ドイツ―ヘンデル
ヘンデル
ヘンデルの生涯・経歴
ヘンデル(1685-1759)はドイツの作曲家である。
ドイツ生まれでありながら若くしてイタリアのローマで研鑽を積み、その後イギリスに渡ってオペラやオラトリオで名声を高め、ヨーロッパ各地で活動した。
また、オルガンを弾いたり、オーケストラを率いて演奏会を開いたりして活躍した。
『世界史用語集』 山川出版社、2014年、188頁。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ハイドンの交響曲第94番「驚がく」 他』 2022/08/11放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ヘンデルの組曲「水上の音楽」ヘ長調』 2023/3/20放送。NHK-FM(東京) 『リヒャルト・シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」 - クラシックの庭』 2024/10/30放送
ハレ・ハンブルク時代
ヘンデルは1685年にバッハと同じ年にドイツ中部のハレで生まれた。
幼少の頃から音楽に対して天才的な才能を示したと言われている。
『クラシックカフェ ▽ハイドンの交響曲第94番「驚がく」 他』 2022/08/11放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ボッケリーニの弦楽五重奏曲ホ長調』 2023/2/22放送。NHK-FM(東京) 『ヘンデルのイタリア時代(1) - 古楽の楽しみ - NHK』 2024/7/1放送
法律家になってほしいという父の意志を尊重して、一度はハレ大学の法学部に進学したが、音楽への思いは立ち切り難く、1703年音楽家になることを決意して大学を辞め、北ドイツの大都市ハンブルクへと向かった。
ヘンデルはハンブルクでオペラの世界と出会う。当初は劇場のバイオリン奏者を務めていが、すぐにその才能を見出され、北ドイツの街ハンブルクで1705年に19歳という異例の若さでありながら初めて作曲したオペラ「アルミーラ」を成功させた。
NHK-FM(東京) 『ヘンデルのイタリア時代(1) - 古楽の楽しみ - NHK』 2024/7/1放送。NHK-FM(東京) 『ヘンデルのイタリア時代2(1) - 古楽の楽しみ - NHK』 2024/10/28放送
イタリア時代
ハンブルクでの活躍後、ヘンデルは最新の音楽を学ぶため、イタリアへの留学を決意し、1706年の秋ごろハンブルクを後にした。
ヘンデルがどのようなルートでイタリア入りを果たしたのか、詳しいことはわかっていないが、まずフィレンツェに滞在したことは確かなようである。
しかし、フィレンツェにはあまり長居はせず、1707年の1月初めまでにローマに到着した。そして1月の14日、ローマの教会で早速演奏会を開いてオルガンの腕前を披露し、その素晴らしさにローマの人々が驚いたという記録が残っている。
当時、ローマには4人の有力な音楽のパトロンがいたが、中でもヘンデルが特に懇意にしていたのはルスポリ公爵であった。
なお、ヘンデルが1707年にローマに滞在した当時、コレッリがローマの音楽界の中心的な音楽家であった。
NHK-FM(東京) 『ヘンデルのイタリア時代(1) - 古楽の楽しみ - NHK』 2024/7/1放送。NHK-FM(東京) 『ヘンデルのイタリア時代2(1) - 古楽の楽しみ - NHK』 2024/10/28放送
イタリアのオペラ・協奏曲の学習
ヘンデルはイタリア滞在中にオペラなど様々なことを学んだ。また、イタリアは協奏曲の誕生の地であり本場なので協奏曲の書法についても深く学び、それはヘンデルの協奏曲創作に生かされた。
例えば、ヘンデルがロンドンで作曲した一連のオルガン協奏曲もイタリア時代の学習成果の延長に位置づけられる。
NHK-FM(東京) 『ヘンデルのイタリア時代3(1) - 古楽の楽しみ - NHK』 2024/12/2放送。NHK-FM(東京) 『ヘンデルのイタリア時代3(2) - 古楽の楽しみ - NHK』 2024/12/3放送。NHK-FM(東京) 『ヘンデルのイタリア時代3(3) - 古楽の楽しみ - NHK』 2024/12/4放送
ロンドン時代
イタリアで修業を積んだのち、ロンドンで活躍してオペラで大きな成功を収める。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ボッケリーニの弦楽五重奏曲ホ長調』 2023/2/22放送。NHK-FM(東京) 『クラシックの庭 メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」』 2024/5/1放送
ヴェネツィアにいたとき、ドイツのハノーヴァー(ハノーファー)選帝侯の甥と知り合い、宮廷楽団の楽長にならないかと誘われ、1710年、いったんドイツに帰り、宮廷楽長になった。
しかし、1711年、12カ月という約束で休暇をもらってロンドンへ行き、オペラで大成功した。
そのためヘンデルは約束を破って帰国しなかった。
そして、皮肉なことに、1714年にイギリスのアン女王が亡くなると、ハノーヴァー選帝侯ゲオルクがジョージ一世としてイギリス国王になった。つまり、ヘンデルは約束を破ったかつての雇い主とロンドンで再会することになったわけである。
ジョージ一世はヘンデルが約束を守らなかったので不快に思っていた。
そこでヘンデルは、1717年7月にテムズ川の上で催されたイギリス国王ジョージ一世の舟遊びに際して、特別仕立ての帆船を雇って50人ほどの演奏家たちを乗せて参加し、国王の船に近づいて「水上の音楽」を演奏した。
王は別の船でその音楽を楽しみながら優雅なひとときを過ごした。この組曲を大変気に入り、3回も演奏させたとも言われている。
中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、50-51項。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ヘンデルの組曲「水上の音楽」ヘ長調』 2023/3/20放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ヘンデルの組曲「王宮の花火の音楽」ほか』 2022/07/26放送
ヘンデルは1727年には正式にイギリスに帰化し、国王や貴族の庇護の下、宮廷音楽家として活躍した。
『世界史用語集』 山川出版社、2014年、188頁。
また、18世紀のロンドンでは演奏会が盛んに開かれ、ヘンデルも多くの作品を発表した。
NHK-FM(東京) 『クラシックの庭 メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」』 2024/5/1放送
ヘンデルの音楽史における位置づけ
古典派音楽
バロック音楽
バッハやヘンデルがバロック音楽を大成した。
そして、それを引き継いでモーツァルトらが古典派音楽を完成させることになる。
『詳説 世界史』 山川出版、2019年、239頁。
ヘンデルの作品
管弦楽曲
水上の音楽
この曲はヘ長調・ニ長調・ト長調の3つの組曲から構成されている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ヘンデルの組曲「王宮の花火の音楽」ほか』 2022/07/26放送
舟遊びのための音楽は20曲余り作曲されたが、ヘンデルが亡くなった後、楽譜が紛失してしまった。のちに研究者たちによって復元され、今では3つの組曲として親しまれている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ヘンデルの組曲「水上の音楽」ヘ長調』 2023/3/20放送
水上の音楽 第1組曲 ヘ長調 HWV348
第4曲「メヌエット」はNHK-FM『古楽の楽しみ』の番組テーマ曲である。
王宮の花火の音楽
マリア・テレジアのハプスブルク家領継承に端を発するオーストリア継承戦争が1748年に終結し(→アーヘン条約)、その祝賀行為として、当時のイギリス国王ジョージ二世は花火大会を計画し、その音楽をヘンデルに依頼した。
当日はトラブルもあったが、祝賀会で演奏されたヘンデルの音楽は大成功を収めたと言われている。
5つの曲で構成されている。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ヘンデルの組曲「王宮の花火の音楽」ほか』 2022/07/26放送
12の合奏協奏曲集 作品6
先述したように18世紀のロンドンでは演奏会が盛んに開かれたが、ヘンデルも多くの作品を発表した。合奏協奏曲もその1つ。
1739年に12曲からなる合奏協奏曲集を出版した。
NHK-FM(東京) 『クラシックの庭 メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」』 2024/5/1放送
合奏協奏曲 ト短調 作品6第6
合奏協奏曲第6番ト短調は全5楽章。特に第3楽章で演奏されるゆったりとした「ミュゼット」はヘンデルのお気に入りだったと言われている。
NHK-FM(東京) 『リヒャルト・シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」 - クラシックの庭』 2024/10/30放送
協奏曲
オルガン協奏曲
一連のオルガン協奏曲はロンドンで作曲した。
前述したように、これらはイタリア時代の学習成果の延長に位置づけられる。
NHK-FM(東京) 『ヘンデルのイタリア時代3(1) - 古楽の楽しみ - NHK』 2024/12/2放送
オルガン協奏曲集第1巻 オルガン協奏曲 作品4第2 変ロ長調 HWV290
この作品はヘンデルが1735年にロンドンでオラトリオ「エステル」を演奏した時に一緒に演奏され、当時の新聞で比類のないものだと絶賛された。全4楽章。
NHK-FM(東京) 『ヘンデルのイタリア時代3(4) - 古楽の楽しみ - NHK』 2024/12/5放送
オルガン協奏曲集第1巻 オルガン協奏曲 作品4第3 ト短調 HWV291
全4楽章。
NHK-FM(東京) 『ヘンデルのイタリア時代3(3) - 古楽の楽しみ - NHK』 2024/12/4放送
オルガン協奏曲集第1巻 オルガン協奏曲 作品4第4 ヘ長調 HWV292
この作品は1735年に初演されたと考えられている。全4楽章。
NHK-FM(東京) 『ヘンデルのイタリア時代3(5) - 古楽の楽しみ - NHK』 2024/12/6放送
オルガン協奏曲集第1巻 オルガン協奏曲 作品4第5 ヘ長調 HWV293
全4楽章。この作品はヘンデルの「リコーダー・ソナタ 作品1 第11番 ヘ長調 HWV369」を元に管弦楽を加え編曲して完成された。そして1735年3月初演されたと考えられている。
NHK-FM(東京) 『ヘンデルのイタリア時代3(1) - 古楽の楽しみ - NHK』 2024/12/2放送
オルガン協奏曲集第2巻 オルガン協奏曲 第13番 ヘ長調「カッコウとナイチンゲール」HWV295
鳥と音楽の素敵な関係。ヘンデル『オルガン協奏曲』(2)〝カッコウとナイチンゲール〟とデカメロン伝説 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~ https://www.classic-suganne.com/entry/2017/12/02/202354
1739年に作曲された。全4楽章。初演の際、オルガンのソロはヘンデル自身が務めた。
NHK-FM(東京) 『ヘンデルのイタリア時代3(2) - 古楽の楽しみ - NHK』 2024/12/3放送
器楽曲
独奏楽器と通奏低音のためのソナタ集 作品1
18世紀ロンドンでは貴族に限らず市民も音楽の演奏を楽しむようになり、楽譜の出版が盛んになった。
そうした中、作曲家ヘンデルもソナタ集作品1を出版した。楽譜にはフルートまたはバイオリンまたはオーボエのためのソナタ集と書かれており、音域さえ合えば旋律楽器のいろいろな楽器で演奏することができる。
NHK-FM(東京) 『古楽の楽しみ ヘンデルの「リコーダー・ソナタ」』 2023/1/30放送
ハープシコード組曲 第1集
1720年、ヘンデルは8曲からなるハープシコード組曲集を出版した。それは少し前に自分の作品が勝手に出版されたことを知ったためであった。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ボッケリーニの弦楽五重奏曲ホ長調』 2023/2/22放送
ハープシコード組曲 第1集 第5番 ホ長調 HWV430
4つの曲からなり、終曲の「アリアと変奏」は「調子の良い鍛冶屋」として単独でも親しまれている一曲である。
『クラシックカフェ ▽ハイドンの交響曲第94番「驚がく」 他』 2022/08/11放送
ハープシコード組曲 第1集 第7番 ト短調 HWV432
第7番は序曲、アンダンテ、アレグロ、サラバンド、ジーグ、パッサカリアの6曲からなる。最後に置かれたパッサカリアはスペインで生まれた舞曲である。バロック時代にヨーロッパで流行した。
NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ボッケリーニの弦楽五重奏曲ホ長調』 2023/2/22放送
二段鍵盤のためのソナタ ト長調 HWV579
二段鍵盤のチェンバロのためのソナタ。
いつ作曲されたのか詳しいことはわかっていないがヘンデルのイタリア時代に書かれたのではないかと推測されている。
明快の主題に基づくファンタジアで、演奏者の技巧的な技術を披露する部分もあり、華やかな音楽となっている。
NHK-FM(東京) 『ヘンデルのイタリア時代2(1) - 古楽の楽しみ - NHK』 2024/10/28放送
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