で行われた。
当初、ベートーヴェンはこの曲にボナパルトというタイトルをつけ、フランス革命の英雄ナポレオンに献呈しようと考えていた。しかし、1804年にナポレオンが皇帝に即位したという知らせを聞いて失望し、怒りに任せて楽譜の表紙に記していたその名をかき消したという逸話が伝えられている。1806年に楽譜が出版された際には「シンフォニア・エロイカ」と改題され、「ある偉大な人物の思い出」にという一文が添えられていた。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ベートーベン交響曲第3番「英雄」 他』 2022/08/01放送

なお、「ベートーヴェンは、ホルンをそれまでの“信号ラッパ”のような役割からメロディの楽器に昇格させた作曲家」と考えられるが、特に「英雄」にはその要素が強い。

ホルン首席奏者 高橋臣宜が語る、ベートーヴェン交響曲第3番『英雄』の聴きどころ | 東京フィルハーモニー交響楽団 Tokyo Philharmonic Orchestra 公式サイト https://www.tpo.or.jp/information/detail-20170726-01.php

交響曲 第4番 変ロ長調 作品60

1806年の夏、ベートーヴェンはパトロンだった貴族リフィノフスキーと旅行に出かけた。当時はプロイセンの一部だったポーランドのシレジア地方を巡る中、オッペルスドルフ伯爵という貴族の宮廷を訪れる。音楽愛好家の伯爵は宮廷オーケストラを持っており、ベートーヴェン交響曲第2番を演奏して歓迎した。そして新作の交響曲を献呈してくれるようベートーヴェンに頼んだ。当初は交響曲第5番を献呈する予定であったが、伯爵の謝礼が遅れたため、交響曲第4番を献呈することになった。
交響曲第3番「英雄」や第5番「運命」の影に隠れがちで、編成もベートーヴェン交響曲の中では最も小さい作品であるが、溌剌としたエネルギーに溢れる中期の傑作。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ 特集 ベートーベンが聴きたくて(3)』 2023/4/19放送

交響曲 第5番 ハ短調 作品67「運命」

この作品はベートーヴェンの9曲の交響曲の中でも広く愛されてきた。
1803年にスケッチが始められ、1804年から1808年にかけて作曲されたとみられている。そして、1808年12月、ベートーヴェンが38歳の年に「田園」と一緒に初演が行われた。

一般的に呼ばれている名称「運命」は作曲家本人がつけたものではない。
裏拍から入る曲の冒頭の動機について、弟子の一人シンドラーが「このように運命が扉を叩くのだ」とベートーヴェンが説明したと述べたという有名なエピソードに由来するが、真偽は不明なままである。

いずれにせよ、この頃、ベートーヴェンの耳はほとんど聞こえておらず、徹底的な推敲を重ねて書き上げた傑作である。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベン交響曲第5番』 2023/1/17放送

交響曲 第6番 ヘ長調 作品68「田園」

1817年から翌年夏にかけて作曲された。田舎で人間が感じる感情や印象が音で描かれている。
全5楽章からなり、ベートーヴェン自身によって次のタイトルが与えられている。

  1. 田舎に着いたときの愉快な気分
  2. 小川のほとり
  3. 田舎の人々の楽しい集い
  4. 雷と嵐
  5. 牧歌 嵐のあとの喜びと感謝

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベン交響曲第6番「田園」 他』 2022/10/18放送

なお、リストは1837年にピアノ編曲版の「田園」を手がけている。
オーケストラ曲をピアノで演奏するというよりも、いかにピアノだけでオーケストラに匹敵する音楽的な効果を表現できるかという狙いがあったと考えられている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベン交響曲第5番』 2023/1/17放送

交響曲 第7番 イ長調 作品92

1813年、ベートーヴェンが43歳になる年に初演されたドラマティックな交響曲
当時の聴衆のみならず、19世紀ロマン派の多くの作曲家に感銘を与えた。フランスのベルリオーズ、ドイツのメンデルスゾーンシューマンリスト、そしてワーグナーらがこの交響曲に魅了された。マーラーも十数回この交響曲を指揮している。

ベートーヴェン交響曲第5番ハ短調「運命」、そして交響曲第6番ヘ長調「田園」で音の動機(モチーフ)の緻密な展開を極めた。
そこで、次の交響曲第7番では何か新しい作曲技法が必要になると考え、美しい旋律に躍動感を与えるリズムに着目した。交響曲の4楽章にそれぞれくっきりとしたリズム同期を折り込み、音楽に破格の推進性をもたらすことを狙い、その狙いは完璧に成し遂げられた。

交響曲第7番は1813年春、彼のパトロンでピアニスト、作曲家でもあったルドルフ大公の邸宅で演奏された後、その年の12月に当時のウィーン大学の講堂で行われたチャリティーコンサートで公開初演された。フランスのナポレオン軍との戦争で負傷した兵士に救援物資や軍資金を送るためのチャリティーコンサートであった。
それまでに行われてきたベートーヴェン主催の新作コンサートとは異なり、当時のウィーン音楽会の総力を結集したコンサートで、腕に覚えのある音楽家が演奏に参加、またはコンサートに協力者として名を連ねている。

なお、ベートーヴェン交響曲第7番は、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団の歴史を彩ってきた作品でもある。

NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ▽ベートーベン交響曲第7番』 2022/9/18放送

交響曲 第8番 ヘ長調 作品93

しなやかな躍動感とユーモアのセンスがある作品。人気の交響曲第7番とほぼ同時期に作曲された。作品番号も第7番が作品92、第8番が作品93である。
1813年、ベートーヴェンが42歳の時にウィーンのルドルフ大公(ベートーヴェンの理解者・弟子・パトロンなどとして知られている)の邸宅でプライベートな形で初演された。
ベートーヴェン自身は同じヘ長調の交響曲第6番「田園」と区別するために交響曲第8番のことを「小さなヘ長調の交響曲」と呼んだ。しかし、この交響曲は決してこじんまりとはしておらず、創意工夫に満ち溢れた名曲である。

ストラヴィンスキーも精妙にして大胆な交響曲第8番をこよなく愛した。

NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ベートーベン交響曲第8番』 2023/1/8放送

ピアノ協奏曲

モーツァルトあたりから本格的に作られるようになったピアノ協奏曲というジャンルはベートーヴェンで頂点を極めた。

中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、236-237項。

ピアノ協奏曲 第1番 ハ長調 作品15

この曲はベートーヴェンがウィーンに出て間もなく作曲を始め、1795年に自身のピアノで初演した。その後さらに改訂を加えて1801年に出版している。
これから新しい時代を切り拓いていく若きベートーヴェンの意欲に満ちた革新的な音楽が聞こえてくる作品。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベンピアノ協奏曲第1番』 2023/1/26放送

ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 作品19

第2番だが、実はベートーベンが最初に手がけたピアノ協奏曲。このコンチェルトは一旦出来上がったのち4回も改訂されピアノ協奏曲第1番に続いて出版され、それで第2番となった。古典の様式美と芸術的な覇気を併せ持つベートーベン青年時代の意欲作。

NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ベートーベンピアノ協奏曲第2番』 2023/6/18放送

ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 作品37

この曲は「ハイリゲンシュタットの遺書」を経て生み出された傑作の1つである。ピアノ協奏曲でありながら交響曲のような充実したオーケストラパートを持っていて、独奏ピアノもオーケストラと対話をしながら共に音楽をダイナミックに発展させていくスケールの大きな作品になっている。ソリストの名人芸とオーケストラの伴奏という要素が強かったピアノ協奏曲に新たな光を当てたベートーヴェン渾身の一作。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ 特集 ベートーベンが聴きたくて(2)』 2023/4/18放送

ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 作品58

月光ソナタの完成から5年後、1806年に書き上げたピアノ協奏曲である。
この曲は長い間演奏の機会に恵まれなかったが、ベートーヴェンの死後10年程の1836年にメンデルスゾーンが演奏会で取り上げたことをきっかけに日の目を見ることとなった。
曲はまずピアノのソロが主題を提示し、それに続いてオーケストラの演奏が始まる。こうした手法は当時としては非常に斬新で、ベートーヴェンが音楽にそそぎ続けた革新性を象徴する部分と言える。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ベートーベン交響曲第3番「英雄」 他 – NHK-FM(東京)』 2022/08/01放送

ヴァイオリン協奏曲

ロマンス

ベートーヴェンは独奏ヴァイオリンとオーケストラのために2つのロマンスを作っている。どちらも甘美な旋律を持った曲である。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ブルックナー交響曲第4番「ロマンチック」』 2023/7/25放送

ロマンス 第2番 ヘ長調

第2番は1798年ベートーベン28歳の年に作られた。弦楽の伴奏に乗って独奏ヴァイオリンが優しく主題を歌い出す。その明るく可憐な旋律とヴァイオリンの華やかな技巧によって多くの人に愛されている作品。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ブルックナー交響曲第4番「ロマンチック」』 2023/7/25放送

協奏交響曲

三重協奏曲 ハ長調 作品56

1804年に完成したこの曲はバイオリン・チェロ・ピアノの3つの独奏楽器と管弦楽のために作曲された。事実上協奏交響曲でありながら協奏交響曲と名付けられなかった作品である。

協奏交響曲は18世紀後半に盛んに演奏された。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ブラームスピアノ三重奏曲第1番 他』 2022/07/26放送

ベートーヴェンが「交響曲第3番 変ホ長調 作品55『英雄』」「ピアノソナタ第21番 ハ長調 作品5『ヴァルトシュタイン』」「ヴァイオリンソナタ第9番 イ長調 作品47『クロイツェル』」といった傑作を次々と生み出し、充実した創作活動を展開していた頃に書き上げられた。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ブラームスピアノ三重奏曲第1番 他』 2022/07/26放送

管弦楽曲

序曲「レオノーレ」第3番 作品72b

1806年ベートーベンが36歳になる時に書かれた。音楽の中盤でトランペットによる華やかなファンファーレが鳴り響く。
1891年カーネギーホールのこけら落とし公演が行われた際、チャイコフスキーベルリオーズの作品と並んで演奏された。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ガーシュウィンコンチェルト・イン・F』 2024/3/27放送

序曲「献堂式」作品124

この作品はウィーンのヨーゼフシュタット劇場が改装されて再オープンした際のこけら落としのために1822年に作曲された。

NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック 円熟の響き(2)アンドラーシュ・シフ(指揮&ピアノ)』 2024/3/12放送

ベートーヴェンが純粋管弦楽のために作曲した最後の作品にあたる。

献堂式序曲 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/献堂式序曲

室内楽曲

弦楽四重奏曲

バイオリン2本とヴィオラ、チェロが奏でる弦楽四重奏のジャンルにおいてベートーヴェンの前にはハイドンモーツァルトが残した輝かしい功績があった。ベートーヴェンは偉大な先人たちから学び、20代後半から1827年に56歳で世を去る前の年まで16曲の弦楽四重奏曲を残した。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベンのバイオリン・ソナタ第1番』 2024/1/31放送

晩年は弦楽四重奏曲に特に力を入れていた。
亡くなるまでのおよそ2年間、5曲の弦楽四重奏曲を生み出し、他には小品がいくつか残されているのみである。
4丁の弦楽器で奏でる、シンプルでありながら奥深い世界にベートーヴェンは没頭した。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲 他』 2022/06/27放送

弦楽四重奏曲 第3番 ニ長調 作品18第3

1798年ベートーヴェンが28歳になる年から翌年にかけてウィーンで完成された作品。この頃に書かれた作品は作曲する喜びに満ちている。
4楽章で書かれていて伸びやかに歌う第1楽章で始まり、優雅な第2楽章、軽やかな第3楽章が続く。最終楽章は美しく生き生きとしている。
ベートーヴェンは20代前半で音楽の都ウィーンへ出てきた。 熱心に学び作曲に取り組む日々。その努力にこたえるように高まっていく名声。当時のベートーヴェンの意欲と希望がこの作品からは感じられる。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベンのバイオリン・ソナタ第1番』 2024/1/31放送

ラズモフスキー(弦楽四重奏曲 第7-9番)

ベートーベンは36歳になる1806年ロシアの外交官ラズモフスキー伯爵の依頼を受けて3曲の弦楽四重奏曲を作曲した(第7-9番)。それらはそれまでの弦楽四重奏曲の規模や内容を大きく変えるものであった。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベン交響曲第5番』 2024/2/21放送。NHK-FM(東京) 『ヴォーチェ弦楽四重奏団 演奏会 - ベストオブクラシック』 2024/9/18放送

弦楽四重奏曲 第7番 ヘ長調 作品59-1「ラズモフスキー第1番」

弦楽四重奏曲 第8番 ホ短調 作品59-2「ラズモフスキー第2番」

弦楽四重奏曲 第10番 変ホ長調 作品74「ハープ」

1809年に完成。この年はナポレオン率いるフランス軍がウィーンに進軍してきた。ベ ートーベンは困窮し、ウィーンを離れることも考えるが、ウィーンの貴族たちは年金を払うことを約束し、ベートーベンを引き留めた。弦楽四重奏曲第10番はその貴族の1人ロプコヴィッツ公爵に献呈された。
この作品について当時の新聞では暗い精神で書かれ、とりとめない思いつきばかりで心地よい旋律がないなどと書き立てた。しかし出版するとすぐに再販されるほど売れ行きは好調で、ベートーベンの後期への橋渡しとなる作品になった。
全部で4楽章。第1楽章には演奏者が弦をつまびくピッツィカートを用いていることから「ハープ」という通称でも知られている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベン交響曲第5番』 2024/2/21放送

ガリツィン・セット(弦楽四重奏曲 第12・13・15番)

ベートーヴェンは、ロシアの貴族、ニコライ・ガリツィン侯爵から弦楽四重奏曲作曲の依頼を受けた。依頼を受けた翌年に承諾の返答をし、この後侯爵のために3つの弦楽四重奏曲(第12番・第15番・第13番)の作曲に取り組んでいく。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ベートーベン弦楽四重奏曲作品132 他』 2022/9/26放送。

弦楽四重奏曲 第12番 変ホ長調 作品127
まず1825年10月に「弦楽四重奏曲 第12番 変ホ長調 作品127」を書き上げた。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ベートーベン弦楽四重奏曲作品132 他』 2022/9/26放送。弦楽四重奏曲第12番 (ベートーヴェン) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/弦楽四重奏曲第12番 (ベートーヴェン)

弦楽四重奏曲 第15番 イ短調 作品132
弦楽四重奏曲第 15番 イ短調 作品132」は1824年より第1楽章と終楽章のスケッチが進められ、1825年から本格的に作曲を始めた。
第2楽章まで書き進めたものの、4月の半ばごろ持病を悪化させて作曲の中断を余儀なくされた。
しかし、幸いなことに5月頃には回復の兆しを見せ、6月頃には再び作曲を始めることができた。
回復後に書き始めた第3楽章はコラール風のメロディーによる美しい楽章で、この楽章にベートーヴェンは「病癒えし者の神への聖なる感謝の歌。リディア旋法による」と記している。

全5楽章で、大変規模の大きい作品である。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ベートーベン弦楽四重奏曲作品132 他』 2022/9/26放送。弦楽四重奏曲第15番 (ベートーヴェン) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/弦楽四重奏曲第15番 (ベートーヴェン)。弦楽四重奏曲第12番 (ベートーヴェン) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/弦楽四重奏曲第12番 (ベートーヴェン)

弦楽四重奏曲 第13番 変ロ長調 作品133「大フーガ

ベートーヴェン晩年の弦楽四重奏のための作品の1つ。

この曲は「弦楽四重奏曲 変ロ長調 作品130」の最後の楽章として作曲された。ただ、あまりにも長大で響きも斬新すぎたため、初演で批判される。ベートーヴェンは悲嘆に暮れたが気を取り直し、フィナーレを新たに書き下ろした。そして初めに書いた長大な最終楽章は「大フーガ」として独立した作品となった。前代未聞の「大フーガ」も時代の変化とともに評価を上げ、今ではベートーヴェンの代表作の1つに数えられている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲 他』 2023/6/27放送

ベートーヴェンの時代になると対位法は古めかしい作曲技法と考えられるようになっていたが、ベートーヴェン対位法をしっかり継承し、この作品で充実したフーガを作曲した。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベンのピアノ・ソナタ第31番』 2023/8/24放送

ピアノ三重奏曲

ベートーヴェンの作曲家としてのキャリアの中でピアノ三重奏曲は重要な位置を占めていた。ピアノ、ヴァイオリン、チェロによるピアノ三重奏曲を20代前半の頃から作曲している。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽シューベルトの「ピアノ三重奏曲 第1番」他』 2022/08/24放送。NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ベートーベンピアノ三重奏曲「大公」』 2023/9/10放送

番号付きのピアノ三重奏曲を7曲作曲した。第7番「大公」が有名である。

ピアノ三重奏曲 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ピアノ三重奏曲

また、管楽器と弦楽器をまじえた七重奏曲、続いて交響曲第2番を自らピアノ三重奏曲に編曲している。

NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ベートーベンピアノ三重奏曲「大公」』 2023/9/10放送

ピアノ三重奏曲 第1-3番 作品1

ピアノ三重奏曲は人気ジャンルで、ウィーンで脚光を浴び始めていたベートーヴェンピアノ三重奏曲を作ったとき(今の「ピアノ三重奏曲 第1-3番 作品1」)、ウィーンの貴族たちはあたかも競うかのごとくその楽譜を購入したという。

NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ベートーベンピアノ三重奏曲「大公」』 2023/9/10放送

ピアノ三重奏曲 第4番 変ロ長調 作品11「街の歌」

この作品は当時人気を博したクラリネット奏者ヨーゼフ・ベーアの依頼により1797年に書かれた。
第3楽章の主題には18世紀末から19世紀初頭にかけて活躍した作曲家ヨーゼフ・ヴァイグルの歌劇「海賊」のアリアが用いられている。

NHK-FM(東京) 『ダニエル・オッテンザマー クラリネット・トリオ・アンソロジー - ベストオブクラシック』 2023/10/18放送

ピアノ三重奏曲 第5番「幽霊」、6番 作品70

1808年に2曲のピアノ三重奏曲を書き、これは作品70として出版された。
1曲目は第2楽章の摩訶不思議な雰囲気から「幽霊」と呼ばれることもある。

NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ベートーベンピアノ三重奏曲「大公」』 2023/9/10放送

ピアノ三重奏曲 第5番 ニ長調 作品70 第1「幽霊」

この作品は38歳になる1808年に作曲された。
愛称となっている「幽霊」というタイトルはベートーベンがつけたものではない。一説にはベートーベンの弟子だったツェルニーがこの作品と幽霊のイメージを結びつけたと言われている。第2楽章のニ短調のラルゴについて、ツェルニーは冥界から幽霊が現れるように恐ろしい音楽だと言っている。
しかし、その前後に置かれた第1楽章と第3楽章は明るくエネルギーに満ちた音楽。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽シューベルトの「ピアノ三重奏曲 第1番」他』 2022/08/24放送

ピアノ三重奏曲 第7番 変ロ長調 作品97「大公」

1811年に「大公」のニックネームで知られるこのピアノ三重奏曲が作られ、1814年に公の場で披露された。全4楽章。
ベートーヴェンの最大のパトロンで、かつ作曲と鍵盤の弟子でもあったルドルフ大公に捧げたことからこのニックネームが付いた。

NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ベートーベンピアノ三重奏曲「大公」』 2023/9/10放送

ピアノ・ソナタ

若い頃、ピアニストとしても名を馳せていたベートーヴェンは32曲のピアノ・ソナタを残している。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ボッケリーニ弦楽五重奏曲ホ長調』 2023/2/22放送

ピアノ・ソナタ 第1-3番 作品2

ベートーヴェンが生まれ故郷のドイツの町ボンからハイドンのレッスンを受けるためにウィーンに出て活動を始めて3年ほど経った1795年20代の半ばに出版された3つのピアノ・ソナタ。
ベートーヴェンはこの作品2のソナタ集を先生であるハイドンに献呈した。
夢と希望にあふれた若きベートーベンのみずみずしいエネルギーが感じられる作品である。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ メンデルスゾーン交響曲第4番「イタリア」 他』 2022/11/24放送。NHK-FM(東京) 『クラシックの庭 ハイドン交響曲第93番』 2024/4/18放送

ピアノ・ソナタ 第6番 ヘ長調 作品10第2

1798年ベートーベンが28歳になる年から翌年にかけてウィーンで完成された作品。この頃に書かれた作品は作曲する喜びに満ちている。
3楽章で構成されていてはつらつとした印象の第1楽章、美しくもどこか陰りを感じさせる第2楽章に続いて最終楽章は躍動感に満ちたエネルギッシュな音楽。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベンのバイオリン・ソナタ第1番』 2024/1/31放送

ピアノ・ソナタ 第7番 ニ長調 作品10第3

18世紀の終わり、ベートーヴェンがウィーンで名声を高めていった頃に作曲されたと考えられている。4楽章からなり、深刻な雰囲気を持つ第2楽章は特に有名である。この作品について、ベートーヴェンは「悲しみに沈む人の心の状態を光と影のニュアンスで描こうとした」と弟子に語っている。

NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック ヴェルビエ音楽祭2022(3)』 2022/10/19放送

ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 作品13「悲愴」

ベートーヴェン若き日の肖像ともいうべきピアノソナタである。全3楽章。

NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ベートーベンのピアノ・ソナタ「告別」』 2022/10/16放送

本作はピアノソナタ第14番(月光)、第23番(熱情)と合わせてベートーヴェンの3大ピアノソナタと呼ばれることもある。

ピアノソナタ第8番 (ベートーヴェン) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ピアノソナタ第8番 (ベートーヴェン)

ピアノ・ソナタ 第9-10番 作品14

ベートーベンは29歳になる1799年に2曲のピアノソナタを作曲し、作品14として出版した。
この作品は宮廷劇場の支配人だったブラウン男爵の妻ヨゼフィーネに献呈された。ブラウン男爵は後にアン・デア・ウィーン劇場の運営も行うようになるとベートーベンに歌劇「フィデリオ」の作曲を依頼するほどその才能を評価していた。

NHK-FM(東京) 『シューマンの「ばらの巡礼」 - クラシックの庭 - NHK』 2024/6/12放送

ピアノ・ソナタ 第10番 ト長調 作品14-2

ピアノソナタ第10番は3楽章からなる。全体に明るくユーモアに満ちた親しみやすい作品。

NHK-FM(東京) 『シューマンの「ばらの巡礼」 - クラシックの庭 - NHK』 2024/6/12放送

ピアノ・ソナタ 第12番 変イ長調 作品26「葬送」

この作品は1800年から翌年にかけて作曲されたものと考えられている。第1楽章には変奏曲、第2楽章には短いスケルツォ、第3楽章には葬送行進曲を置き、そしてロンド形式で書かれた第4楽章から構成され、ピアノソナタではありながらソナタ形式の楽章を1つも含まないという大胆な発想で作られている。

NHK-FM(東京) 『クラシックの庭 シューベルト交響曲第8番』 2024/5/9放送

ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 作品27-2「月光」

ベートーヴェンは30歳になった頃、1800年から翌年にかけて2曲のピアノソナタを作曲した。これらは「幻想曲風ソナタ 作品27」として1802年に出版された。そのうちの2曲目が「月光ソナタ」の名で親しまれているピアノソナタ第14番である。
なお、「月光」という愛称は、ベートーヴェンの死後に付けられたものである。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ベートーベン交響曲第3番「英雄」 他 – NHK-FM(東京)』 2022/08/01放送

ピアノ・ソナタ 第15番 ニ長調 作品28「田園」

全4楽章。ベートーヴェンが31歳になる1801年に作曲された。
ベートーヴェンが亡くなったのちに出版された楽譜には、その穏やかな雰囲気から「田園」というタイトルが付けられた。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽シューベルトの「ピアノ三重奏曲 第1番」他』 2022/08/24放送

ピアノ・ソナタ 第17番 ニ短調 作品31第2「テンペスト」

この作品はシェイクスピアの戯曲にちなんで「テンペスト」という愛称で呼ばれている。
これはベートーベンの弟子のアントン・シンドラーがこの曲について訪ねた時、シェイクスピアのテンペストを読みなさいとベートーベンに言われたというエピソードに由来しする。このエピソードはかなり怪しいという説も有力だが、不穏な空気を漂わせる第1楽章をはじめ3つのどの楽章もテンペストという名にふさわしいベートーベン独自の叙情にあふれたドラマチックな作品。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベンピアノ協奏曲第2番』 2023/10/5放送

ピアノ・ソナタ 18番 変ホ長調 作品31第3「狩」

ベートーヴェンが31歳になる1801年から翌年にかけて作曲された。
この頃、ベートーヴェンは耳が次第に悪くなり、1802年には有名な「ハイリゲンシュタットの遺書」を書いている。しかし、創作活動はそうした苦難に立ち向かうように活発で独創性を増していく。
ピアノ・ソナタ第18番は最初、ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」とセットで出版された。しかし、その出版社がほかのソナタで勝手に改編を施していたことにベートーヴェンは激怒し、翌年、別の出版社からピアノ・ソナタ第16番、第17番、第18番の3曲をまとめて改めて出版した。その際には表紙にわざわざ「正しく直した版」と書いている。
ピアノ・ソナタ第18番は4楽章からなるが、その第4楽章に狩の角笛を思わせる旋律があることから「狩」という通称で呼ばれることもある。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ 特集 ベートーベンが聴きたくて(3)』 2023/4/19放送

ピアノ・ソナタ 第21番 ハ長調 作品53「ワルトシュタイン」

1803年33歳の年に書かれた作品。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ボッケリーニ弦楽五重奏曲ホ長調』 2023/2/22放送

ベートーヴェンは生涯の大半を宮廷に仕えることなく、ピアニストとして演奏会やレッスンを行ない、また作曲家として楽譜を出版することで生計を立てていたが、それだけでなく何人かの貴族から援助も受けている。ベートーヴェンに最初に援助を行った1人がボンの貴族ワルトシュタイン伯爵であった。ベートーヴェンは感謝を込めて1805年ワルトシュタインに新作のピアノ・ソナタを献呈したが、それがピアノ・ソナタ第21番である。そのため「ワルトシュタイン」の通称で知られている。
幅広い音域を生かした規模の大きなソナタで、ベートーヴェンの中期を代表する作品。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ 特集 ベートーベンが聴きたくて(3)』 2023/4/19放送

なお、このソナタを書いた年にベートーヴェンはフランスの楽器メーカーから新しいピアノを贈られている。この最新型のピアノに魅せられたベートーヴェンは輝かしい響きとドラマチックな表現に満ちたピアノ・ソナタを書き上げた。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ボッケリーニ弦楽五重奏曲ホ長調』 2023/2/22放送

ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 作品57「熱情」

全3楽章。1805年に完成されたと考えられている。「熱情」という通称はハンブルクの出版社によって後で付けられた。

本作は第21番「ヴァルトシュタイン」、第26番「告別」と並んでベートーヴェンの中期ピアノソナタを代表する作品であり、第8番「悲愴」、第14番「月光」と合わせてベートーヴェンの3大ピアノソナタとされることもある。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ』 2022/5/17放送。NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック ヴェルビエ音楽祭2022(3)』 2022/10/19放送

ピアノ・ソナタ 第24番 嬰ヘ長調 作品78「テレーゼ」

全2楽章。ピアノ・ソナタ「告別」とほぼ同じ時期に作曲された。
ベートーヴェンは古典派では珍しいこの嬰ヘ長調によるソナタでモチーフ(動機)の展開から離れ、カンタービレ様式を極めた。 歌心を大切にしたわけである。
曲は弟子の1人テレーゼ・フォン・ブルンスヴィックという伯爵令嬢に献呈されたことから「テレーゼ」と呼ばれることもある。

NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ベートーベンのピアノ・ソナタ「告別」』 2022/10/16放送

ピアノ・ソナタ 第25番 ト長調 作品79「ソナネチ」

全3楽章。ソナタ第26番「告別」とほぼ同時期の作品。この曲はベートーヴェンが「ソナチネ」と呼んだ。ベートーヴェンにはいくつかソナチネとして親しまれているピアノソナタがあるが、彼自らソナチネ(愛らしいソナタ・優しいソナタ)と命名したのはこの曲だけである。

NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ベートーベンのピアノ・ソナタ「告別」』 2022/10/16放送

ピアノ・ソナタ 第26番 変ホ長調 作品81a「告別」

ベートーヴェンが38歳から39歳の年に書かれ、ルドルフ大公に捧げられた曲である。
1809年ナポレオン軍の占領下になったウィーンから逃れて行くルドルフ大公へ友情と敬愛を込めて作曲された。
第1楽章「告別」、第2楽章「不在」で、翌年1810年にルドルフ大公がウィーンに戻り、第3楽章「再会」が書かれ、作品が完成した。なお、タイトルはベートーヴェン自身が付けたものである。

NHK-FM(東京) 『ククラシックカフェ ▽ハイドンのチェロ協奏曲第1番 他』 2022/8/30放送

ピアノ・ソナタ 第29番 変ロ長調 作品106「ハンマークラヴィーア」

「ハンマークラヴィーア」というタイトルは、出版の際にベートーヴェンが「ハンマークラヴィーアのための大ソナタ」とドイツ語の表示をつけたことからきている。ハンマークラヴィーアはピアノフォルテを指すドイツ語名であり、ほかの曲にも同様の表示をしたもののこのソナタのスケールがあまりにも大きかったからか、このソナタだけがハンマークラヴィーアと呼ばれるようになった。
規模の大きさだけでなく、ベートーヴェンのソナタの中でも演奏技巧や音楽的内容の面でもとりわけ難しいとされる作品である。作曲家自身、「このソナタはピアニスト大いに悩ますでしょう。50年も経てば聞く人も出てくるでしょうが」と述べている。今でこそピアノは7オクターブ以上の音域を持つが、急速な発展途上にあった当時、ベートーヴェンが所有していた2つのピアノは6オクターブの音域しかなかった。そして、彼はそれら2つのピアノの音域を最大限用いて、このハンマークラヴィーアソナタを作曲した。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベンのピアノソナタ第29番「ハンマークラヴィーア」』 2023/1/24放送

また、ベートーヴェンの時代になると対位法は古めかしい作曲技法と考えられるようになっていたが、ベートーヴェン対位法をしっかり継承し、この作品で充実したフーガを作曲した。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベンのピアノ・ソナタ第31番』 2023/8/24放送

ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 作品111

ベートーベンにとって最後のピアノソナタ。1822年ベートーベンが52歳の年に作曲された。
作品は2つの楽章に分かれ、緊張感漂う第1楽章と変奏曲形式の第2楽章で構成されている。変奏曲形式とは、はじめ主題を演奏し、その後主題を様々な形に変形させながら音楽が展開する形式。主題をどのように変形させていくのか、それは作曲家の腕の見せ所でもある。
ベートーベンは若い頃から変奏曲に熱心に取り組んできた。初めの頃は先人たちの音楽を元にした変奏表現であったが、徐々にオリジナリティーが増していき、この作品の第2楽章では未知の音楽を追求し新たな世界を切り開こうとするベートーベンの姿が感じられる。未来を見つめながら限りない高みを目指していくベートーベンのピアノ音楽の集大成とも言うべき作品。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベンのチェロ・ソナタ第5番』 2024/3/4放送

バイオリン・ソナタ

バイオリン2本とビオラ、チェロが奏でる弦楽四重奏のジャンルにおいてベートーベンの前にはハイドンモーツァルトが残した輝かしい功績があった。ベートーベンは偉大な先人たちから学び、20代後半から1827年に56歳で世を去る前の年まで16曲の弦楽四重奏曲を残した。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベンのバイオリン・ソナタ第1番』 2024/1/31放送

バイオリン・ソナタ 第1-3番 作品12

鍵盤のヴィルトゥオーソ、華やかな技と音楽性を併せ持つ名手として音楽の都ウィーンで喝采を博していたベートーヴェンは1797年から1798年、20代後半の時に第1番、第2番、第3番の3曲のバイオリン・ソナタを作曲した。そして、それらは作品12のソナタとして、1799年にウィーンで出版された。古典派の時代、器楽作品は3曲セットでの出版が基本であった。作品12の3曲のバイオリン・ソナタは儀礼的な献呈ではあったが、20歳年上のウィーンの宮廷楽長サリエリに献呈されている。ちなみにベートーヴェンは一連のソナタを書いたのち、サリエリから曲の作曲法を習った。

NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ベートーベンピアノ協奏曲第2番』 2023/6/18放送

バイオリン・ソナタ 第1番 ニ長調 作品12第1

1798年、ベートーベンが28歳になる年から翌年にかけてウィーンで完成された作品。
3楽章で構成されていて颯爽と始まる第1楽章、ピアノに重きが置かれた優雅な第2楽章を経て、軽やかな第3楽章で終わる。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベンのバイオリン・ソナタ第1番』 2024/1/31放送

バイオリン・ソナタ 第9番 イ長調 作品47「クロイツェル・ソナタ」

この作品は1800年から4年にかけて作曲された。
それまでバイオリン・ソナタとは言いながら、ベートーヴェンはピアノを主役として扱い、バイオリンは脇役であった。しかし、バイオリン・ソナタ第9番はピアノとバイオリンを対等に扱うだけでなく、出版した楽譜の表紙に「協奏曲に極めて近いスタイルで書かれたソナタ」と書いている。その言葉のとおりバイオリンもピアノも極めて難易度の高い技巧的な作品である。
あまりにも斬新なこのソナタに当時の聴衆はついていくことができず、奇妙で芸術のテロリズムだとまで言われてしまう。
この初演を演奏したのはブリッジタワーというバイオリニストで、最初は彼に献呈されるはずであったが、ベートーヴェンの友人であった女性をめぐって喧嘩をし、怒ったベートーヴェンはブリッジタワーではなく、フランスのヴァイオリニスト、クロイツェルに献呈した。そのため、現在は「クロイツェル・ソナタ」の通称で親しまれている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ 特集 ベートーベンが聴きたくて(3)』 2023/4/19放送

ベートーヴェンの作曲したバイオリン・ソナタの中では、第5番「春」と並んで知名度が高い。規模が大きく、バイオリン・ソナタの最高傑作であるとされる。

ヴァイオリンソナタ第9番 (ベートーヴェン) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ヴァイオリンソナタ第9番 (ベートーヴェン)

チェロ・ソナタ

ベートーベンは若い頃からチェロの名手たちとの出会いに恵まれていた。
彼らに触発され、生涯で5曲のチェロ・ソナタを残した。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベンのチェロ・ソナタ第5番』 2024/3/4放送

第1番と第2番は20代、第3番は30代後半、そして、第4番と第5番は40代半ばに作曲した。すべての創作時期にわたってチェロ・ソナタを書いた。
チェロという楽器がまだ通奏低音としての役割から抜け出しきれていなかった頃、ベートーヴェンはいち早くこの楽器の魅力を見出して、その機能を最大限に生かし、豊かな表現力を持つ独奏楽器に押し上げた。

NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック ヴェルビエ音楽祭2022(2)』 2022/10/18放送

チェロ・ソナタ 第1番 ヘ長調 作品5第1

第1番は、1796年、ベートーベン26歳の年の作品。2楽章構成。
初演はチェロの名手でもあったプロイセン国王フリードリッヒ・ヴィルヘルム2世の前で行われ、国王に捧げられた。初演ではベートーヴェン自身がピアノパートを担当している。

NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック ヴェルビエ音楽祭2022(2)』 2022/10/18放送

チェロ・ソナタ 第3番 イ長調 作品69

1808年、ベートーベン38歳の年の作品。作曲されたのは、いわゆる「傑作の森」と呼ばれる時期で、同じ頃に交響曲第5番運命や第6番田園を書き上げている。

NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック ヴェルビエ音楽祭2022(2)』 2022/10/18放送

チェロ・ソナタ 第4番 ハ長調 作品102第1

ベートーヴェンは45歳になる年、1815年に第4番と第5番の2つのチェロ・ソナタを作曲した。この時期はベートーヴェンの作風が中期から後期に移り変わろうとする頃で、これまでの様式を抜け出し、幻想的な傾向が音楽に見られ始める。「ピアノとチェロのための自由なソナタ」と記された第4番は全体がまるで1つの幻想曲のようであり、深く内省的な音楽はベートーヴェンの晩年の作風を伺わせる。

NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック ヴェルビエ音楽祭2022(2)』 2022/10/18放送

チェロ・ソナタ 第5番 ニ長調 作品102第2

チェロ・ソナタの最後となる第5番はベートーベンが45歳を迎えた1815年の作品。
これは親しくしていた名チェロ奏者ヨーゼフ・リンケとベートーベンの良き理解者で相談相手でもあったピアノの名手エルデーディ伯爵夫人のために作曲された。
この頃、ベートーベンは若い頃に学んだフーガの作曲技法に再び注目していて後期の様々な作品にフーガを取り入れている。この作品の第3楽章でもフーガが登場し、チェロとピアノが絡み合いながら巧みに展開していく。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベンのチェロ・ソナタ第5番』 2024/3/4放送

その他
ホルン・ソナタ ヘ長調 作品17

この曲はベートーベンが30歳になる年1800年に当時の名ホルン奏者ジョヴァンニ・プントのために作曲した作品。同年ウィーンでプントのホルン、そしてベートーベンのピアノで初演された。

NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック ラドヴァン・ヴラトコヴィチ ホルン・リサイタル』 2022/10/12放送

なお、「ベートーヴェンは、ホルンをそれまでの“信号ラッパ”のような役割からメロディの楽器に昇格させた作曲家」と考えられる。

ホルン首席奏者 高橋臣宜が語る、ベートーヴェン交響曲第3番『英雄』の聴きどころ | 東京フィルハーモニー交響楽団 Tokyo Philharmonic Orchestra 公式サイト https://www.tpo.or.jp/information/detail-20170726-01.php

序曲「コリオラン」作品62

序曲「コリオラン」は古代ローマの英雄を主人公にした同名の戯曲に触発されて生まれたと言われている。

なお、この作品はフランスの文豪ロマン・ロランの長編小説ジャン・クリストフに登場する。主人公ジャンはベートーヴェンをモデルにしたと言われている。1904年からおよそ8年間にわたって発表されたこの作品は世界的に評価され、ロランにノーベル文学賞をもたらした。ジャンが勇ましく始まるベートーヴェンのこの曲に呼吸が苦しくなるほど感動し、圧倒的な音楽の力を感じる場面が描かれている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ マーラー交響曲第5番』 2023/8/2放送

ピアノ曲

バガテル

バガテルとはフランス語で取るに足らないものという意味であるが、ピアノ曲などの小品のタイトルにつけられ、アマチュアの演奏家に好まれた。ベートーベンは作品33、作品119、作品126というバガテルを集めた曲集を出版している。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベン交響曲第5番』 2024/2/21放送

7つのバガテル 作品33

作品33は1803年に出版された。しかし、それぞれが続けて作曲されたわけではなく、たとえば、第1番の自筆譜には1782年という年号が書かれてる。もしそうなら、ベートーベンが12歳の時に作曲したことになるが、その時のままなのか、それとも大幅に書き直しているのかはわかっていない。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベン交響曲第5番』 2024/2/21放送

変奏曲

変奏はベートーベンのライフワークであった。

NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ベートーベンのチェロ・ソナタ第3番』 2023/4/16放送

若い頃から変奏曲に熱心に取り組んできた。初めの頃は先人たちの音楽を元にした変奏表現であったが、徐々にオリジナリティーが増していき、ピアノ・ソナタ第32番第2楽章では未知の音楽を追求し新たな世界を切り開こうとするベートーベンの姿が感じられる。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベンのチェロ・ソナタ第5番』 2024/3/4放送

モーツァルトの曲をもとにした変奏曲
歌劇「フィガロの結婚」の「もし踊りをなさりたければ」の主題による12の変奏曲 ヘ長調 WoO40

当時、世界的巨匠であったハイドンがボンに立ち寄った際にベートーヴェンの作品を聞き、留学を勧めたことがきっかけで、ベートーヴェンは22歳の年1792年に音楽の都ウィーンへと旅立った。大きな期待に胸を膨らませたベートーヴェンがウィーンで最初に完成させて出版した作品がこの曲である。ヴァイオリンとピアノのための作品で、モーツァルトの歌劇「フィガロの結婚」のアリアを主題にしている。
当時のウィーンはモーツァルトが世を去ってから1年あまりで、天才作曲家がまだ伝説ではなく、実在の人物として記憶に残っている時代であった。ベートーヴェンの新たな一歩はモーツァルトの残した偉大な作品の精神を受け継ぐところから始まった。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ 特集 ベートーベンが聴きたくて(2)』 2023/4/18放送

魔笛

「魔笛」はモーツァルトが亡くなる年1791年に完成したオペラで、モーツァルトの死後もヨーロッパ各地で人気を博した。モーツァルトが亡くなった時はまだ若きベートーヴェンも「魔笛」に魅了され、その後アリアを用いて2つの変奏曲を残している。どちらもチェロとピアノのために書かれた作品である。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ バルトークビオラ協奏曲』 2023/5/10放送

歌劇「魔笛」の「恋を知る男たちは」の主題による7つの変奏曲 変ホ長調 WoO46

1801年頃に書いた変奏曲。

NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ベートーベンのチェロ・ソナタ第3番』 2023/4/16放送

歌劇「魔笛」の「恋人か女房があればいい」の主題による12の変奏曲 ト長調

サリエリの歌劇「ファルスタッフ」の「まさにその通り」の主題による10の変奏曲 変ロ長調

サリエリに対するベートーヴェンの感謝と尊敬の念が表れた作品。
1799年、サリエリが作曲したオペラ「ファルスタッフ」の初演を聞いたベートーヴェンはその後、数日のうちにこのオペラの中のテーマを用いて変奏曲を書き上げた。
軽やかな主題が調を変えたり舞曲風になったりと形を変えて現れる。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽モーツァルト交響曲第41番「ジュピター」 他』 2022/9/6放送

イギリスの歌による変奏曲

ベートーヴェンは1803年にイギリスの歌による変奏曲を2つ作曲した。

「ゴッド・セイヴ・ザ・キング」 による7つの変奏曲 WoO.78/7 Variationen über "God save the King" WoO.78 - ベートーヴェン - ピティナ・ピアノ曲事典 https://enc.piano.or.jp/musics/1054

イギリス国歌による7つの変奏曲 WoO78

この曲が書かれた当時、イギリスはドイツやオーストリア出身の作曲たちと交流を深めていた。ハイドンヘンデルと並んでベートーヴェンもその1人で、たびたび依頼を受けて作曲を行った。
ベートーヴェンと付き合いのあったイギリス人にジョージ・トムソンがいる。トムソンは母国の民謡を集めて著名な作曲家に編曲を依頼し、出版していた。ジョージ・トムソンとの交流がきっかけとなって、ベートーヴェンはイギリスに古くから伝わる作品を数多く編曲することになった。
1803年に作曲されたこの変奏曲はイギリスの国歌「ゴッド・セイヴ・ザ・キング(神よ、王を助けたまえ)」を下敷きにしていて、主題の後、七つのバリエーションが演奏される。ベートーヴェンの高い作曲技術と豊かな発想力によって、それぞれ全く異なる味わいを楽しむことができる作品。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ モシコフスキピアノ協奏曲』 2023/1/4放送

「ルール・ブリタニア」の主題による5つの変奏曲 ニ長調 WoO79

このイギリスの「第二国歌」とも称される愛国歌「女神ブルタニアの統治の基に」の主題による変奏曲はイギリスの楽譜出版社の依頼で作曲された。

バレエ音楽

ベートーヴェンは生涯で2作のバレエ音楽を残している。

プロメテウスの創造物 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/プロメテウスの創造物

プロメテウスの創造物 作品43

この作品はベートーヴェンが30歳の時に完成させたバレエ音楽。
ギリシャ神話に登場する神プロメテウスを題材とした物語で、当時天才バレエダンサーと称されたサルヴァトーレ・ヴィガーノが台本と振付を担当し、出演も務めた。
今日では序曲のみが演奏されることが多いが、初演当初は人気を博し、何度も上演されたという。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベンの「静かな海と楽しい航海」』 2024/1/8放送



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