[歴史②]世界史

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ラヴェル


ラヴェル

ラヴェルの生涯・経歴

ラヴェル(1875-1937)は20世紀前半に活躍したフランスの作曲家である。

1875年にフランス南西部とスペインをまたぐバスク地方のジブールで生まれ、パリで育ち、1937年、62歳でこの世を去った。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽フォーレ組曲「ペレアスとメリザンド」他』 2022/07/05放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ドビュッシーの前奏曲集第1巻 他』 2022/07/13放送

音楽を愛する両親から才能を見込まれ、14歳の時にパリ音楽院に入学した。伝統を重んじる音楽院の中、独創的な彼の才能には厳しい評価が下されていた。

20代になって作曲家のフォーレと出会い、彼の作曲のクラスで学び始める。フォーレはラヴェルを好意的に受け入れ、励ました。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ドビュッシーの前奏曲集第1巻 他』 2022/07/13放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラヴェルの弦楽四重奏曲ヘ長調』 2023/4/10放送

やがて作曲家を目指すようになったラヴェルは、若手音楽家の登竜門であったローマ賞に応募したが、5回連続で落選してしまう。
すでに「水の戯れ」などで知られていたラヴェルが落選したことは物議を醸し、音楽院の委員長が辞任する騒ぎとなっている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラヴェルの弦楽四重奏曲ヘ長調』 2023/4/10放送

なお、ラヴェルは19歳頃にドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」を聴き、初めて音楽がなんであるかわかったと語ったと言う。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽フォーレ組曲「ペレアスとメリザンド」他』 2022/07/05放送

若い頃はならず者を意味するアパッシュというパリの若き芸術家グループの中心的存在であった。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽フォーレ組曲「ペレアスとメリザンド」他』 2022/07/05放送

他の音楽家との関係

ドビュッシー

ラヴェルはドビュッシーを尊敬し、ドビュッシーの「3つの夜想曲」、「牧神の午後への前奏曲」のピアノ編曲やピアノ曲「サラバンド」、「舞曲」の管弦楽版への編曲も行っている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラヴェルの組曲クープランの墓」他』 2022/11/29放送

ストラヴィンスキー

ラヴェルはストラヴィンスキーの友人の1人である。

NHK-FM(東京) 『クラシックの庭 ストラヴィンスキー組曲「プルチネッラ」』 2024/4/29放送

ラヴェルの音楽史における位置づけ

後期ロマン派

印象主義

ラヴェルはドビュッシーとともに印象主義の作曲家と言われる。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ラヴェルの弦楽四重奏曲ヘ長調 他』 2022/9/22放送

ラヴェルの意義・評価

近代フランスを代表する作曲家

ラヴェルはドビュッシーなどとともに近代フランスを代表する作曲家の1人である。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラヴェルの組曲クープランの墓」他』 2022/11/29放送

オーケストラの魔術師

ラヴェルは「オーケストラの魔術師」と言われるほどの管弦楽法の大家である。

ラヴェルの作品

作風

ラヴェルはドビュッシーよりも13歳年下である。2人はともに印象主義の作曲家と言われるが、独自の響きを追求し、無調音楽への先駆けとなったドビュッシーに対し、ラヴェルは古典的な調性や古い様式への傾倒を生涯貫き、結果的にその作風や方向性はだいぶ違うと言える。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ラヴェルの弦楽四重奏曲ヘ長調 他』 2022/9/22放送

バレエ音楽
ボレロ

1928年作曲のバレエ曲。ラヴェルは工場の音を「シンフォニー」と評し、見学してはうっとりしていたと言う。「ボレロ」は細かいモチーフが重なって巨大な響きになる。音で「工場」を具現化した作品。

ダフニスとクロエ

ロシア・バレエ団の創設者セルゲイ・ディアギレフの依頼でバレエ音楽として作曲された。ギリシャの作家ロンゴスが3世紀ごろに書いたとされる「ダフニスとクロエ」の物語を元にしている。ロシア・バレエ団の振付師ミハイル・フォーキンが台本を手掛け、ラヴェルがそれに音楽をつけた。1909年から3年かけて作曲され、1912年にロシア・バレエ団によってパリのシャトレ劇場で初演された。
ラヴェルは、このバレエ音楽から2つの演奏会用組曲を作っている。1911年に組曲第1番、1913年に組曲第2番が作られた。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラヴェルの組曲クープランの墓」他』 2022/11/29放送

バラ・ヴァルス

舞踏会をモチーフに作曲したバレエ音楽。ヴァルスとはフランス語でワルツを意味する言葉である。
ラヴェルはヨハン・シュトラウスの音楽に魅せられ、彼へのオマージュとしてこのラヴァルスを作曲した。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ウェーバーの「舞踏への勧誘」他』 2022/9/5放送

ピアノ協奏曲

ラヴェルは最晩年に2曲のピアノ協奏曲を作曲している。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽フォーレ組曲「ペレアスとメリザンド」他』 2022/07/05放送

左手のためのピアノ協奏曲 ニ長調

この曲は1929年から30年にかけて、ウィーンのピアニスト、ヴィトゲンシュタインのために作曲された。ヴィトゲンシュタインは第1次世界大戦で右腕を失い、左手のみで活動していたピアニストで、彼ははじめ様々な曲を左手だけで演奏できるように自身で編曲していたが、レパートリーを増やしたいと次第に思うようになり、ラヴェルをはじめ様々な作曲家に新作を依頼した。ラヴェルは作曲するにあたり、もともとあったサン・サーンスやツェルニーなどの左手のための作品をよく研究したという。そして、ジャズなどの要素も盛り込みながら、色彩豊かな協奏曲を完成させた。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲』 2023/6/12放送

ピアノ協奏曲 ト長調

1931年、56歳の年に完成。古典的な「急 - 緩 - 急」の3楽章構成。自らのルーツであるバスク地方の音楽を彷彿とさせつつ、ジャズの手法でもあるモードを用いた音階などが取り入れられた作品。ラヴェルはモーツァルトとサンサーンスの協奏曲の精神に則って作曲したものと述べている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽フォーレ組曲「ペレアスとメリザンド」他』 2022/07/05放送

管弦楽曲
スペイン狂詩曲

ラヴェルの代表作の1つ。全4曲。
「スペイン狂詩曲」は最後のローマ賞への応募から2年後の1907年に作曲された。
ラヴェルは、バスク人の母親の影響を受けて生涯にわたりスペインの音楽に愛着を持ち、スペイン狂詩曲を始め、作品に取り入れている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ドビュッシーの前奏曲集第1巻 他』 2022/07/13放送

室内楽曲
バイオリン・ソナタ

ラベルはまだ学生時代だった1897年にバイオリン・ソナタを作曲したが、この作品は未完成に終わった。
それから30年後、再びバイオリン・ソナタに取り組み、1927年に完成した。作曲には4年という歳月を費やした。
全部で3楽章。いくつもの主題が対位法的に組み合わされた第1楽章、「ブルース」と題された第2楽章、「無窮動」と書かれた第3楽章。第2楽章は名前のとおりジャズの要素が用いられている。 1920年代パリではアメリカで生まれたジャズが流行し、ラヴェル以外にも多くの作曲家がジャズを取り入れている。
なお、この作品はラヴェルの最後の室内楽となった。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ イベールの「フルート協奏曲」他』 2022/11/30放送

バイオリンとチェロのためのソナタ

フランスの音楽雑誌が1920年12月発行の号で1918年55歳で亡くなったドビュッシーを特集し、ゆかりの深い音楽家たちが追悼文を寄せた。また「ドビュッシーを偲んで」というタイトルの別冊付録には10人の作曲家が作品を寄せている。顔ぶれはデュカス、ファリャ、サティ、そしてストラヴィンスキーバルトークなど。
その中にはラヴェルの名前もあり、バイオリンとチェロによる「クロード・ドビュッシーの墓」という小品を寄せている。ラヴェルは後にこの小品に3つの楽章を書き足し、1922年に「バイオリンとチェロのためのソナタ」を完成させた。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ドビュッシーの二つのアラベスク 他』 2022/10/24放送

ピアノ三重奏曲 イ短調

全4楽章。39歳の年の作品。

世界に不穏な空気が漂っていた1914年の夏、ラヴェルはフランスのスペイン国境に近い港町で過ごしていた。この間に第1次世界大戦が始まってフランスが参戦したことでラヴェルも戦地に赴くことになり、書き進めていたピアノ三重奏曲の作曲を急いだ。5週間で5カ月分の仕事をしたと語るほど集中的に取り組んだ。ラヴェルは「すぐに出発しなければという思いに駆られて5カ月かかる仕事を5週間でやり遂げました。三重奏曲は完成しました」と語っている。
完成した作品はラヴェルならではの気品溢れる洗練された名作となった。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラヴェルの組曲クープランの墓」』 2023/3/27放送

弦楽四重奏曲 ヘ長調

ラヴェルがまだ20代の頃、1900年から3年にかけて作曲した作品。初演は翌年1904年にパリで行われ、大きな反響を呼んだ。この弦楽四重奏曲は敬愛する師フォーレに捧げられている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ラヴェルの弦楽四重奏曲ヘ長調 他』 2022/9/22放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラヴェルの弦楽四重奏曲ヘ長調』 2023/4/10放送

なお、この曲のおよそ10年前、1893年にドビュッシーが書き上げた弦楽四重奏曲に影響を受けているといわれている。ドビュッシーは、ラヴェルの弦楽四重奏曲を大変高く評価して、そのままで素晴らしい、どこにも手を入れてはならないと語ったというが、その後、ラベルは部分的に改訂し、出版した。今日演奏されているのは、この改訂版である。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ラヴェルの弦楽四重奏曲ヘ長調 他』 2022/9/22放送

序奏とアレグロ

1905年、当時のフランスを代表した楽器メーカーから依頼を受けて作曲された。編成はフルート、クラリネット、ハープ、そして、弦楽四重奏であるが、ハープに重きが置かれていて、このことが作品の雰囲気を一層優雅なものにしている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ アルベニスのスペインの歌 他』 2022/10/12放送

なお、ドビュッシーもハープの製作会社から依頼を受けて1900年に「神聖な舞曲と世俗的な舞曲」を作曲している。これは、当時、新たに開発され1896年に発表されたクロマティックハープのために書かれた作品であるが、クロマティックハープとは、78本の弦を張ってペダルなしで半音階を演奏できるようにしたものである。この製作会社のライバル会社がペダル式のハープのための作品をラヴェルに依頼し、作曲されたのがこの「序奏とアレグロ」である。まさにハープ対決といった状況であったが、そこからハープの美しい名曲が2つ生まれたわけである。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ラヴェルの弦楽四重奏曲ヘ長調 他』 2022/9/22放送

チガーヌ(ツィガーヌ)

この作品はハンガリー生まれの女流バイオリニストでヨーゼフ・ヨアヒムを大叔父に持つイェリー・ダラーニのために作られた。
ラヴェルはパガニーニの24の奇想曲を研究し、バイオリンの技巧を十分に活かした作品を書こうとした。そしてバイオリンの巧みな節回しと極めて高度な技巧が求められる難曲を作り上げた。
チガーヌはロマを意味するフランス語で、その名の通りロマ音楽に使われる音階やチャールダーシュの形式が用いられていてロマ音楽が持つ哀愁や情熱が感じられる。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ バッハの無伴奏バイオリンのためのパルティータ第2番』 2024/1/9放送

ピアノ曲

ラヴェルのピアノ曲には古典形式や古典的な舞曲のリズムを取り入れた作品が多く見られる。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラヴェルの組曲クープランの墓」他』 2022/11/29放送

水の戯れ

1901年26歳の年に書かれたピアノ作品。
ラヴェル自身はこの曲について「水の音、噴水、滝や小川が織りなす音楽的な響きから着想を得た」と述べている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽ヘンデル組曲「王宮の花火の音楽」ほか』 2022/07/26放送

ソナチネ

この作品のタイトルであるソナチネとは18世紀末によく作られたジャンルで、ソナタと同じ形式と性格をもっているが、一般にソナタよりも短く容易な作品を示す。
ラヴェルのソナチネは1903年から5年にかけて作曲された。ある音楽雑誌が催したコンクールがきっかけとなって作られ、演奏者にも聴衆にも大変喜ばれる作品となり、大成功を博し直ちに出版されたと言われている。
全3楽章から作られている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ラヴェルの組曲クープランの墓」他』 2022/11/29放送

1905年30歳の年に完成した。5曲からなるピアノのための組曲である。

  • 第1曲「蛾」
  • 第2曲「悲しげな鳥たち」
  • 第3曲「海原の小舟」
  • 第4曲「道化師の朝の歌」
  • 第5曲「鐘の谷」

各曲はしばしば単独で演奏され、とりわけ第4曲「道化師の朝の歌」は演奏の機会が多い。

それぞれの曲はアパッシュの詩人や画家、音楽家といった仲間たちに捧げられている。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ ▽フォーレ組曲「ペレアスとメリザンド」他』 2022/07/05放送

夜のガスパール

フランスの詩人ベルトランによる散文詩にインスピレーションを得て書かれた。ベルトランによる幻想的で奇怪な詩の世界をピアノ独奏で精緻に、そしてよりファンタジー豊かに再創造している。
この曲は特に演奏が難しく、ピアニストに高い技術を要求する曲としても有名である。不気味な夜の風景がピアニスティックな技巧で描かれた1曲。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ シェーンベルクの「清められた夜」』 2023/8/17放送

マ・メール・ロワ

1908年に作曲された。子供好きの(しかし独身であった)ラヴェルが友人ゴデブスキ夫妻の2人の子供のために書いた作品。
「マ・メール・ロワ」は17世紀末にフランスの詩人シャルル・ペローによって書かれた童話集で、「マザー・グース」という名前でよく知られている。
ラヴェルはこの童話集の中の3つのお話と別の2つの童話から着想を得てピアノ連弾のための組曲「マ・メール・ロワ」を作った。子どもたちが音楽を聴いて物語の中の気分を呼び起こせるよう極めて簡潔な手法で音楽を作っていて5つの曲で構成されている。
もともとはピアノ連弾組曲だが、1911年にはラヴェル自身によって管弦楽版とバレエ版に編曲された。

なお、バレエ版ではピアノ版にいくつかの曲を加え、曲の順番も変えている。

2022/04/25「クラシックカフェ」。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ アルベニスのスペインの歌 他』 2022/10/12放送。NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ プロコフィエフのピーターとおおかみ』 2023/8/8放送。マ・メール・ロワ - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/マ・メール・ロワ。NHK-FM(東京) 『ベストオブクラシック N響 第2001回定期公演』 2024/1/18放送

ハイドンの名によるメヌエット

1909年に作曲。

モーリス・ラヴェル - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/モーリス・ラヴェル

ハイドン没後100年を記念して音楽雑誌が企画した特別号のために作られた。その企画はハイドンの名前のつづりをドイツ語の調整記号によって読み替えて得られた5つの音からなる音型を用いて作品を作るというものであった。ドビュッシー、ラヴェル、デュカスを含む6人の作曲家が依頼を受けて曲を作った。

NHK-FM(東京) 『クラシックカフェ サン・サーンス組曲「動物の謝肉祭」ほか』 2023/11/28放送

組曲クープランの墓」

全6曲からなるピアノ組曲で、ラヴェル最後のピアノ独奏曲。
曲名の墓はフランス語にするとトンボという言葉になるが、これは墓石という意味の他に亡くなった人への追悼曲を指す言葉でもある。
作品の作曲時期が第1次世界大戦の最中であったことからそれぞれの曲は戦死した友人たちを偲んで書かれたものと考えられている。
また、作曲に当たってラヴェルはバロック時代のフランスの作曲家クープランが生きた時代の音楽を取り入れた。1917年にバロック時代の組曲に用いられていた舞曲を中心に6曲からなるこの作品を完成させた。

NHK-FM(東京) 『クラシックの庭 ストラヴィンスキー組曲「プルチネッラ」』 2024/4/29放送。クープランの墓 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/クープランの墓

なお、ラヴェルは組曲クープランの墓」から4曲を抜粋し、管弦楽用にオーケストレーションしている。

2022/05/19 クラシックカフェより



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