モーツァルト―作品
モーツァルトの作品
作品目録番号
ケッヘル番号
モーツァルトの作品は、ケッヘルによるケッヘル番号が使用され、「K」と表記される。
オペラ
モーツァルトのオペラでは「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」「魔笛」などが現在も世界中のオペラハウスのレパートリーになっている。
中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、80項。
フィガロの結婚
1786年にウィーンのブルク劇場で初演された。
フランスの劇作家ボーマルシェの喜劇をもとにイタリア人台本作家がイタリア語で書いた。
伯爵の召使いフィガロとその婚約者スザンナ2人の結婚式当日に繰り広げられる賑やかな騒動を描いている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ブラームスの「ピアノ協奏曲 第2番」他』 2022/9/12放送
魔笛
この作品はモーツァルトが亡くなる年1791年に作曲されたオペラで、モーツァルトの死後もヨーロッパ各地で人気を博した。
モーツァルトがウィーンで苦闘しながら過ごしている中、かねてより交流のあった劇場興行師シカネーダーからドイツ語によるオペラ作曲を依頼された。
少しでもお金になる仕事であれば、すぐにでも飛びつきたいほど生活に困窮していた上、母国語で独創的なオペラの作曲が出来るという願ってもないチャンスでモーツァルトは二つ返事で承諾したと言われている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽モーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」 他』 2022/9/6放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ バルトークのビオラ協奏曲』 2023/5/10放送
交響曲
交響曲は41番まであり、特に最後の3曲は有名である。
中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、80項。
交響曲 第25番 ト短調 K183
全4楽章。1773年17歳の年に作曲。
この交響曲が書かれた年、モーツァルトはイタリア、そしてウィーンを訪れている。イタリアもウィーンもすでに3度目の訪問であった。
1760年代の後半から1770年代の前半にかけて、ウィーンでは短調の交響曲への関心が高まっていた。後に文学の世界から広まる疾風怒涛の美学が文学よりも先にウィーンの音楽家たちに共有されていた。ハイドンなど1730年代生まれの作曲家が短調の交響曲、いわゆる疾風怒濤の美学に基づく作品を書いている。例えば、ハイドンの交響曲第39番、第44番などを上げることができる。
短調で交響曲を書くというウィーン古典派の新たな動きがモーツァルトの交響曲第25番に伝わったとみられている。
NHK-FM(東京) 『モーツァルトの交響曲第25番 - 音楽の泉』 2024/9/29放送
交響曲 第31番 ニ長調 K297 「パリ」
いわゆる「マンハイム=パリ旅行」中の1778年21歳の時、パリの演奏団体コンセール・スピリチュエルの代表からの依頼によって作曲された。全3楽章。
マンハイム、パリのオーケストラは、1770年代ヨーロッパ随一の実力を持っており、また、これらの町には優秀な演奏家や裕福な音楽愛好家がいた。
モーツァルトはこうしたパリの腕自慢のオーケストラの個性や派手な音楽を好んだパリのお客の趣味を考えて、当時は新しい楽器だったクラリネットを含むこの交響曲を作曲した。
NHK-FM(東京) 『音楽の泉 モーツァルトの交響曲第35番「ハフナー」』 2022/11/13放送
交響曲 第32番 ト長調 K318「イタリア序曲」
故郷ザルツブルクで作曲した。交響曲であるが、早い、ゆっくり、早いという三部からなるイタリア風の序曲で、演奏時間も8分ほど。創作の背景や初演についてはわかっていない。
NHK-FM(東京) 『ベートーベンのピアノ協奏曲第1番 - 音楽の泉』 2024/9/1放送
交響曲では珍しい単一楽章構成で、通称「序曲」と呼ばれている(この時代は、まだ序曲と交響曲の厳密な区別がなされていなかった)。
交響曲第32番 (モーツァルト) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/交響曲第32番 (モーツァルト)
交響曲 第33番 変ロ長調 K319
20世紀の名指揮者たちが愛してやまなかった交響曲。
1779年、モーツァルトが23歳の時に故郷ザルツブルクで3楽章からなる交響曲として書かれ、その後ウィーンでメヌエットの楽章が追加されて4楽章の交響曲になった。楽器編成はオーボエにファゴットに、ホルンに、そして弦楽である。
第1楽章第2楽章第3楽章に4つの音符による印象的な動機、いわゆるジュピターモチーフが織り込まれている。
NHK-FM(東京) 『音楽の泉 モーツァルトのピアノ・ソナタ第13番変ロ長調』 2023/4/2放送
交響曲 第35番 ニ長調 K385 「ハフナー」
交響曲第35番は、1783年、モーツァルトの故郷ザルツブルクの裕福な市民ハフナー家のお祝いのために書いたセレナード第7番に、オリジナルにはなかったフルートとクラリネットを追加し、4つの楽章からなる交響曲として編曲された作品である。
1783年3月に皇帝も臨席したウィーンの宮廷ブルク劇場で初演された。
NHK-FM(東京) 『音楽の泉 モーツァルトの交響曲第35番「ハフナー」』 2022/11/13放送
交響曲 第36番 ハ長調 K425 「リンツ」
ハ長調の晴れやかな交響曲でリンツの愛称で知られる。
1783年、モーツァルトが27歳の時、妻のコンスタンツェを伴って故郷のザルツブルグに里帰りした際、経由地のオーストリアのリンツで作曲された。
NHK-FM(東京) 『音楽の泉 モーツァルトのピアノ・ソナタ第13番変ロ長調』 2023/4/2放送
交響曲 第38番 ニ長調 K504 「プラハ」
この作品は1786年、歌劇「フィガロの結婚」がプラハで大成功をおさめたその年に作曲された。全3楽章からなり、壮麗な序奏で始まる。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ 特集 モーツァルトが聴きたくて(3)』 2022/12/7放送
交響曲 第39番 変ホ長調 K543
モーツァルトは32歳になった1788年6月から8月にかけて交響曲第39番、第40番、第41番という3曲を立て続けに作曲した。いずれも傑作としてモーツァルトの3大交響曲と呼ばれることもある。
しかし、その成立は謎に包まれており、普通、モーツアルトは作曲の依頼があったり、演奏会の予定があったりすると新作を準備していたが、これら3つの交響曲に関しては作曲した理由がわかっていない。生前に演奏されたかどうかすらわからず、議論が分かれている。
第39番は全部で4楽章からなる。堂々とした序奏で始まる第1楽章、優美な旋律と劇的な部分が交互に現れる第2楽章、第3楽章のメヌエットを経て、軽快なアレグロの第4楽章で締めくくられる。
NHK-FM(東京) 『リヒャルト・シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」 - クラシックの庭』 2024/10/30放送
交響曲 第41番 ハ長調 K551「ジュピター」
全4楽章。モーツァルトが作曲した最後の交響曲である。
モーツァルトは32歳の1788年夏に立て続けに3つの傑作交響曲(第39-41番)を作曲した。
同年に作曲された第39番、第40番とともに「3大交響曲」と呼ばれる。
その最後を締めくくる第41番は「ジュピター」という愛称で知られている。
なお、この愛称はドイツ出身のヴァイオリニスト、ヨハン・ペーター・ザーロモンが付けたとされている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽モーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」 他』 2022/9/6放送
管弦楽曲
セレナード
このうち第10ー12番までの3曲は管楽合奏のためのセレナードである。
管楽セレナード (モーツァルト) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/管楽セレナード (モーツァルト)
セレナード 第7番 ニ長調 K250「ハフナー」
19歳から20歳になる1776年に、モーツァルトの故郷ザルツブルクの裕福なハフナー家のために書かれたセレナード。全8楽章。「ハフナー・セレナード」と通称される。
ヴァイオリンのソロを交えた大規模なセレナードで、その第4楽章ロンドはウィーンの世界的ヴァイオリニスト、作曲家であるフリッツ・クライスラーがヴァイオリンとピアノに編曲したことによりより親しまれるようになった。
1783年には、このセレナードにオリジナルにはなかったフルートとクラリネットを追加し、4つの楽章からなる交響曲第35番「ハフナー」として編曲している。
なお、モーツァルトは、ハフナー家のためにこの曲も含めてセレナードを2曲書いている。もう1曲はモーツァルトがウィーンを本拠とするようになってから書かれた。ザルツブルクのハフナー家のジークムント2世が貴族の称号を得ることになり、モーツァルトは改めてお祝いの音楽を書いたのだが、そのセレナードがどういう形で完成し、演奏されたかは謎に包まれている。
NHK-FM(東京) 『音楽の泉 モーツァルトの交響曲第35番「ハフナー」』 2022/11/13放送
セレナード 第10番 変ロ長調 K361「グラン・パルティータ」
13人の管楽器奏者のために書かれたセレナード。
モーツァルトがウィーン時代に書いた3つのハルモニーの中で最も規模が大きく、リヒャルト・シュトラウスが「13管楽器のためのセレナード」を書くきっかけとなったとも言われる。
7楽章で書かれていてモーツァルトの管楽器法の妙技を味わえる作品。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ モーツァルトのセレナード変ロ長調』 2023/10/11放送
セレナード 第12番 ハ短調 K388「ナハトムジーク」
1782年にウィーンの貴族リヒテンシュタインのために作曲されたと考えられている。当時はハルモニームジークと呼ばれていた管楽アンサンブルのための作品である。
全4楽章。特に第3楽章のメヌエットはカノンで書かれている。このころモーツァルトはスヴィーテン男爵という貴族の邸宅で、ヘンデルやバッハの音楽を知った。セレナード第12番はそうしたバロック音楽の影響も感じさせる作品である。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ボッケリーニの弦楽五重奏曲ホ長調』 2023/2/22放送
セレナード 第13番 ト長調 K525「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」
有名な「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」は13曲のセレナードの最後にあたる作品である。ちょうどオペラ「ドン・ジョバンニ」(1787)の作曲に取りかかっていた頃の1787年、31歳のときに作曲されたが、作曲の経緯は明らかになっていない。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲 他 – NHK-FM(東京)』 2022/06/27放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベンの交響曲第6番「田園」 他』 2022/10/18放送
モーツァルトならではのシンプル、かつ、みずみずしい旋律に満ちたこの曲は、クラシックファンのみならず世界中の人々に親しまれている屈指の名作。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ 特集 モーツァルトが聴きたくて(2)』 2022/12/6放送
全4楽章からなり、親しみやすいメロディーと開放的で明快な雰囲気を持つ。
セレナードという音楽ジャンルで特に人気の高い作品で、モーツァルトの作品の中でも最も広く知られている曲の1つである。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベンの交響曲第6番「田園」 他』 2022/10/18放送
ただし、「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」はモーツァルト自身による名であるが、「セレナード」は彼が付けたものではない。「セレナード」はモーツァルトが亡くなった後、30年以上経ってから楽譜出版社によって付けられた。
NHK-FM(東京) 『モーツァルト ディヴェルティメントK.136〜138 - 音楽の泉 - NHK』 2023/5/21放送
なお、モーツァルトを敬愛するチャイコフスキーは「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」をお手本にして「弦楽セレナード ハ長調 作品48」という弦楽合奏のための全4楽章からなる曲を書いている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽チャイコフスキーの「組曲第4番モーツァルティアーナ」他』 2022/08/04放送
ドイツ舞曲
ドイツ舞曲 K605
1791年35歳、早すぎる晩年に作られたオーケストラのための作品。
ドイツ舞曲と題されたモーツァルトの作品はいくつかあるが、その中でもこの作品は特によく知られている。
作品全体は3つの舞曲からなり、どの曲も晩年の作品とは思えないほど華やかで明るい雰囲気に満ちている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ドボルザークのスラブ舞曲作品72』 2023/10/3放送
その他
ディヴェルティメント ヘ長調「音楽の冗談」K522
「音楽の冗談」というタイトルはモーツァルト自身によって命名された。
能力のない作曲家が背伸びをして交響曲を書き、しかもうまく音楽にまとめられずにいるのをおもしろおかしく描いている。楽想が続かなくなって無理矢理関係のない音型を入れたり、強引に調性を変えたり、曲を終わらせるためのテクニックが足りていなかったり、聴いているうちにいろいろなおかしさに気づくことができる。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ サン・サーンスの組曲「動物の謝肉祭」ほか』 2023/11/28放送
協奏曲
協奏交響曲
フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K299
1778年作曲。全3楽章。2種の独奏楽器を起用していることから明記されていないが協奏交響曲の一種と考えられる。
フルートとハープのための協奏曲 (モーツァルト) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/フルートとハープのための協奏曲 (モーツァルト)
フルートとハープの調べが美しく絡み合うこの協奏曲は娘の結婚式で親子で演奏したいというパリのある貴族の依頼で作曲された。父親はフルートが、娘はハープが上手だったことからフルートとハープを独奏楽器にした協奏曲が生まれた。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ モーツァルトのフルートとハープのための協奏曲』 2023/1/5放送
特に第2楽章「アンダンティーノ」は単独でも演奏されるほど非常に有名である。第2楽章の一部分は1984年公開の映画『アマデウス』で使用され、サリエリが「これはモーツァルトではなく神が作ってモーツァルトに書かせた曲だ」と言ったシーンがある。
バイオリンとビオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K364
協奏交響曲は18世紀後半に盛んに演奏された。モーツァルトもこのジャンルに関心を示したが、完成した形で残されたのはこの曲が唯一である。
モーツァルトが、マンハイム、そして、パリへの旅行から故郷ザルツブルクに戻った後、1779年、23歳の年に書き上げられた。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ブラームスのピアノ三重奏曲第1番 他』 2022/07/26放送
ピアノ協奏曲
ピアノ協奏曲というジャンルはモーツァルトあたりから本格的に作られるようになった。
中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、236-237項。
ピアノ協奏曲は27番まであり、名曲が多い。
中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、80項。
モーツァルトがウィーンに来てから作曲した一連のピアノ協奏曲では木管楽器の活躍が目立つようになる。1784年の春に作られたピアノ協奏曲第17番ト長調以降では、ピアノと木管楽器の対話が曲の大いなる魅力となる。モーツァルトの親友に木管楽器やホルンの名手がいたことがその背景にある。
NHK-FM(東京) 『音楽の泉 モーツァルトのピアノ協奏曲第20番』 2022/12/4放送
ピアノ協奏曲 第7番 ヘ長調 K242
20歳の年に作曲し、自身も友人たちと演奏して楽しんだという3台のピアノのための作品。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽「2つのバイオリン、チェロ、左手ピアノのための組曲」他』 2022/08/16放送
ピアノ協奏曲 第10番 変ホ長調 K365(2台のピアノのための)
1年4カ月にわたるマンハイム・パリ旅行を終えて故郷のザルツブルクに戻り、大司教の宮廷に仕える音楽家としての生活が始まった頃に書かれた。
モーツァルトが姉のナンネルと共演するために書いたのではないかと考えられている。華麗で朗らか、そして2台のソロ楽器の掛け合いも活発に聞こえてくる。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ プーランクの2台のピアノのための協奏曲』 2023/11/20放送
ピアノと管弦楽のためのロンド ニ長調 K382
志高く、ウィーンに出てきた翌年に作曲された意欲作。ピアノ協奏曲第5番の第3楽章の別稿として作曲された。
愛らしく生き生きとした主題の後、7つのバリエーションとカデンツァが続く。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ヒナステラのピアノ協奏曲第1番』 2023/1/18放送。ピアノ協奏曲第5番 (モーツァルト) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ピアノ協奏曲第5番 (モーツァルト)
ピアノと管弦楽のためのロンド イ長調 K386
志高く、ウィーンに出てきた翌年に作曲された意欲作。ピアノ協奏曲第12番の第3楽章の別稿と考えられている。
優雅で華やかな作品。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ヒナステラのピアノ協奏曲第1番』 2023/1/18放送。ピアノ協奏曲第12番 (モーツァルト) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ピアノ協奏曲第12番 (モーツァルト)
ピアノ協奏曲 第15番 変ロ長調 K450
1784年、ウィーンに拠点を移してから3年後、今や押しも押されもせぬ人気の音楽家となったモーツァルトは作曲に演奏会にと充実した日々を送っていた。この曲はそういった頃の作品である。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ 特集 モーツァルトが聴きたくて(1)』 2022/12/5放送
ピアノ協奏曲 第17番 ト長調 K453
この曲はモーツァルトのかなりの腕前のピアノの教え子で、モーツァルトもその演奏を高く評価していた女性バルバラ・プロイヤーのために作曲された。明るく生き生きとした協奏曲である。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ 特集 モーツァルトが聴きたくて(4)』 2022/12/8放送
ピアノ協奏曲 第19番 ヘ長調 K459
ウィーン時代、作曲家としても演奏家としても最高潮を迎えた1784年に作曲された。
1784年における集大成ともいえる、さわやかで躍動感あふれる作品。
NHK-FM(東京) 『モーツァルトのピアノ協奏曲第19番 - クラシックの庭』 2024/9/19放送
ピアノ協奏曲 第20番 ニ短調 K466
音楽の都ウィーンを拠点として活動するようになった時代の1785年2月10日に完成し、その翌日にモーツァルト自身のソロによって初演された。
モーツァルトの数あるピアノ協奏曲の中で、短調を曲のベースとするのは、この第20番とその翌年1786年に書かれた第24番ハ短調の2曲だけである。
ピアノ協奏曲は、予約演奏会の花、社交の場を彩る音楽でもあったので、心躍る音楽が期待されており、短調の物憂げな調べはどちらかというと避けたほうがよかったが、モーツァルトは自分の信じる音楽を貫いた。
NHK-FM(東京) 『音楽の泉 モーツァルトのピアノ協奏曲第20番』 2022/12/4放送
ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K488
モーツァルトは1781年、25歳の時に故郷ザルツブルクの宮廷の仕事を辞め、ウィーンで独立した音楽家として活動を始めた。
とりわけ1784年からの活動はめざましく、会員を募る予約演奏会も頻繁に開催した。
この曲もこの予約演奏会で披露するために書かれた。1786年、モーツァルトが30歳の年の作品である。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽リヒャルト・シュトラウスの「アルプス交響曲」他』 2022/08/29放送
古典派のピアノ協奏曲の最高峰に位置する作品の1つである。
ピアノ協奏曲第23番 (モーツァルト) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ピアノ協奏曲第23番 (モーツァルト)
ピアノ協奏曲 第24番 ハ短調 K491
この作品は管弦楽の規模が大きく、特にオーボエやファゴットといった木管楽器に重きを置いているところに特徴がある。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ヒナステラのピアノ協奏曲第1番』 2023/1/18放送
ピアノ協奏曲 第25番 ハ長調 K503
モーツァルトは、28歳になった1784年から自作の作品目録を作るようになっていた。それによると、ピアノ協奏曲第25番は1786年12月4日に完成したと書かれている。この年には歌劇「フィガロの結婚」が初演され、充実した作曲活動を行っていた。
ピアノ協奏曲第25番はモーツアルトのピアノ協奏曲の中でも最も長く規模の大きな作品の1つ。初演は完成した翌日12月5日の演奏会だったと言われている。モーツァルトは後に1789年にもライプツィヒでこの作品を演奏しており、大喝采を浴びたことを手紙に残している。没後妻のコンスタンツェがこの作品を出版すると、モーツァルトのピアノ協奏曲の中でも最も輝かしい作品だという評価を受けた。
NHK-FM(東京) 『クラシックの庭 メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」』 2024/5/1放送
ピアノ協奏曲 第26番 ニ長調 K537「戴冠式」
モーツァルトの音楽が深まるにつれ、彼の人気が落ちていった時期にあたる1788年2月、32歳の時に作曲された。前作ピアノ協奏曲第25番から1年2カ月ぶりのピアノ協奏曲である。
しかし、ウィーンでの予約演奏会はまたしても開催されず、この協奏曲は曲ができてから1年2カ月後の1789年4月に演奏旅行先のドイツ、ドレスデンでの宮廷コンサートで初演された。
その翌年1790年10月にフランクフルトで神聖ローマ帝国の皇帝レオポルト二世(ハプスブルク家の君主でもある)の戴冠式が執り行われ、その祝賀行事でこの作品がモーツァルト自身のソロで演奏された。そのことからこの曲は「戴冠式」と呼ばれるようになった。
なお、モーツァルトはこのフランクフルトでの祝賀行事で、ピアノ協奏曲第19番も演奏して好評を博している。そのためピアノ協奏曲第19番を「第2戴冠式」と呼ぶこともある。
NHK-FM(東京) 『音楽の泉 モーツァルトのピアノ協奏曲第20番』 2022/12/4放送。
クラリネット協奏曲
モーツァルトはクラリネットのための協奏曲は1曲しか残していない。
参考:クラリネット協奏曲 (モーツァルト) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/クラリネット協奏曲 (モーツァルト)
クラリネット協奏曲 イ長調 K.622
モーツァルトの最晩年、1791年にモーツァルトの友人でフリーメイソンの一員でもあった優れたクラリネット奏者アントン・シュタードラーのために作曲された。この年の12月5日、35歳で生涯を閉じたモーツァルトの円熟しきった傑作である。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ モーツァルトのクラリネット協奏曲イ長調 他』 2022/11/10放送
ホルン協奏曲
モーツァルトは4つのホルンのための作品を残しているが、これれはいずれも親しい友人であった、ザルツブルク宮廷楽団のホルン奏者ヨーゼフ・ロイトゲープのために書かれている。
モーツァルトは彼のために書いた4つのホルン協奏曲をロイトゲープ調のものと言い表しているが、どの曲も明るく陽気な雰囲気を持っている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベンの交響曲第6番「田園」 他』 2022/10/18放送
ホルン協奏曲第1番 ニ長調 K412
この曲は緩徐楽章のない2楽章構成で作られている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ベートーベンの交響曲第6番「田園」 他』 2022/10/18放送
第2楽章に2種類の楽譜が残されているなど不明な部分も多い作品であったが、近年の研究で4つのホルン協奏曲の中で一番最後に書かれた、モーツァルト最晩年1791年の作曲ではないかと考えられている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ 特集 モーツァルトが聴きたくて(4)』 2022/12/8放送
ファゴット協奏曲
ファゴット協奏曲 変ロ長調 K191
1774年18歳の年に作られた協奏曲。作曲の動機は不明。
ファゴットのレパートリーを代表する名曲で、ファゴットの特性が見事に引き出された作品である。
HK-FM(東京) 『クラシックカフェ チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」』 2023/10/31放送
弦楽合奏曲
アダージョとフーガ ハ短調 K546
モーツァルトはスヴィーテン男爵の日曜音楽会でバッハ一族やヘンデルの音楽を紹介され、大きな影響を受ける。そこで演奏されていたバロック音楽の多くはウィーン流に編曲されたものではあったが、モーツァルトはかねてから関心を抱いていたフーガを意識するようになった。
そして、1783年に「2台のピアノのためのフーガ ハ短調 K.426」を作曲し、その5年後の1788年にそのフーガを弦楽アンサンブルに編曲するとともにアダージョの序奏を新たに追加してこの作品が生まれた。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ シューマンの「リーダークライス 作品39」他』 2022/11/16放送。NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ▽バッハ/マーラー編曲の「管弦楽組曲」』 2023/3/4放送
室内楽曲
ピアノ・ソナタ
モーツァルトはピアノ・ソナタを18曲残している。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽シューベルトのピアノ五重奏曲「ます」他』 2022/06/29放送
ピアノ・ソナタ 第10番 ハ長調 K330
この曲はピアノを学習する際に演奏されることも多い親しみやすい作品で、20代のモーツァルトのみずみずしい感性がほとばしる美しいソナタ。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ モーツァルトのフルートとハープのための協奏曲』 2023/1/5放送
ピアノ・ソナタ 第11番 イ長調 K331「トルコ行進曲付き」
1783年モーツァルト27歳の時に生み出したトルコ音楽を元にした作品。全3楽章。
終わりの第3楽章にトルコの軍楽隊が奏でるリズミカルな音楽を模したトルコ行進曲が登場する。モーツァルトの作品の中でも特に愛される名曲である。
ほかにも第1楽章では子守歌のような優しい旋律を主題にした変奏曲が奏でられ、第2楽章では3拍子の穏やかな舞曲メヌエットが展開する。全体を通して多彩な魅力が詰まった作品である。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ モーツァルトのピアノ・ソナタ「トルコ行進曲付き」他』 2022/10/17放送
ピアノ・ソナタ 第12番 ヘ長調 K332
1784年モーツァルト28歳の年に出版された優美な作品。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ハイドンのチェロ協奏曲第1番 他』 2022/8/30放送
ピアノ・ソナタ 第13番 変ロ長調 K333
1783年、モーツァルトが27歳の時、妻のコンスタンツェを伴って故郷のザルツブルグに里帰りした際、経由地のオーストリアのリンツで作曲されたとみられている。
そして、1784年、ピアノ・ソナタ第6番、ヴァイオリン・ソナタ第40番とともに3つのソナタの1つとしてウィーンで出版された。
NHK-FM(東京) 『音楽の泉 モーツァルトのピアノ・ソナタ第13番変ロ長調』 2023/4/2放送
ピアノ・ソナタ 第16番 ハ長調 K545
1788年に完成。作品目録ではモーツァルト自ら「初心者のための小さなピアノ・ソナタ」と記していて、その意図のとおり素朴な構成と優しい曲調の作品。ピアノ学習する際の教材としても多くの人々に演奏され広く親しまれているソナタの1つである。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ 特集 モーツァルトが聴きたくて(3)』 2022/12/7放送
短調
短調の作品は2曲だけである。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽シューベルトのピアノ五重奏曲「ます」他』 2022/06/29放送
ピアノ・ソナタ 第8番 イ短調 K310
この曲は、母が亡くなった1778年に作曲された。
そのため、このソナタには母の死の悲しみが反映されていると言われることもある。全3楽章。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽シューベルトのピアノ五重奏曲「ます」他』 2022/06/29放送
ピアノ・ソナタ 第14番 ハ短調 K457
その他のピアノ・ソナタ
4手のためのピアノソナタ
4手のためのピアノ・ソナタ K.381 ニ長調
モーツァルトがヨーロッパ旅行で作曲の修業の過程にあった16歳の頃の作品。姉ナンネルと連弾するために書いたと考えられている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ 特集 モーツァルトが聴きたくて(1)』 2022/12/5放送
2台のピアノのためのソナタ ニ長調 K. 448
全3楽章。1781年、モーツァルトが25歳の時に作曲された。 この年、モーツァルトは住まいをウィーンへ移し、作曲家、演奏家、そしてピアノの教師を勤めながら生計を立てていた。ピアノを教えていたひとりが実業家アウエルンハンマーの娘ヨーゼファで、才能にあふれたヨーゼファにモーツァルトは触発され、彼女と共演するためにこのソナタを作曲した。作品は2台のピアノのユニゾンで力強く始まり、華麗な掛け合いを繰り広げながら華やかに展開していく。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ モーツァルトの2台のピアノのためのソナタ 他』 2022/11/28放送
当初は1784年の作品と見なされ、「K.448」という番号が付けられた。今は「K.375a」とも呼ばれる。
NHK-FM(東京) 『音楽の泉』 2022/5/14放送
なお、クラシック音楽をテーマとした二ノ宮知子の漫画作品『のだめカンタービレ』で主人公の千秋真一と野田恵(のだめ)が初共演した曲として登場し、知名度が上がった。
2台のピアノのためのソナタ (モーツァルト) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/2台のピアノのためのソナタ (モーツァルト)
バイオリン・ソナタ
バイオリン・ソナタ 第17番 ハ長調 K296
マンハイム滞在中、モーツァルトは5曲のバイオリン・ソナタを作曲した。
この曲はその最後の作品で、1778年に作曲された。
滞在中にピアノを教えていたマンハイム宮廷顧問官の娘に捧げられている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ プーランクの2台のピアノのための協奏曲』 2023/11/20放送
バイオリン・ソナタ 第23番 ニ長調 K306
3つの楽章からなり高い演奏技術を求める作品。第3楽章はピアノが主体となってカデンツァが進む。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ヒナステラのピアノ協奏曲第1番』 2023/1/18放送
バイオリン・ソナタ 第33番 ヘ長調 K377
1781年、バイオリンの伴奏を持つピアノ・ソナタとして出版された作品。
モーツァルトの時代、バイオリン・ソナタの主役はもっぱらピアノで、バイオリンは曲に彩りを添えるように書かれることが一般的であった。後の作曲家たちが残したようなバイオリンの華麗な技巧を駆使したソナタとは一味違い、この曲は端正な味わいの光るモーツァルトらしい1曲。
22/12/26クラシックカフェ
バイオリン・ソナタ 第34番 変ロ長調 K378
この作品はモーツァルトが20代半ばごろに作曲した全3楽章からなる作品。
彼の初期のバイオリン・ソナタはピアノの比重が大きく、いわばバイオリン伴奏付きのピアノ・ソナタのような様式をとっていた。しかし、この作品では2つの楽器が主役を務め、華麗で優雅なアンサンブルを奏でる。
NHK-FM(東京) 『日本の音楽祭シリーズ 東京・春・音楽祭2024 - ベストオブクラシック』 2024/10/15放送
ピアノ三重奏曲
ピアノ三重奏曲 変ホ長調 K498「ケーゲルシュタット・トリオ」
この作品は1786年に作曲されたピアノ、クラリネットとビオラのための三重奏曲で、モーツァルトが親しくしていたジャカン家の娘で、優れた弟子の1人でもあったフランチェスカ・ジャカンのために作曲された。
副題のケーゲルシュタットはモーツァルトがボウリングの原型とされるケーゲルをしながらこの作品を作曲したという言い伝えに由来する。
3つの楽章を通して主題の統一が図られ、クラリネットの甘くしなやかなメロディーが作品全体の曲調を支配しているが、渋い音色のビオラも単なる内声部の役割にとどまらず、楽器の特色を十分に生かし、さらに作品を魅力的にしている。
NHK-FM(東京) 『クラシックの庭 シューベルトの交響曲第8番』 2024/5/9放送
ピアノ四重奏曲
モーツァルトはピアノ四重奏曲を2曲書いている。
なお、2曲のピアノ四重奏曲は別々の出版社から初版の楽譜が出版された。
モーツァルトがこの前例のない素晴らしいピアノ四重奏曲を2曲作ったことで、19世紀ロマン派の時代にはメンデルスゾーン、シューマン、ブラームス、ドヴォルザーク、フォーレといった作曲家がピアノ四重奏曲を書いた。
NHK-FM(東京) 『音楽の泉 モーツァルトのピアノ四重奏曲 変ホ長調』 2022/10/9放送
ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 K. 478
ピアノ四重奏曲 第2番 変ホ長調 K.493
全3楽章。ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが紡ぐ室内楽の逸品。
歌劇「フィガロの結婚」とほぼ同時進行で作曲され、1786年にようやく完成した。
NHK-FM(東京) 『音楽の泉 モーツァルトのピアノ四重奏曲 変ホ長調』 2022/10/9放送
オーボエ四重奏曲 ヘ長調 K.370
全3楽章。モーツァルトの友人で、優れたオーボエ奏者のフリードリヒ・ラムのために書かれた作品。
NHK-FM(東京) 『音楽の泉 モーツァルトのオーボエ協奏曲』 2023/2/18放送
五重奏曲
ピアノと管楽のための五重奏曲 変ホ長調 K. 452
1784年28歳のモーツァルトはウィーンで最も人気のある作曲家となっていた。2月から4月にかけて25回もの演奏会に出演し、いくつかの新作も披露している。この作品もそうした新作の1つである。モーツァルトはこの年から自作の作品目録を作り始めたが、この五重奏曲は3月30日に完成したと書かれている。ピアノ、オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットという編成で、モーツァルトは音色や音量のバランスを図るために作曲する前に多くのスケッチを残している。初演は完成からわずか2日後の4月1日、ウィーンのブルク劇場で行われた。その10日後に父に宛てた手紙には、この作品が今まで自分が書いた中で最も素晴らしい作品だと記している。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ シューベルトの八重奏曲』 2023/1/11放送
クラリネット五重奏曲 イ長調 K. 581
この作品は1789年モーツァルトが世を去る2年前に、友人の1人であり、クラリネットの名手でもあったアントン・シュタードラーのために作曲した。バセットクラリネット用に書かれたと言われているが、モーツァルトの自筆譜をシュタードラーがなくしてしまったことから確実な資料がないまま今世紀に至るまで様々な研究が続けられている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ 特集 モーツァルトが聴きたくて(4)』 2022/12/8放送
弦楽五重奏曲
モーツァルトは全部で6曲の弦楽五重奏曲を書いているが、彼の弦楽五重奏曲は弦楽四重奏にアンサンブルや室内楽の要となる中音域のヴィオラを追加したスタイルである。
モーツァルトと彼の親友でハイドンの弟ミヒャエル・ハイドンの2人がヴィオラを加えた弦楽五重奏曲を書いたことで、この編成が弦楽五重奏の基本となった。
NHK-FM(東京) 『モーツァルトの弦楽五重奏曲ト短調 - 音楽の泉 - NHK』 2023/7/23放送
弦楽五重奏曲 第2番 ハ短調 K406
1787年に管楽セレナードK388を編曲した。
NHK-FM(東京) 『モーツァルトの弦楽五重奏曲ト短調 - 音楽の泉 - NHK』 2023/7/23放送
弦楽五重奏曲 第3番 ハ長調 K515
1787年4月に書いた。
NHK-FM(東京) 『モーツァルトの弦楽五重奏曲ト短調 - 音楽の泉 - NHK』 2023/7/23放送
弦楽五重奏曲 第4番 ト短調 K516
1787年5月、31歳の時にウィーンで書かれた弦楽五重奏曲の傑作。創作の背景については何も分かっていない。全4楽章。調性はモーツァルトにとって宿命の調性とも言われるト短調。
作曲の次の年1788年4月上旬のウィーン新聞に新作の弦楽五重奏曲の予約注文を受け付けるという広告を出しているが、予約者は非常に少なかったようで、出版は延期するとの再広告も出している。
この作品が書かれた1787年は「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」、歌劇「ドン・ジョヴァンニ」が完成し、また父レオポルトの体調不良と死が伝えられた年である。また1788年といえば、交響曲第39番、第40番、第41番「ジュピター」が書かれた年でもあるが、ウィーンでのモーツァルトの人気は、音楽の深まりと反比例するかのように陰りを見せ始めていた。
NHK-FM(東京) 『モーツァルトの弦楽五重奏曲ト短調 - 音楽の泉 - NHK』 2023/7/23放送
弦楽四重奏曲
ハイドン・セット
弦楽四重奏曲 第19番 ハ長調 K465「不協和音」
全6曲ある「ハイドン・セット」の6曲目。
4楽章で書かれたこの作品は「不協和音」という愛称で知られている。愛称の通り、音楽は暗く落ち着かない響きで始まる。しかし、それはまもなく素朴な響きと軽やかなリズムに変わり、明るく力強く終わる。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ モーツァルトの弦楽四重奏曲「不協和音」』 2023/8/30放送
弦楽二重奏曲
バイオリンとビオラのための二重奏曲 変ロ長調 K424
モーツァルトはハイドンの弟ミヒャエル・ハイドンとザルツブルクの宮廷に仕える同僚として尊敬しあい、仲を深めていった。その後、モーツァルトは活動の場をウィーンへ移した。
そうした中、ミヒャエル・ハイドンがザルツブルクの大司教から6曲のバイオリンとビオラのための二重奏曲を作曲するよう命じられる。しかし、ミヒャエル・ハイドンは病気のため作曲を思うように進められず、4曲しか完成させることができなかった。その危機を救ったのが偶然ザルツブルクを訪れていたモーツァルトである。進んで手を差し伸べ、残りの2曲を完成させたという。この作品はその中の1曲。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ モーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」』 2024/3/18放送
ピアノのための変奏曲
サリエリの歌劇「ベネチアの市」の主題による変奏曲 K180
この曲は、サリエリがまだ若い頃1772年22歳の年に作曲したオペラ「ベネチアの市」の旋律を主題に、17歳のモーツァルトが作った変奏曲である。
3回目のイタリア旅行からザルツブルクに帰り、その後訪れたウィーンで作曲された。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽チャイコフスキーの「組曲第4番モーツァルティアーナ」他』 2022/08/04放送
フランスの歌曲「ママ、聞いてちょうだい」による12の変奏曲(きらきら星変奏曲)ハ長調 K265
この曲は「きらきら星」という名前でもよく知られているが、主題はフランスの流行歌から得ている。若い娘が母親に恋の悩みと喜びを打ち明けるというチャーミングな主題が展開される。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ 特集 冬のぽかぽかクラシック(2)』 2022/12/20放送
グルックの歌劇「メッカの巡礼」の主題による変奏曲 K455
モーツァルトは25歳からウィーンでフリーの音楽家として活動を始めたが、この曲は1785年、モーツァルト29歳のときの作品である。
人気が出てきて嫉妬する音楽家も多い中、いつも好意的に接してくれたのが、ウィーンの音楽界の長老的存在グルックであった。モーツァルトの演奏会にもよく姿を見せた当時70代のグルックのためにモーツァルトが即興で披露したという作品である。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽チャイコフスキーの「組曲第4番モーツァルティアーナ」他』 2022/08/04放送
その他のピアノ曲
メヌエット ニ長調 K344
ピアノの小品。モーツァルトが30代の頃、ウィーンを拠点にフリーの音楽家として活動していた時期に書かれた。
モーツァルトの弟子が補筆していることから、元々は別な作品の一部として作曲されたのではないかと考えられている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽チャイコフスキーの「組曲第4番モーツァルティアーナ」他』 2022/08/04放送
幻想曲 ニ短調 K397
先述したように、モーツァルトは1782年にはコンスタンツェと結婚し、公私ともに充実した生活を送っていた。この年にパトロンの1人だったスヴィーテン男爵からバッハやヘンデルの音楽を紹介されて大きな影響を受けたが、この曲もこの頃に作曲されたと考えられている。
バロック音楽の様式と古典派の様式が混じり合い、独特の美しさが生み出されている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ シューマンの「リーダークライス 作品39」他』 2022/11/16放送
幻想曲 ハ短調 K475
1785年、「フィガロの結婚」に取り組む半年前にウィーンで書かれた作品。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ 特集 モーツァルトが聴きたくて(2)』 2022/12/6放送
ロンド ニ長調 K485
1786年にウィーンで作曲されたもので、ピアノの弟子の学習用に作られたものと考えられている。
ロンドは今でもピアノ学習者が弾くことが多い。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ 特集 モーツァルトが聴きたくて(4)』 2022/12/8放送
ロンド ヘ長調 K494
1786年にウィーンで作曲されたもので、ピアノの弟子の学習用に作られたものと考えられている。
ロンドは今でもピアノ学習者が弾くことが多い。
なお、この曲はピアノ・ソナタ第15番としても知られている K.533 のソナタの第3楽章にも使われた。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ 特集 モーツァルトが聴きたくて(4)』 2022/12/8放送
ジーグ ト長調 K574
ピアノの小品。モーツァルトが30代の頃、ウィーンを拠点にフリーの音楽家として活動していた時期に書かれた。
1789年、ライプチヒを訪れた際に作曲。聖トーマス教会でバッハゆかりのオルガンも弾かせてもらったモーツァルトがバッハへの敬意を込めた作品と言われている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽チャイコフスキーの「組曲第4番モーツァルティアーナ」他』 2022/08/04放送
ヴァイオリン・ソナタ
ヴァイオリン・ソナタ 第21番 ホ短調 K304
マンハイム=パリ旅行の間に書かれた作品。この時期のモーツァルトの心境を映し出すかのような哀愁あふれる曲である。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ 特集 モーツァルトが聴きたくて(1)』 2022/12/5放送
ヴァイオリン・ソナタ 第33番 ヘ長調 K377
1781年の秋、ヴァイオリンの伴奏を持つピアノ・ソナタとして出版された作品。
モーツァルトの時代、ヴァイオリン・ソナタの主役はもっぱらピアノで、ヴァイオリンは曲に彩りを添えるように書かれることが一般的であった。のちの作曲家たちが残したようなヴァイオリンの華麗な技巧を駆使したソナタとは一味違い、この曲は端正な味わいの光るモーツァルトらしい1曲である。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ドボルザークの交響曲第7番 ほか』 2022/12/26放送
ディヴェルティメント
モーツァルトはディヴェルティメントの代表的作曲家である。
モーツァルトの時代には宮廷や貴族の家で行われるパーティーや式典などのBGMとしてもしばしば演奏された。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ マーラーの交響曲第4番』 2023/1/19放送
ディヴェルティメント 第2番 ニ長調 K131
1772年の夏にザルツブルクで書かれた管楽器を交えたディヴェルティメント。
NHK-FM(東京) 『モーツァルト ディヴェルティメントK.136〜138 - 音楽の泉 - NHK』 2023/5/21放送
ディヴェルティメント ニ長調 K136、変ロ長調 K137、ヘ長調 K138
この3曲はモーツァルトが16歳の頃、ザルツブルクで宮廷音楽家を勤めていた頃に弦楽のために作曲したと考えられている。わかっているのは1772年の冬に故郷ザルツブルクで作曲されたということだけで、弦楽四重奏のため、あるいは弦楽オーケストラのために作られたのかはわかっていない。
また、モーツァルトが「ディヴェルティメント」と名付けたわけでもないようである。自筆譜には他人の筆跡で「ディヴェルティメント」と書き込まれているからである。
今日でも大変人気の高い作品の1つである。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ マーラーの交響曲第4番』 2023/1/19放送。NHK-FM(東京) 『モーツァルト ディヴェルティメントK.136〜138 - 音楽の泉 - NHK』 2023/5/21放送
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