オリエント世界―メソポタミア文明―シュメール人―灌漑農業
灌漑とは 【irrigation】
灌漑の定義・意味など
灌漑(かんがい)とは、農作物の栽培に必要な水を川・湖・溜池(ためいけ)・地下水から引いてきて人工的に農地(田畑)に供給することをいう。
参考:『地理用語集』 山川出版社、 『世界大百科事典』 平凡社
灌漑の目的・役割・意義・機能・作用など
農業生産力
灌漑により農業生産力は著しく高まる。
灌漑農業はメソポタミアやエジプトなどでの古代文明成立の原動力となった。
『世界史用語集』 山川出版社、2014年、3頁。
干ばつ防止
灌漑の主目的は干ばつの防止で、降水量の少ない地域や、降水量が多くても時期的に不足することがある地域において灌漑が行われる。
平凡社 『世界大百科事典』
たとえば、一般に年降水量が500ml以上になると畑作が、そして、1000ml以上になると水田耕作が可能になるといわれている。
しかし、年降水量が500ml未満のステップ気候や砂漠気候の乾燥地域でも灌漑という技術を使うことで農業が可能になる。
また、日本は温暖湿潤気候に属し、年平均降水量は1000mlを超えることが多いが、降水量が時期的に一様ではないので古くから水田灌漑が行われてきた。
灌漑の分類・種類
灌漑は次の2つに大別される。
- 水田灌漑
- 畑地灌漑
灌漑の分布
灌漑は水田地域のほか、乾燥気候や地中海性気候の畑作地域に多く見られる。
灌漑のデメリット
塩害
先述したように、灌漑農業は農業生産の拡大に役立つが、管理が悪いと塩害など土地の不毛化を招く。
三省堂 『スーパー大辞林』。
灌漑の歴史
メソポタミア文明
メソポタミア=ティグリス川とユーフラテス川流域の沖積平野は、両川が定期的に増水し、たびたび洪水を起こすために沼地の多い低地で、そのままでは耕作地にはならない。
しかし、沼地に排水用の運河を引き、その水を利用した灌漑設備を整えさえすれば豊かな耕作地になる可能性を秘めていた。
『理解しやすい世界史B』 文英堂、1994年、19頁。農耕の祖「メソポタミア文明」が中国に抜かれた理由 【連載】ビジネスに効く! 世界史最前線(第4回)(1/4) | JBpress (ジェイビープレス) https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53804
メソポタミアでは早くから灌漑農業が発達したため、食料生産が発達し、やがて都市国家が形成された(→シュメール人)
参考:『理解しやすい世界史B』 文英堂、1994年、19頁。
つまり、メソポタミア文明を支えたのはティグリス川とユーフラテス川の2つの川がもたらす豊富な水を利用した灌漑農業であった。
ティグリス・ユーフラテス川流域からシリア・エジプトへとつながる地域は肥沃な三日月地帯と呼ばれていて、収穫した小麦は人々の主食となるだけではなく、周辺地域と取引され交易が盛んになることで、都市が発達していった。
NHK教育 『木村多江の、いまさらですが・・・「オトナのための地理・歴史 西アジア」』 2022年03月24日放送
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