[歴史②]世界史

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ショスタコーヴィチ


ショスタコーヴィチ

ショスタコーヴィチの生涯・経歴

ショスタコーヴィチ(1906-1975)は旧ソビエト連邦を代表する20世紀の作曲家である。

小学館 『日本大百科全書』。NHK-FM(東京) 『音楽の泉 カリンニコフ交響曲第1番』 2023/3/25放送

1906年、サンクト・ペテルブルグで、技師で音楽愛好家であった父とピアニストの母との間に生まれた。

小学館 『日本大百科全書』

幼い頃から音楽の才能を発揮し、9歳で作曲を始めている。

中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、258項。

19世紀の終わりにアメリカで生まれたジャズは20世紀前半、ヨーロッパでも大流行した。ショスタコーヴィチも学生だった10代からジャズのコンサートに通い、刺激を受けている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」』 2023/9/6放送

学生時代に書いた交響曲第1番が成功を収めて若い頃から注目された。

NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック ショスタコーヴィチの交響曲(1)第4番 ハ短調』 2023/10/2放送

ショスタコーヴィチはソ連が誇る大作曲家として亡くなったが、若い頃には危うく反体制芸術家として粛清されるところだった。20世紀のソビエト連邦において政府が掲げる文化方針と自分の芸術的信念との狭間で苦悩し続けた作曲家である。何度も当局から作風を批判されては、その都度の方針に沿った作品を発表して名誉を回復していった。
最もよく知られているのは、1934年に初演されたオペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」がスターリンの逆鱗に触れた事件である。
30歳を迎える1936年にソビエト当局からこのオペラを批判されたことをきっかけに、ショスタコーヴィチの人気に陰りが出始め、窮地に立たされた。

中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、258項。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽シューマンのチェロ協奏曲 他』 2022/9/21放送。NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック ショスタコーヴィチの交響曲(1)第4番 ハ短調』 2023/10/2放送

しかし、翌年、ショスタコーヴィチはいかにも当局が喜びそうな交響曲5番を完成させた。目論み通り、この曲は当局にも大絶賛され、人々からも熱狂的に迎えられた。
こうして交響曲第5番の成功によって名誉を回復し、ショスタコーヴィチは人生最大の危機を乗り越えることができた。

中川 右介 『クラシック音楽の歴史』 角川ソフィア文庫、2017年、260項。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽シューマンのチェロ協奏曲 他』 2022/9/21放送

ショスタコーヴィチの意義・評価

交響曲作曲家

ショスタコーヴィチは多岐にわたる作品を発表しているが、とくに20世紀中葉の交響曲作曲家として、その名を不朽のものとした。

小学館 『日本大百科全書』

他の音楽家との関係

バッハ

ショスタコーヴィチはバッハを敬愛していた。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽バッハの無伴奏バイオリン・ソナタ第3番 他』 2022/9/8放送

ショスタコーヴィチの作品

ショスタコーヴィチの創作の中心は交響曲弦楽四重奏曲にあった。これらのなかでも特に有名なのが、交響曲第5番、第7番、第10番と弦楽四重奏曲第8番である。また歌劇「ムツェンスク郡のマクベス夫人」は古今のオペラの傑作の1つとされる。

ドミートリイ・ショスタコーヴィチ - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ドミートリイ・ショスタコーヴィチ

交響曲
交響曲 第4番 ハ短調 作品43

先述したように、ショスタコーヴィチは30歳を迎える1936年にソビエト当局から作品を批判されて窮地に立たされたが、こうした苦しい状況の中でも必死に作曲を続け、交響曲第4番を完成させた。
3楽章で構成された1時間を要する大曲で、一般的な交響曲からは逸脱した自由な形式で作曲されている。
完成直後から初演の準備が進められていたが中止に追い込まれ、ようやく実現したのはそれから25年後1961年のことであった。

NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック ショスタコーヴィチの交響曲(1)第4番 ハ短調』 2023/10/2放送

交響曲 第5番 ニ短調 作品47

この作品は1937年に書かれた。
その前年1936年にはショスタコーヴィチが書いたオペラとバレエが政府によって厳しく批判されていた。プレッシャーがかかる状況下でショスタコーヴィチは第5番の交響曲に着手し、均整の取れた4つの楽章で構成された作品を完成させた。
この交響曲はレニングラード・フィルハーモニー管弦楽団によって初演されて大好評を博し、当局にも好意的に受け入れられた。逆境を跳ね返した交響曲と評されることが多い。

NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック ショスタコーヴィチの交響曲(2)第5番 ニ短調』 2023/10/3放送

交響曲 第9番 変ホ長調 作品70

第2次世界大戦の最中、ショスタコーヴィチは2つの交響曲を発表した。戦場描写した第7番「レニングラード」と戦争の恐ろしさに思いをはせた第8番で、いずれも演奏時間は1時間を超える規模の大きな作品。大戦終結後、ショスタコーヴィチが次に発表する交響曲には前作に匹敵する規模を持ち、勝利に沸くソビエト政府や国民を讃える内容が込められることが期待されていた。しかし、ショスタコーヴィチが発表した第9番は演奏時間25分ほどの陽気で軽快なものあった。ソビエト当局の期待を裏切るような作品は数年後のいわゆるジダーノフ批判へとつながり、当局の求める音楽を書かないショスタコーヴィチは他の著名な作曲家たちと共に非難の対象になった。
初演は1945年11月にレニングラード・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で行われた。
5つの楽章からなり、第3楽章以降は続け演奏され、熱狂的なクライマックスを迎えて曲は終わる。

NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック ショスタコーヴィチの交響曲(3)第9番 変ホ長調』 2023/10/4放送

交響曲 第10番 ホ短調 作品93

この作品は1953年の夏から秋にかけて作曲された。この年の3月にスターリンがなくなり、一種の自由主義的なムードが広がり始めた。このような状況の中でショスタコーヴィチは交響曲第9番からおよそ8年ぶりとなる新しい交響曲第10番を発表した。初演は同じ年の12月17日にレニングラード(現在のサンクトペテルブルク)でレニングラード・フィルハーモニー交響楽団により行われた。
初演当時からこの作品についての評価は賛否が大きく分かれ、作曲家同盟や音楽批評委員会などのメンバーにより、この作品についての討論会が開かれるなど、激しい論争が繰り広げられた。討論に際し、ショスタコーヴィチ自身は作品全体について人間の感情と情熱を描きたかったと述べただけであった。
全体は4つの楽章からなり、第1楽章は古典的なソナタ形式で書かれている。第2楽章は第1楽章とは対照的に極めて短くスピーディーな楽章。第3楽章は三部形式で書かれ、どことなく軽妙なワルツのイメージを感じさせる。そして第4楽章は悲痛で混沌とした序奏に続き、抑圧によるフラストレーションからの解放を感じさせるような音楽が力強く演奏され、曲が閉じられる。

NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック ショスタコーヴィチの交響曲(4)第10番 ホ短調』 2023/10/5放送

弦楽四重奏曲

ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲は全15曲ある。

弦楽四重奏曲第8番 (ショスタコーヴィチ) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/弦楽四重奏曲第8番 (ショスタコーヴィチ)

弦楽四重奏曲 第8番 ハ短調 作品110

ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲の中で、最も重要な作品である。

弦楽四重奏曲第8番 (ショスタコーヴィチ) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/弦楽四重奏曲第8番 (ショスタコーヴィチ)

ファシズムと戦争の犠牲者の思い出に捧げられたこの曲は1960年、当時の東ドイツドレスデンでわずか3日で書き上げられたという。
曲の主要な主題にはショスタコーヴィチがドイツ語で署名する時の頭文字「DSCH」をドイツ語 の音名に当てはめて4つの音が用いられている。さらに、ロシアの革命歌「重き鎖につながれて」の引用やショスタコーヴィチ自身の過去の作品、例えば交響曲第1番、交響曲第10番、チェロ協奏曲第1番、ピアノ三重奏曲、オペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」などからも主題がとられている。個人的な記憶を呼び起こしたようなこの弦楽四重奏曲はショスタコーヴィチの自伝的作品であるとも言える。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番』 2023/2/27放送

管弦楽曲
タヒチ・トロット 作品16(「ふたりでお茶を」のオーケストラ編曲版)

20世紀前半に活躍したアメリカの作曲家ユーマンズが1920年代の半ばに発表したヒットソング「ふたりでお茶を」をショスタコーヴィチがオーケストラ用に編曲した。
友人の指揮者から1時間以内にこの曲をオーケストラ用に編曲できるかとけしかけられたショスタコーヴィチが45分ほどで編曲を終わらせたという逸話がある。
ショスタコーヴィチはこの曲が大好きだったようで、自作ではないのに作品16を与えている。

NHK-FM(東京) 『音楽の泉 ショスタコーヴィチのステージ・オーケストラのための組曲』 2024/2/4放送

ジャズ組曲

ショスタコーヴィチは一般に交響曲弦楽四重奏曲のジャンルにおいて、戦争などをテーマにした暗く重い作品を多く作曲したことで知られているが、ジャズ組曲はとても同じ作曲家が作曲したとは思えないほど軽妙な作品であり、ショスタコーヴィチの意外な一面を映し出していると評されている。

ジャズ組曲 (ショスタコーヴィチ) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ジャズ組曲 (ショスタコーヴィチ)

ステージ・オーケストラ(舞台管弦楽)のための組曲

作品番号がないこの組曲は長らくジャズ組曲第2番として伝えられてきた。1938年に作曲されたジャズ組曲第2番は戦争で失われたが、1950年代にまとめられた「ステージ・オーケストラのための組曲」がショスタコーヴィチが亡くなった後、誤ってジャズ組曲第2番として出版されてしまったのである。
組曲は全部で8曲。過去に作曲した映画音楽やバレエ音楽の一部を含んでいる。特に6曲目のワルツ第2番は現在も良く演奏されて親しまれている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」』 2023/9/6放送

協奏曲
ピアノ協奏曲 第2番 へ長調 作品102

全3楽章。この作品は息子マキシムのために作曲された。マキシムが19歳の誕生日を迎えた1957年に、彼のピアノ演奏で初演が行なわれた。

NHK-FM(東京) 『ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番 - クラシックカフェ - NHK』 2023/4/11放送

チェロ協奏曲

ショスタコーヴィチは生涯に二曲チェロ協奏曲を残している。いずれも名チェロ奏者ムスティスラフ・ロストロポーヴィチのために作曲された。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番』 2023/2/27放送

チェロ協奏曲 第1番 変ホ長調 作品107

1959年の作品。同じくソビエト連邦時代を生きた作曲家プロコフィエフのチェロと管弦楽のための作品「交響協奏曲」に触発されて作曲したという。
おどけた行進曲風の主題で始まる第1楽章、哀愁を帯びた民謡風の旋律が聞こえてくる第2楽章、第三楽章はチェロ独奏の長大なカデンツァ、そして第4楽章はオーケストラとともにクライマックスを作り上げる。
曲は1959年10月にロストロポーヴィチのチェロ独奏、ムラヴィンスキー指揮、レニングラード・フィルによって初演された。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番』 2023/2/27放送

室内楽曲
ピアノ五重奏曲 ト短調 作品57

この曲は、1940年ソビエトのベートーヴェン弦楽四重奏団の依頼で作曲された。初演ではピアニストでもあったショスタコーヴィチ自身が演奏し、大きな成功を収めた。そして当時、作曲家として最高の賞であったスターリン賞を受賞した。
全5楽章。深い叙情性をたたえたショスタコーヴィチの代表作の1つである。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽シューマンのチェロ協奏曲 他』 2022/9/21放送

ピアノ曲
24の前奏曲とフーガ 作品87

ショスタコーヴィチが、敬愛するバッハ平均律クラヴィーア曲集にならって作り上げた作品である。すべての長調と短調にわたり、前奏曲そしてフーガが都合48曲に並ぶ。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽バッハの無伴奏バイオリン・ソナタ第3番 他』 2022/9/8放送

着想を得たのは1950年に審査員として参加したライプチヒで行われたバッハ生誕200年を記念する音楽祭のピアノコンクールであった。
ショスタコーヴィチはバッハについての講義を行うほか、平均律クラヴィーア曲集の中から何曲かを選んで素晴らしい演奏を披露して、世界中から集まった音楽家達を驚嘆させたという。
そして、この時に開催されたコンクールでピアノ部門の1位を獲得した当時26歳のタチャーナ・ニコライエワが弾いた平均律クラヴィーア曲集に強烈な印象を受け、その深い芸術性にインスパイアされた。
ショスタコーヴィチは自分自身が描く24の前奏曲とフーガを1大曲集として作曲しようと決意し、帰国後すぐニコライエワへ連絡をとり、演奏を依頼した。そして、翌年の1951年に完成した。なお、曲集はニコライエワに献呈された。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラフマニノフのピアノ・ソナタ 第1番 他』 2022/10/25放送。NHK-FM(東京) 『ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番 - クラシックカフェ - NHK』 2023/4/11放送。NHK-FM(東京) 『ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番 - クラシックカフェ - NHK』 2023/4/11放送

はじめはロシアのピアニストたちのレパートリーとして広まり、現在では20世紀の重要なピアノ作品として、世界中の音楽ファンに愛されている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽バッハの無伴奏バイオリン・ソナタ第3番 他』 2022/9/8放送

映画音楽
馬あぶ 作品97

ショスタコーヴィッチが1955年の映画「馬あぶ」のために書いた映画音楽。
映画の舞台は19世紀イタリア統一運動の時代で、権力に翻弄された青年アーサーの純愛と彼の激動の人生が描かれている。なお、馬あぶというのは何物にも屈しないアーサーのニックネームであった。

NHK-FM(東京) 『音楽の泉 カリンニコフ交響曲第1番』 2023/3/25放送



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