カウエル
カウエル
カウエルの生涯・経歴
カウエル(1897-1965)は20世紀アメリカで異彩を放った作曲家である。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」21 カウエル - 現代の音楽 - NHK』 2024/3/3放送
1897年カリフォルニア州で生まれた。
父親はアイルランドからの移民で詩人、母親はアメリカ生まれの作家で、文学的な家庭であった。両親ともに学校教育に対する不信感があり、体の弱かったカウエルはほとんど学校に通わせないという方針で育てられた。
1903年に両親が離婚した後、カウエルは母親と転々とした。アメリカ西海岸は移民が多く、多種多様な人種が融合して暮らしている土地柄で、カウエルの幼馴染の中には日本人や中国人もいたという。
5歳の時からバイオリンを学び、10代になると数々の曲を書き始めるが、その頃の作曲もほぼ独学であった。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」21 カウエル - 現代の音楽 - NHK』 2024/3/3放送
作曲活動
初期の1920年代までの書法は実験的であった。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」21 カウエル - 現代の音楽 - NHK』 2024/3/3放送
リズムの実験等
カウエルは1914年17歳になって初めてカリフォルニア大学教授チャールズ・シーガーに作曲を学び始めた。
そして、この翌年には「カルテット・ユーフォメトリック」という弦楽四重奏曲を作曲している。当時カウエルは和音や音の高さを音の長さ、つまりリズムに変換するというシステマティックな作曲法の実験をしていた。
若いころのカウエルは発想が豊かで、こうしたリズムの実験のほかにも数々の発明をした。
第2次世界大戦後にジョン・ケージらが取り組む不確定性の音楽を先駆けた作品もある。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」21 カウエル - 現代の音楽 - NHK』 2024/3/3放送
新しいピアノ奏法
1920年代にはとりわけ新しいピアノ奏法による音楽に力を注いだ。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」21 カウエル - 現代の音楽 - NHK』 2024/3/3放送
ベルリン留学
非西洋音楽
1931年から32年にかけてベルリンへ留学した。
そこで有名な民族音楽学者のエーリヒ・フォン・ホルンボステルに学び、彼の紹介でマドラス出身の教授とジャワ出身の教授にも学んで非西洋の音楽に深い造詣を持つようになった。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」21 カウエル - 現代の音楽 - NHK』 2024/3/3放送
服役
1936年から4年間、冤罪で服役するという体験をしている。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」21 カウエル - 現代の音楽 - NHK』 2024/3/3放送
他の音楽家との関係
ジョン・ケージ
カウエルはケージよりも年長で、ケージに影響を与えた作曲家である。
「現代音楽 100年のレガシー」21 カウエル - 現代の音楽 - NHK
カウエルの音楽史における位置づけ
現代音楽
実験音楽の元祖作曲家
アメリカの実験音楽を代表する作曲家として、よくジョン・ケージの名前があがるが、実はカウエルこそ元祖実験音楽の作曲家と言ってよい。当時アメリカでなければ生まれなかったユニークな発想の音楽を次々と発表している。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」21 カウエル - 現代の音楽 - NHK』 2024/3/3放送
カウエルの作品
作風・音楽傾向など
カウエルは生涯に膨大な数の曲を書いており、これまでに950曲を超える作品が確認されている。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」21 カウエル - 現代の音楽 - NHK』 2024/3/3放送
カウエルの音楽的な教養の背景にはアメリカ西海岸の多文化の中で育った影響があり、また西洋音楽から学んだシンプルで古典的な形式観があったが、その他にもアメリカ中西部の民謡に興味を抱いたり、アイルランドの伝説や神話への共感を示し、さらには自然音、環境音、人々の騒音や西海岸の暮らしの音といった周囲の音などが彼の興味を惹いた。これら全てがカーベルの音楽にとって書くことのできない要素となった。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」21 カウエル - 現代の音楽 - NHK』 2024/3/3放送
カルテット・ユーフォメトリック
チャールズ・シーガーに作曲を学び始めた翌年1918年に作曲された弦楽四重奏曲。
当時カウエルは和音や音の高さを音の長さ、つまりリズムに変換するというシステマティックな作曲法の実験をしていた。この作品はごく短い曲であるが、そのした音の高さのリズム変換という方法で書かれた革新的な試みの1つで極めてリズムの難しい楽譜となっている。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」21 カウエル - 現代の音楽 - NHK』 2024/3/3放送
歓喜
トーン・クラスター
この作品ではトーン・クラスター(音群)に基づく作曲が試みられている。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」21 カウエル - 現代の音楽 - NHK』 2024/3/3放送
遺跡
この作品ではリズムの実験が行われている。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」21 カウエル - 現代の音楽 - NHK』 2024/3/3放送
エオリアン・ハープ
内部奏法(ストリング・ピアノ)
この作品では鍵盤を叩くのではなく、蓋を開けたピアノの内部で弾いたり、弦をはじいたり等することで音を作り出す、いわゆる内部奏法のみで演奏される。これをカウエル自身は「ストリング・ピアノ」と呼んでいて、そのような特殊奏法を165種類も考案している。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」21 カウエル - 現代の音楽 - NHK』 2024/3/3放送
パルス
1939年に獄中で作曲。
7/8拍子という変拍子を使っているところに初期の実験の面影があるが、日本のお寺の鐘や茶碗、韓国の楽器を使うよう指定されていて、民族音楽を学んだ成果も感じさせる。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」21 カウエル - 現代の音楽 - NHK』 2024/3/3放送
消防署の土曜の夜
1948年の作品で、1930年代の消防署で土曜の晩に社交場となった様子を描いている。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」21 カウエル - 現代の音楽 - NHK』 2024/3/3放送
オーケストラのための変奏曲
1956年作曲。
カウエルの古典的な形式観が示されていると同時にアジア的な楽想が織り込まれた音楽となっていて、多様な様式が折り合わされているところに特徴がある。
NHK-FM(東京) 『「現代音楽 100年のレガシー」21 カウエル - 現代の音楽 - NHK』 2024/3/3放送
現在のページが属するカテゴリ内のページ一覧[全 4 ページ]
現在のページが属するカテゴリのサイトにおける位置づけ